ウルグアイ内政・外交:9月
1 概要
(1)内政
●国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に参加するウルグアイ海軍兵士5名が、ハイチ人の18歳青年に暴行を加えた問題に関し、4日、ウルグアイ政府はハイチにおけるウルグアイ海軍指揮官を罷免、海兵5名のウルグアイ召還を決定、この5名は中旬、ウルグアイに帰国し、軍事法廷にかけられ、23日より刑事裁判にも出廷した。
●8月は前月比で労働争議率が38%増加した。19の労働争議があり、うち6つは職場占拠、2つはピケであった。労働損失日は106,341日、関係した労働者はのべ156,508名となった。民間セクターでは55%の労働争議は金属産業に集中、公的セクターでは保健セクターに集中、95%の労働争議が賃上げに関するものであった。
(2)外交
●12日、第18回国連人権理事会がジュネーブで開催され、アルマグロ外相及びエルリッチ教育文化相が出席、ウルグアイが議長国に就任した。
●26日、第66回国連総会においてアストリ副大統領は28分にわたる一般討論演説を行い、パレスチナ国家承認、米国のキューバに対する経済制裁への批判、及びMINUSTAHウルグアイ海兵5名によるハイチ青年に対する暴行問題についても言及したほか、2016年以降の安保理非常任理事国当選を目指すとした。
(3)社会
14日に発表された内務省統計局の犯罪統計によると、モンテビデオ県内における本年7月までの強盗は8,624件(前年比8.4%増)、人口10万人当たりの殺人事件発生件数については、他県平均4件の2倍の発生率となっている。
2 内政
(1)議会及び政府の動き
ア 7日~18日までプラド展が開催され、55万人以上の観客が訪れた。アゲレ農牧大臣は胃腸関係の疾患で緊急入院したため、閉会式にはムヒカ大統領が出席、農地不動産税(ICIR)の必要性を改めて強調し、政府は農地への増税の代わりに、1%の家畜税廃止法案を議会に送付する旨発表した。
イ 7月に駐ウルグアイ・イラン大使がホロコーストの存在を否定する発言を行ったことに対し、野党の要求により下院で同大使の非難決議が審議されたが、14日、与党拡大戦線(FA)党の反対により否決された。
ウ 28日、行政府は自動車登録税全国統一法案を議会に送付した。
(2)国防関係
ア 国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に参加するウルグアイ国連平和維持軍の海軍兵士5名が、ハイチ人の18歳青年に暴行を加えた問題に関し、4日、ウルグアイ政府はハイチにおける海軍指揮官を罷免し、海兵5名のウルグアイ召還を決定。6日、本件に関し「ム」大統領はマルテリー・ハイチ大統領に謝罪の書簡を送付した。5名は中旬、ウルグアイに帰国し、軍事法廷にかけられ、23日より刑事裁判にも出廷した。
他方、26日には暴行を受けたハイチ人青年の弁護団が兵員に対し、示談金として5百万ドルを要求するビデオの存在が発覚。このビデオは既に国連に送付され、調査が始まっている由。
イ 12日、大統領府は、ロサレス陸軍最高司令官が9月末に退役するため、10月よりアゲレ将軍を新たに同職に任命することを発表した。
ウ 12日、大統領は、ボニージャ軍統合参謀長が2012年1月末に退役するため、同年2月よりカステラ将軍が同職に任命することを発表した。
(3)内務関係
ア 刑務所は飽和状態が続いており、22日現在、定員約7,000人に対して約9,000が収容されている。27日には、国内最大施設であるコムカル刑務所において暴動が起き、5人が負傷。政府は,刑務所の飽和状態を緩和するため、刑期を3分の2以上経過した1,300人の受刑者(凶悪犯を除く)のうち、模範囚と認められる約900人に対する恩赦を検討している。
イ 「エル・パイス」紙によると、ウルグアイ国民の69%は、現在議会で審議されている少年法適用年齢引き下げ法案に関し、16歳もしくは14歳まで引き下げるべきであると考えている由。
