1 概要
(1)内政
●23日、行政府は「ム」大統領がイニシアチブをとる土地に関する税制改革法案を議会に提出した。
●25日、高等裁判所は、軍政期のサルバサガライ共産党員の死亡に関し、現役軍人として初めて軍政期の人権侵害や拷問の罪で起訴されているダルマオ将軍の第2審での控訴を棄却した。
●29日、団体交渉権に関する法令の視察調査のため、国際労働機関(ILO)ミッションがウルグアイを訪問、労働社会保障省において会合が開かれた。
(2)外交
●ウルグアイにある日本ウルグアイ商工会議所が、東日本大震災支援のため当地企業の協力を得て送付した柑橘類のジュース及び水が2日に日本に到着した。
●2日、「ム」大統領とフェルナンデス大統領はブエノスアイレスで会談し、マルティン・ガルシア運河の浚渫の入札を45日後に行うことで合意。
●15日~16日、イスラエルのペレド無所任大臣がウルグアイを訪問し、15日にアルマグロ外相、16日にムヒカ大統領と会合を行い、ウルグアイ政府に対して、パレスチナが進めている国連総会におけるパレスチナ国家承認決議(9月20日に採決予定)に賛成票を投じないことを要請した。
●23~24日、中国浙江省キョウ正(Gong Zheng)副省長が政府及び企業関係者とともにウルグアイを訪問し、ウルグアイの投資や環境分野における経済情勢、政治情勢等の情報収集のほか、ウルグアイ・浙江省間シンポジウムに参加した。
(3)社会
●A型インフルエンザの影響で全国で15名が死亡、2,000名以上が急性気管支炎にかかり、前年比で約40%増となった。
2 内政
(1)政府及び議会の動き
ア 16日、2010年の決算及び2011年の予算の他、国の公開買付等に関する新たな制度等を含む予算決算法が下院を通過し、上院に提出された。
イ 23日、行政府は「ム」大統領がイニシアチブをとる土地に関する税制改革法案を議会に提出した。同法案はアストリ副大統領及びその派閥等によって反対されたが、最終的には全閣僚の署名と共に提出された。2千ヘクタール以上5千ヘクタール未満の土地に8ドル/ha、5千ヘクタール以上1万ヘクタール未満に12ドル/ha、1万ヘクタール以上に16ドル/haの3段階に分け、農村不動産税(Impuesto a la Concentracion de Inmuebles Rurales:ICIR)としての徴収がその主要内容。
ウ 与党拡大戦線(FA)党MPP派は、バスケス前大統領の2014年次期大統領選立候補に初めて賛同し、副大統領候補としてトポランスキー上院議員(「ム」大統領夫人)の名を挙げた。
(2)人事
8日、厚生省ベネガス大臣は、運営方法及び政治的背景の相違により、コルドバ公共保健サービス公社(ASSE)総裁を解任した。また、15日には、同省での重要ポストである保健局リオス局長も解任。後任には同大臣と政治的繋がりの強いヤマドゥ・フェルナンデス氏が着任した。
(3)労働関係
ア 8月は公的機関(鉄道公社や各種銀行等)や国営劇場(SODRE)、金属労協関係等各産業セクターにおいて、賃金協定の見直しや賃上げを求め、労働争議が増加した。
イ 鉄道公社(AFE)構造改革を巡る政府とAFE間の闘争に対し、「ム」大統領は自身の右腕とも言われる外務省バライバル大使(元労働社会保障大臣)を鉄道労組(UF)との労働交渉人に抜擢、9日、双方は協議を行った。UFは政府に対し、各種の妨害行為を行わないと誓約する署名に向け合意。
ウ 16日、全国労働総同盟(Pit-Cnt)は、部分的ゼネストを実施した。
エ 26日、ウルグアイにおける莫大な投資が期待されるアラティリ社(鉄鋼産業)は、プロジェクトが予定通り進行していないことから、9月15日より国内400名の従業員から多数を失業保険にまわすことを正式に発表した。
オ 29日、団体交渉権に関する法令の視察調査のため、国際労働機関(ILO)ミッションがウルグアイを訪問、労働社会保障省において会合が開催された。30日、ILOミッションは労働者及び経営者側とそれぞれ会合、31日には政労使+ILOミッションによる会合が開催され、今後団体交渉権に関する法令の改正を交渉することで合意。10月10日より1ヶ月間政労使による三者交渉を行い、政府は11月10日までに交渉状況についてILOに報告書を提出しなければならない。
(4)軍政期の犯罪
25日、高等裁判所は、軍政期のサルバサガライ共産党員の死亡に関し、現役軍人として初めて軍政期の人権侵害や拷問の罪で起訴されているダルマオ将軍の第2審での控訴を棄却した。
(5)教育関係
9日、チリで起きた教育制度改革を巡る政府と学生の対立に関し、10日、ウルグアイで開催された第16回ラ米学生大会に参加した2,000名に及ぶラ米各国の学生は、チリ政府に対する抗議の意から、在ウルグアイ・チリ大使館に向けデモ行進した。
3 外交
(1)対日関係
東日本大震災支援のため、ウルグアイにある日本ウルグアイ商工会議所が当地企業の協力を得て送付した柑橘類のジュース及びミネラルウォーターが2日、日本に到着した。
(2)対中国関係
23~24日、中国浙江省キョウ正(Gong Zheng)副省長が政府及び企業関係者とともにウルグアイを訪問し、ウルグアイの投資や環境分野における経済情勢、政治情勢等の情報収集を行うとともに浙江省の情勢に関するプレゼンも行われたウルグアイ・浙江省間シンポジウムに参加した。また、外務省により開催された企業家会合では、浙江省から57の企業とウルグアイの100以上の企業が参加し、300以上の交渉が行われ、双方関係者にとって満足度の高いものとなった。
