(1)内政
●前月から続く公立病院職員のストライキは、月末になり漸く交渉再開の目処が付いた。
●Cifra社が世論調査結果を公表し、政党別支持率では、ムヒカ政権発足後初めて野党が合計で与党FA党の支持率を上回った。また、ムヒカ大統領の政策への評価は政権発足後最低の36%を記録した。
(2)外交
●アルマグロ外相は第67回国連総会に出席し一般討論演説を行った。
●再燃したUPMセルロース工場問題を巡り、アルゼンチン政府との攻防が続いている。
(3)社会
●内務省は、治安悪化地域における対策資金として米州開発銀行(IDB)から500万ドルの貸付を受け、警察官の能力向上、犯罪少年の更生に取り組むと発表した。
●民間団体FUNDAPROによる治安分析結果が公表され、殺人件数、殺人犯に占める少年の割合、強盗件数等が軒並み大きく増加していることが明らかになった。
2 内政
(1)政府及び与党FA党の動向
ア 3日、エンリケ・ルビオ上院議員率いるFA党ベルティエンテ・アルティギスタ(VA)は、リスト5005(カネパ大統領府副長官らが所属)及びMASとともに新たなグループ「Frente Unido」を立ち上げることを発表した。近年の派閥分裂傾向を食い止めるとともに、アストリ副大統領率いるセレグニ戦線への対抗馬となることを目指している。
イ 8月から続く公立病院職員ストライキ及び外科医の大量辞任問題は、労働総同盟(PIT-CNT)の仲裁により、病院占拠が中断され一旦交渉が再開された。しかし、その後も合意が得られず、18日に政府が医療関係者全員を対象として、労働争議により医療行為を離れた場合には強硬措置を取ることを可能とする法案を発表したことにより、職員及び医師側が態度を硬化させた。連日の会合の後、26日に漸く交渉が再開されることになった。
(2)世論調査結果
ア 1日、Equpos Mori社が政治家への評価に関する世論調査結果を公表し、バスケス前大統領(63%)、ムヒカ大統領(50%)、アストリ副大統領(48%)、ララニャガ上院議員(36%:国民党)、ボルダベリ上院議員(33%:コロラド党)等との結果が出た。
イ 13日、Cifra社が支持政党に関する世論調査結果を公表し、FA党が36%と前回(本年7月)比-1ポイントとなったのを始め、国民党が21%(同:+2ポイント)、コロラド党が17%(同:+3ポイント)、独立党が1%(同:-1ポイント)、「わからない、白票/無効票」が25%(同:-3ポイント)となり、ムヒカ政権発足後初めて野党が合計で与党FA党の支持率を上回る結果となった。
ウ 17日、Cifra社がムヒカ大統領への評価に関する世論調査結果を公表した。ムヒカ大統領の政策に関して、「評価する」が36%と前回(本年7月)比-4ポイントとなり、2011年11月調査時(39%)を下回り、政権発足後最低を記録した。また、「評価しない」は42%(前回比:+3ポイント)となり、FA党政権で初めて「評価する」を上回った。ムヒカ大統領への親近感についても、「親しみを感じる」との回答が43%(前回比:-6ポイント)となり、2011年11月調査時(48%)を下回り、政権発足後最低の結果となった。
(3)軍政期の人権弾圧問題
ア 6日、大統領府人権局は、1976年にウルグアイで発見された8名の身元不明の遺体のうち、アルゼンチン政府との共同調査により3名の身元が判明したと発表した。身元が判明したのは、ルイス・ベガ(チリ人)、オラシオ・アベレド(アルゼンチン人)及びロケ・モンテネグロ(アルゼンチン人)の3名であり、ブレチア大統領府長官は、今後も南米コノスール諸国の関係機関と協力し、「コンドル作戦」による逮捕行方不明者の身元確認作業を継続していく旨述べた。
イ 14日、大統領府とUNESCOウルグアイ事務所の共催によるセミナー「南米コノスールにおける人権、記憶と真実のアーカイブ」が開催され、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジル、チリ及びパラグアイの人権機関代表者が出席し、各国における軍政期人権弾圧の記録の開示、保管及び真実解明に関する取組につき意見交換を行った。開会セッションには、ウルグアイ訪問中のボコバ国連教育科学文化機関(UNESCO)事務局長も出席した。
3 外交
(1)アルマグロ外相の第67回国連総会出席
26日~29日、アルマグロ外相は第67回国連総会に出席するためニューヨークを訪問した。
ア 29日、第67回国連総会において一般討論演説を行い、対キューバ経済制裁、パラグアイ政変、シリア問題、西サハラ情勢、国連改革の必要性等につき言及した。
イ 26日~28日には、ミランダ・エルサルバドル開発協力副大臣、コルラツェアン・ルーマニア外相、サーレク・サハラ・アラブ民主共和国外相及びブーハーリー・ポリサリオ戦線国連代表、ロンカリオロ・ペルー外相、バプティステ・セントルシア外相、スワイヤ英国外務閣外大臣、潘基文国連事務総長、イェレミッチ国連総会議長らと会談を行った。
ウ また、第1回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)外相会合、ハイチに関する閣僚会合、南米アラブ諸国外相会合、イベロアメリカ外相朝食会等に出席した。
(2)対アルゼンチン関係
ア 8月にUPMセルロース工場の生産が年間許容生産量100万トンを超過している旨抗議する内容の書簡をアルゼンチン政府がウルグアイ政府に対して送付した件に続き、アルゼンチンの環境NGOが同工場による水質汚染を主張し、ウルグアイ川管理委員会(CARU)に対して水質調査結果を公表するよう同国の裁判所に訴え、同国裁判所はこれを認め、CARUに対して水質調査結果を提出するよう求めた。