(4)労働関係
ア 8月は前月比で労働争議率が38%増加した。労働争議件数は19件、うち6つは職場占拠、2つはピケであった。労働損失日は106,341日、参加者はのべ156,508名となった。民間セクターでは55%の労働争議は金属産業に集中、公的セクターでは保健セクターに集中、95%の労働争議が賃上げに関するものであった。
イ 7日、8月30日よりPUL食肉工場にて行われていた職場占拠に関し、同工場に勤務する非労組組合員が労働の権利を訴え、この食肉工場労組による職場占拠を地方民事裁判に提訴し、6日、同裁判所は労組に撤収を命じた。
ウ 8日、銀行労組(AEBU)は新たな労働協約交渉を求め行進を行った他、12日より、断続的に部分的ストの実施やクリアリング作業の停止を行った。
エ 上旬に始まったUPM社への木材搬送業者によるストにより同社の操業に影響が出る恐れがあったが、交渉の結果、12日にストは解除された。
オ パイサンドゥ県に所在するモンテス・デル・プラタ社(製紙業)は、職員の旅費と14名の解雇職員の再雇用について労組側と対立、労組は14日より工場の一部操業停止を行っていた。16日に労働省で会合を開催したものの合意に至らず、労組側は19日、国道21号線の一部を封鎖した。
カ Pluna航空の職員は賃上げと労働条件の改善を要求し、24日及び
25日ストを実施、同航空便に影響が出た。
キ 交通労組(Unott)は、賃上げを求め、27日より約24時間のストに突入、50万人に影響が出た。
ク 公共保健サービス公社(ASSE)の職員組合は増員、賃上げ及び予算増額を求め、28日~10月11日までのストを発表。27日、政府はストを制止しようと試みたが失敗、28日よりストが実行された。
(5)その他
ア 世論調査会社Factum社によると、政権閣僚の人気アンケートは100ポイント満点で、レスカノ観光スポーツ大臣が77、アストリ副大統領は76、ロレンソ経済財務大臣は69、ブレンタ労働社会保障大臣は67、クレイメルマン工業エネルギー鉱業大臣は65、アルマグロ外務大臣は64ポイントであった。
イ モンテビデオ県庁の政策運営に対し8月に行われたアンケートで、支持率は28%(対前年同期比-5ポイント)、不支持率は52%(対前年同期比34ポイント増)となった。ゴミ収集の運営悪化が原因と見られている。一方、内陸部の県知事は平均54%の支持率を獲得している。
3 外交
(1)対アルゼンチン関係
23日、先月両国大統領出席のもと式典が開催されたウルグアイ・アルゼンチン間鉄道の実質運行が開始された。
(2)対国連関係
ア 12日、第18回国連人権理事会がジュネーブで開催され、アルマグロ外相及びエルリッチ教育文化相が出席、ウルグアイが議長国に就任した。
イ 19日、「ア」外相は、マルテリー・ハイチ大統領により率いられるハイチ復興に関する閣僚級会合にパトリオッタ伯外相、クリントン米国務大臣、モレノ米州開発銀行総裁、インスルサ米州機構事務総長等とともに出席。「ア」外相は、具体的な改善と目に見える結果に到達するため、ハイチ政府と国連を含む国際社会による協力改善の重要性を強調した。
ウ 13日から第66回国連総会が開催され、26日、アストリ副大統領は28分にわたる一般討論演説を行った。同副大統領はウルグアイにより3月に行われたパレスチナ国家承認について言及、国連にも同様の姿勢を要求した他、米国のキューバに対する経済制裁を批判した。また、MINUSTAHウルグアイ海兵5名によるハイチ少年に対する暴行問題については恥ずべき事で受け入れられないとした。さらに、2016年以降の安保理非常任理事国当選を目指すとした。
(3)対欧州関係
ア 19日、「ア」外相は、ポルタス・ポルトガル外相と会談、小規模国及び中規模国間の関係強化の重要性を再確認、ポルタス外相は貿易関係強化及び新たな経済政策による市場開放のためウルグアイをポルトガルへ招待した。ポルタス外相は同国の国連人権理事会メンバー立候補に対するウルグアイによる支持表明に謝意を表した。
