(1)内政
●25日、187回目の独立記念日を迎え、フロリダ県ピエドラ・アルタにおいて開催された式典では、ムヒカ大統領に代わりオレスケル社会開発相が演説を行った。
●過激化傾向を強める国家公務員や公立病院職員によるストライキ・占拠が頻発した。
●Equipos Mori社が世論調査結果を公表し、ムヒカ大統領の政策への評価は政権発足後最低の39%を記録した。
(2)外交
●マルティン・ガルシア運河浚渫を巡る問題は一向に改善せず、更にはUPMセルロース工場問題が再燃するなど、対アルゼンチン関係は一層混迷の様相を呈してきた。
●ウルグアイの太平洋同盟オブザーバー参加に関する申請書簡が、同加盟各国の外相に対して送付された。
●地上波デジタルテレビ日伯方式の試験放送開始記念式典が実施された。
(3)社会
●7月末現在の犯罪統計が発表され、前年同期に比べて窃盗は減少したものの、殺人が56.7%増、強盗が5.3%増(緊迫強盗の件数を除く)との結果となった。
●内務省は、コロンビアのボゴタ及びメデシン、ブラジルのリオデジャネイロの治安対策をモデルとして今後の政策に生かしていくことを決定し、各都市の関係者と情報交換を行っていくことになった。
2 内政
(1)政府及び議会の動向
ア 5日、FA党総会が開催され、ラファエル・ミケリーニ上院議員(セレグニ戦線)、イボンヌ・パサダ元下院議長(MPP)及びフアン・カスティージョ前PIT-CNT委員長(共産党)の3名が党副総裁に就任した。
イ 8日、政府は、麻薬密売対策の一環として、大麻の生産・販売を国家の管理の下で合法化する法案を議会に送付した。本法案は、6月に公表された治安対策パッケージに含まれており、特に国内外で議論の的となっている。
ウ 22日、エルリッチ教育文化相は、国民党による上院への召喚を受け、教育改革に関する与野党合意等につき説明を行った。国民党は同大臣の辞任を求めたが、FA党が同大臣の立場を支持する旨謳った動議を提出し、上院は賛成多数でこれを議決した。
エ 25日、ウルグアイは187回目の独立記念日を迎えた。フロリダ県ピエドラ・アルタにおいて開催された式典では、ムヒカ大統領に代わりオレスケル社会開発相が演説を行った。
オ 25日、FA党は毎年恒例の「基盤委員会の日」を開催し、基盤委員会執行部の選出を行うとともに、今後の主要政策課題につき幅広い議論が行われた。
(2)野党の動向
6日、コロラド党のVamos Uruguayは、7月30日に発表したとおり、政府機関の要職に割り当てられている同派閥の8ポストを全て辞職した。これに対して、同じく野党の国民党が、デマゴーグ的行動であるとして強く批判した。
(3)軍政期の人権弾圧問題
ア 1973年に軍施設においてトゥパマロス所属のロベルト・ゴメンソーロが殺害されたとされる事件に関して、ウイドブロ国防相が、2010年に主犯として有罪判決が出されたフアン・カルロス・ゴメス退役軍人(服役中)は実際には無罪であると思われるとの内容の書簡を担当判事に送付していたことが判明し、波紋を呼んだ。
イ 1981年に軍施設においてトゥパマロス所属のオラシオ・ラモスが殺害されたとする事件に関して、控訴裁判所(第二審)は殺人の明確な証拠がないとし、ワルテル・グラ退役軍人に対する判決を破棄し、一時釈放を命じた。
ウ 1972年から1985年の間に、海軍銃隊(FUSNA)本部施設内において、政治囚に対する拷問が行われたとする40以上の証言が裁判所に提出された。
エ 30日、国際逮捕・行方不明者の日に際して、軍政期の逮捕・行方不明者を追悼するイベントが開催され、モンテビデオ市内リベルタ広場における集会には歌手のダニエル・ビグリエッティらが出演し、ブレンタ労働社会保障相他が出席した。
(4)2011年国勢調査確定値の公表
10日、国家統計院は、2011年国勢調査の確定値を公表した。人口は339万77人(回答者数は328万6314人)、人口増加率は年0.19%(過去10年最低)となった。
(5)世論調査結果