4日、CARUウルグアイ側代表団はコミュニケを発出し、ウルグアイ側は同調査結果の即時且つ完全な公表に何ら問題ないとして、CARUアルゼンチン側代表団が結果公表を意図的に滞らせていることを暗に批判した。これに対して、5日、アルゼンチン外務省はコミュニケを発出し、同報告書の公表には吝かではないが、同工場は年間許容生産量を超過していると断言し、またウルグアイ側が工場排水の許容水温を変更前の数値に戻さなければ、本件解決は不可能である旨述べた。
上記反応を受け、12日、CARUウルグアイ側代表団は再度コミュニケを発出し、CARU内部における排水の水温を巡る議論は、報告書公開を妨げる理由とはならないとして、アルゼンチン側に即時且つ完全な報告書公表を再度要求した。
イ 20日、政府は、ラ・プラタ川管理委員会(CARP)ウルグアイ側代表団長を務めているブスティージョ外務省大臣秘書室長を駐スペイン大使に任命することを決定した。同大臣秘書室長に対しては、アルゼンチン外務省から不法輸入疑惑を巡り外交官特権の剥奪を要求されており、アルゼンチン政府によるマルティン・ガルシア運河浚渫事業プロセスに対する妨害行為の一つであるとみられている。
ウ 10日、ティメルマン亜外相の娘が、2013年3月にプンタ・デル・エステにおいて結婚式を挙げる予定であったが、同国による海外旅行規制政策に矛盾するとの批判から中止になった旨発表された。
(3)対ブラジル関係
ア 5日、ピメンテル伯開発商工相がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相、深水港に関する省庁間委員会メンバーらと会談した。
イ 13日及び14日、ブラジルのポルトアレグレにおいて第8回ブラジル・ウルグアイ国境協力及び開発に関する新行動計画ハイレベル会合が開催され、コンデ外務次官が出席した。
(4)ルゴ前パラグアイ大統領の来訪
3日~6日、ルゴ前パラグアイ大統領がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領ら政府関係者と私的な会合を持ったほか、FA党幹部との会談や労組主催の講演会等に出席した。
(5)クレイメルマン工業エネルギー鉱業相の外遊
ア 3日~5日、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相は企業関係者らとチリを訪問した。
イ 14日~22日、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相は、企業関係者、協同組合関係者、労組関係者らとルーマニア、ベルギー及びイタリアを訪問した。
(6)対ボリビア関係
6日、ボリビアのラパスにおいて、第6回二国間連携協議メカニズム会合が開催され、コンデ外務次官が出席した。会合では、ウルグアイ港湾設備のボリビアの使用に関して協議されたほか、技術・科学協力に関する枠組協定への署名が行われた。
(7)対パナマ関係
3日、モンテビデオにおいて第3回二国間政策協議メカニズム会合が開催され、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の枠組みにおける経済補完協定の締結に向けて両国が努力していくことが確認された。
(8)ボコバUNESCO事務局長の来訪
13日~15日、イリーナ・ボコバ国連教育科学文化機関(UNESCO)事務局長がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領、アストリ副大統領、ブレチア大統領府長官、アルマグロ外相、エルリッチ教育文化相、ベルトラメ住宅土地整備環境相らと会談したほか、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)本部、メルコスール事務局、UNESCOウルグアイ事務所、共和国大学、コロニア・デル・サクラメント(UNESCO世界遺産)等を訪れた。
(9)その他
ア 11日~13日、ケチチアン観光スポーツ相は、エクアドルのキトにおいて開催された第54回世界観光機関(UNWTO)米州委員会会合に出席した。
イ 17日~21日、ウィーンにおいて第56回国際原子力機関(IAEA)総会が開催され、バロス同代表部大使が議長を務めた。ウルグアイが同総会で議長を務めたのは今回が初めて。
ウ 28日、在ベネズエラ・ウルグアイ大使館が入居するビルにおいて爆弾が発見される事件が発生したが、ウルグアイ大使館を標的にしたものではなかった模様。ベネズエラ警察により爆弾は不発のまま処理され、怪我人や建物の破損は出なかった。
4 社会
(1)治安
ア 第15警察署、第16警察署及び第19警察署の管轄区域における治安が悪化しており、強盗事件全体の33%がこれら3地区で発生している。主にこれらの地域における治安対策資金として、米州開発銀行(IDB)から500万ドルが貸付けられ、警察官の能力向上、犯罪少年の更生のために使用されることとなった。内務省によれば25年かけて返済するとのこと。
イ 2月~4月期と5月~7月期の強盗事件発生件数を比較した統計が発表され、モンテビデオ県全体では16%減少したものの、プンタ・カレタス地区(10署管内)においては23%の増加となった。特に、ラグニシャス通り周辺での発生が多く、この通りにあるパン屋では、3週間のうちに強盗事件が3度発生している。
ウ 公式な犯罪統計を基にした民間団体FUNDAPROによる治安分析結果が公表された。同結果によれば、殺人は増加傾向にあり、2012年中に280件に達する見通しである。また、殺人犯に占める少年の割合も高くなってきている。強盗も大きく増加し、2004年には約7000件であったが、2011年には1万6322件にまで増加している。