(3)対アルゼンチン関係
ア 2日、「ム」大統領とフェルナンデス大統領はブエノスアイレスで会談し、マルティン・ガルシア運河の浚渫の入札プロセスを45日後に開始することで合意。その他、液化天然ガス再気化船や2030年サッカーW杯の共同招致、国境地帯での内務省関連協力で合意した。亜による貿易障壁及びパラグアイからの電力購入は議題とせず、良好な関係を強調する結果となった。
イ 29日、両国間の鉄道開通式が開催され、「ム」大統領及びフェルナンデス大統領他、両国外相や大使等が出席した。右鉄道はタクアレンボ県のPasos de los TorosとアルゼンチンのPilar間の計813kmを結ぶもので、当面は週1便運航される。
(4)国際機関関係
ア 11日開催されたラテンアメリカ統合連合(ALADI)第16回会合において、同機関新事務局長(任期2011年9月1日~2014年)にカルロス・アルバレス氏(亜人:元副大統領(1999-2000年))が任命された。また、同会合において、ALADIメンバー国は、ニカラグアの加盟を承認した。
イ 南米諸国連合(UNASUR)諸国の経済大臣及び中央銀行総裁がブエノスアイレスに集結し、UNASURが有する5,740億ドルの一部の準備金を利用し、域内貿易を増加させることについて協議、合意に至った。
ウ 国連平和維持活動軍は、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に参加する当国海軍兵士により、ハイチ少年が暴行を受けた疑いがあるとして調査を開始した。
(5)中東関係
ア 11日、ユダヤ協会団体は、駐ウルグアイ・イラン大使のホロコーストを否定する挑発的な発言に対する抗議活動を実施、国家教育局(ANEP)に対しても、ホロコーストに関する歴史教育をしっかり行うよう要求した。
イ 15日~16日、イスラエルのペレド無所任大臣がウルグアイを訪問し、15日にアルマグロ外相、16日にムヒカ大統領と会合を行い、当国政府に対して、パレスチナが進めている国連総会におけるパレスチナ国家承認決議(9月20日に採決予定)に賛成票を投じないことを要請した。
ウ 24日、ゴレン駐ウルグアイ・イスラエル大使及びムアカット駐亜パレスチナ代表が下院においてそれぞれ国連総会でのパレスチナ承認及びこれが中東情勢へもたらす影響について説明。ゴレン大使はウルグアイ政府によるパレスチナ国家承認は非常に残念と繰り返した。ムアカット代表は駐ウルグアイ・エジプト及びレバノン大使とともに下院に入り、パレスチナの立場について述べた。
エ アルマグロ外相は、リビア情勢に関し、状況を注視しており、現時点でウルグアイによる正式な立場表明はしないとした。
(6)その他
ア 2日、外務省チャベン官房長が辞任。チャベン官房長とアルマグロ外相の意見の不一致が原因であるとの報道もあるが、外相はこれを否定。チャベン官房長は、外相の顧問に就任。また、コンケ経済局長が後任として官房長職に就任、経済局長にはアジャラ国際協力局長が決定した。
イ 23日、欧州連合は関税ゼロでの牛肉輸入の2万トンの割当に米国、豪、加、ニュージーランドに次いでウルグアイの参入を認めた。右割り当ては出荷前100日に肉牛を囲い込んで肥育させたものに該当する。
ウ 28~30日、人権、和平構築、食料安保、人道支援及び気候変動等を担当する米国国務省のブライマー次官補(国際機関担当)がウルグアイを訪問し、政府、軍及び民間企業関係者と会合を持った。
4 社会
(1)治安
ア 7月14日に発生した商店に対する二つの強盗殺人事件で監視員3名が殺害されたことなどを受け、10日、CAMBADU(個人商店等の協会)主催の安全協議会が開催され、ボノミ内務大臣と警察庁長官が出席した。ボノミ内務大臣は、パトカー210台、その他の車両60台の配備、911通報システム関連機材の充実化、警察官3、300人の採用などを10月までに行うと述べた。
イ ウルグアイ青少年庁(INAU)施設には、330人の定員に対して約430人が収容されており、飽和状態が続いているため暴動が発生している。INAUでは、飽和状態を解消するため、軍の敷地に収容施設を建設することや犯罪少年を一時的にコンテナに収容することを計画しているが、コンテナへの収容については、人権が配慮されていないとして裁判所から使用禁止の決定がなされている。
また、約1ヶ月間INAU施設からの脱走が確認されていなかったが、12日から5日間で9人(12日3人、14日2人、17日4人)が脱走しており、17日の事案では、職員が収容中の少年にのこぎりを渡していたことが分かっている。このような不祥事が相次いでおり、職員の管理についても課題となっている。
ウ 22日から少年の犯歴の記録化が内務省鑑識局において開始されることとなった。これにより、前歴が容易に判明し、少年の処分を決定する上で重要な情報となる。なお、7月6日に国会で可決された「凶悪犯罪(殺人、緊縛強盗、強盗、誘拐、強姦)の犯歴を18歳の誕生日から2年間維持すること」については、9月中旬から運用を始める予定となっている。
エ 29日、プンタ・カレータス地区のBBVA銀行に武装した4人組が押し入り、警備員、客などを脅し、現金約1万ドル、クレジットカード、携帯電話などを奪う強盗事件が発生した。これで銀行強盗の発生件数は、本年累計9件となった。また、同銀行では、本年3月22日にも同様の被害にあっている。
(2)A型インフルエンザの影響で全国で15名が死亡、2,000名以上が急性気管支炎にかかり、前年比で約40%増となった。死亡者の多くが肥満であった。