13日、Equipos Mori社が、ムヒカ大統領への評価及び支持政党に関する世論調査結果を公表した。ムヒカ大統領の政策に関して、「評価する」が39%と政権発足後最低を記録した。また、支持政党に関しては、FA党が42%と前回(本年4月)比+2ポイントとなった他、国民党24%(同:+2ポイント)、コロラド党16%(同:±0ポイント)、独立党1%(同:-1ポイント)、その他1%(同:±0ポイント)、白紙/無効票:2%(同:-1ポイント)、わからない16%(同:±0ポイント)との結果が出た。
(6)労働問題
ア 14日、国家公務員組合(COFE)は、政府の国家公務員法改正案に反対し、24時間ストライキを行った。その後も断続的にストや占拠を行っており、政府は厳しい折衝を迫られている。
イ 23日、公立医療機関の職員が予算拡充及び賃金アップを要求して大規模デモを行い、その後も断続的にストや病院の占拠を行っている。また、公立病院に勤務する外科医約60名が、夜間手当の拡充等を求めていたが合意に至らず、一斉に辞職すると発表した。
(7)その他
ア 8日、ムヒカ大統領の実妹マリア・ムヒカ氏が71歳で逝去した。
イ 16日、ムヒカ大統領は、英「モノクル」誌によって「世界最高の国家元首」に選ばれた。同誌は、ムヒカ大統領を「南米の名も無き英雄政治家」と評し、ポピュリズムとは一線を画した真の社会主義の生きた見本であるとしている。
ウ 17日、故リーベル・セレグニ将軍(FA党創設主要メンバーの一人)の未亡人リリー・レレナ氏が96歳で逝去した。
3 外交
(1)アルマグロ外相の米州機構(OAS)外相会合出席
24日、ワシントンにおいて、エクアドル・英国関係(ジュリアン・アサンジ氏亡命問題)に関する米州機構(OAS)外相会合が開催され、アルマグロ外相が出席した。
(2)対アルゼンチン関係
ア 3日、アルゼンチン政府はウルグアイ政府に対して、UPMセルロース工場が年間許容生産量100万トンを超過して生産を行っている旨抗議する内容の書簡を送付した。しかし、UPMによれば、2011年11月に同社はウルグアイ川管理委員会(CARU)に対して年間許容生産量の引き上げを要望し、その際にCARUアルゼンチン側代表団のリクエストに応えて外務省が詳細情報を準備していたところであり、亜政府の今次抗議は全く理解できない行為であると述べている。
イ 4日、アルゼンチン外務省はコミュニケを発出し、ラ・プラタ川管理委員会(CARP)ウルグアイ側代表団長を務めるブスティージョ外務省大臣秘書室長が駐アルゼンチン大使時代の2007年に関与したとされる高級車の不法輸入疑惑に関して、アルゼンチンの法廷において同氏が裁判を受けられるように同氏の外交官特権を剥奪するよう、ウルグアイ外務省に要求した。これに対して、政府は声明の発出を避けている。
ウ 6日、アルゼンチンは、カラスコ空港とアルゼンチンのアエロパルケ空港を結ぶBQB便を一方的に急遽欠航させ、乗客に大きな混乱が生じた。
エ 6月25日付の外務省公式文書において、「フォークランド諸島」との標記があったことが判明し、マルティン・ガルシア運河浚渫を巡るアルゼンチン政府による一連の「妨害行為」に対する対抗措置ではないかとの憶測が飛び交った。結局、外務省は15日付でコミュニケを発出し、上記標記は単なる「事務処理上のミス」であり、改めてマルビーナス(フォークランド)諸島の領有権及び標記につきアルゼンチン政府を支持すると表明した。
オ 29日、ウイドブロ国防相は、ウルグアイ訪問中のアルトゥーロ・プリセリ・アルゼンチン国防相と会談し、領空管制に関する二国間条約に署名を行った。また、国防に関する二国間常設委員会の創設につき合意した。
(3)対ブラジル関係
17日、モンテビデオにおいて、ウルグアイ・ブラジル二国間統合に関するハイレベル・ワーキンググループ第一回会合が開催され、アルマグロ外相、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相、ケチチアン観光スポーツ相、カネパ大統領府副長官らが出席した。