イ 19日、「ア」外相は、ランブリニディス・ギリシャ外相と会談し、これまでの二国間関係を評価、更なる貿易投資関係の強化を確認した。「ア」外相は、ウルグアイが目指す安保理非常任理事国入りに関するギリシャの支援に謝意を表した。
ウ 20日、「ア」外相はジェレミック・セルビア外相と会談。ジェレミック外相は、セルビア政府が推進する5年間の奨学金制度について説明したほか、ウルグアイに対し、国連ユネスコ世界遺産委員会委員国選挙における同国への支持要請を行った。一方、「ア」外相は現在の二国間関係を評価、セルビアによるウルグアイの安保理非常任理事国立候補に対する支援表明に謝意を表した。また、両国は情報交換や相互取引の促進に寄与する獣医協力合意締結書に署名した。
エ 20日、「ア」外相はマルコウリス・キプロス共和国外相と会談。「ア」外相は、キプロスが直面する状況に関し、ウルグアイ国民のキプロス共和国への連帯の意を表明した。一方、マルコウリス外相はウルグアイに対し、国際法委員会及び国際刑事裁判所への同国立候補者への支持要請を行った。
オ 26日、「ア」外相は、ニューヨークにおいてラブロフ・ロシア外相と会談、両国企業家レベルの交渉を容易にする査証免除協定に署名した他、メルコスールレベルでの経済協力協定にも署名。このほか、ロシアの世界貿易機関加盟に関する政治的アジェンダについても協議した。
(4)その他
ア 8日、ウルグアイ政府は、経済協力機構(OECD)のグレーリストからの脱却に向けた取り組みとして、インドと二重課税防止、脱税及び資金洗浄を回避するための金融に関する情報交換協定に署名した。
イ 8日、南米諸国連合(UNASUR)上級会合が当地で開催され、
UNASUR各国が国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に派遣する兵員の削減を決定した。
ウ 13日、ウルグアイとツバルは駐国連代表部大使を介して外交関係を樹立した。
エ 20日、クウェート議員団がウルグアイを訪問、ウルグアイによるクウェート大使館創設等について協議された。
オ 29日、ウルグアイ消防局は米国より車両、機材、家具等、28万ドルに上る供与を受けた。
カ 30日、インスルサ米州機構事務総長はウルグアイを訪問、両院外交委員会のメンバーと会合した他、米州機構児童・青少年機関が実施したセミナーに出席した。
キ 下旬、「ア」外相は、カスティージョ・コスタリカ外相と会談、二国間関係における課題を確認し、二国間協力について意見交換したほか、コスタリカによるウルグアイの人権理事会の議長国就任のための支援に謝意を表した。また、両外相及びアブラハム・コスタリカ農牧相は、農業分野における協力強化の重要性について確認した。
4 社会
(1)治安
ア 14日、内務省統計局が、モンテビデオ県内における今年7月までの犯罪統計を発表した。強盗は8,624件(前年比8.4%増)発生、依然として増加傾向にあることが明らかになった。殺人事件について、人口10万人当たりの発生件数を県別に比較すると、モンテビデオ県内では、他県平均4件の2倍の発生率となっている。治安悪化を受け、治安改善のための市民集会やデモが各地で行われている。
イ 29日、プンタ・カレータスショッピングセンター正面入口脇に併設されているレストランにおいて銃を持った4人組による強盗事件が発生した。同ショッピングセンターでは、7月4日にもテナントの宝石店に対する強盗事件が発生している。同地区では今年2月に地域住民と警察幹部による安全協議会が行われ、警察によるパトロールが強化されたが、再び同地区において強盗事件が多発しているため、住民代表者による犯罪被害に関するアンケートの実施や防犯対策に関する資料の配布が予定されている。
(2)1日~30日までの予定で国勢調査が開始されたが、月末までの回答率が30%程度であったため、調査期間が延長されることとなった。