(4)対パラグアイ関係
9日、外務省は、外務大臣名で全在外公館に対して「メルコスール/UNASUR パラグアイ参加権利停止」と題した回章を発出し、パラグアイ政府関係者との公的な接触を絶つとともに、同国フランコ政権の正当性を認めるような性格の公的行事への参加を避けるよう通達した。ただし、通達の適用についてはケースバイケースで対応することとしている。
(5)太平洋同盟オブザーバー参加の申請
8日、アルマグロ外相は、ウルグアイの太平洋同盟オブザーバー参加に関する申請書簡を同加盟国であるメキシコ、コロンビア、ペルー及びチリの外相に対して送付したと明らかにした。なお、29日にメキシコで開催された太平洋同盟閣僚級会合において、同申請が承認された模様。
(6)対日本関係
9日、モンテビデオにおいて、地上波デジタルテレビ日伯方式の試験放送開始記念式典が実施され、日本からは山川総務審議官が出席した。ウルグアイ政府からは、ムヒカ大統領、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相、エルリッチ教育文化相、アルマグロ外相、ケチチアン観光スポーツ相、オレスケル社会開発相、カネパ大統領府副長官らも出席した。
(7)対米国関係
14日、ウルグアイ・米国間の国防に関する二国間戦略的対話第二回会合がモンテビデオにおいて開催され、ウイドブロ国防省らが出席した。また、米国側代表として出席したフランク・モラ米国防省次官補は、アルマグロ外相とも会談を行った。
(8)国際機関の動向
16日及び17日、モンテビデオのラテンアメリカ統合連合(ALADI)本部において、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)とALADIとの共催による「ラテンアメリカ・カリブ統合に関する地域・準地域メカニズム会合」が開催され、出席した14の地域・準地域機関代表は、CELACの機能強化及び統合プロセス深化のために連携して取り組んでいくことにつき合意した。
(9)その他要人往来
ア 2日、ロンドン五輪訪問で英国に滞在中のケチチアン観光・スポーツ相は、ジェレミー・ハント英文化・オリンピック・メディア・スポーツ相と会談し、2013年4月にウルグアイで開催予定の国際スポーツ・レジャー施設協会(IAKS)総会への招待の意向を伝えた。
イ 14日、ムヒカ大統領は、ウルグアイを訪問したピエダ・コルドバ元コロンビア上院議員と会談した。
ウ 24日、セサル・ガビリア元コロンビア大統領・元米州機構(OAS)事務総長がウルグアイを訪問し、エンリケ・イグレシアス元米州開発銀行(IDB)総裁が主催するASTUR財団において麻薬対策に関する講演を行った。
エ 23日、アンタナス・モックス元コロンビア・ボゴタ市長が来訪し、ボノミ内相らと治安対策につき意見交換を行った。
4 社会
(1)治安
ア 7月末現在の犯罪統計が発表された。前年同期に比べ、窃盗については減少が見られるものの、殺人が56.7%増、強盗が5.3%増(緊迫強盗の件数を除く)となっているほか、傷害、強姦なども増加している。
イ コムカル刑務所において、刑務官が刑務所内にパスタ・バセを持ち込んだとして刑務官1人、受刑者2人、その他関係者5人が逮捕された。また、刑務官らが受刑者を恐れているため、面会に来た弁護士を受刑者が収容されている部屋に案内するなど、刑務所の環境は一向に改善されていない状況にある。
ウ 2年に及ぶ内務省組織犯罪対策局の捜査によって、パイサンドゥ県の大規模な売春組織が解体された。同組織は、パイサンドゥ県やリオネグロ県で少女に売春の訓練をさせ、プンタ・デル・エステや海外の高級売春クラブに売り払っていた。
エ 内務省は、ウルグアイの治安対策について、コロンビアのボゴタ及びメデシン、ブラジルのリオデジャネイロの対策をモデルとするため、ボゴダ市長、メデシンの文化局幹部、リオデジャネイロの治安関係者等から話を聞き、今後の対策に生かしていくこととしている。