ウルグアイ内政・外交動向(2008年8月)
●概要
(1)内政面
(イ)内政
・バスケス大統領再選運動が活発になっていることを受け、バスケス大統領は再三に渡り自身の再選はない旨語った。
・ムヒカ上院議員が失効法廃止を求める書類に署名を行い、政府与党をはじめ野党からもFA党選挙公約に反するものであるとして非難を浴びた。
・次期大統領選に向けた準備のため、9月にアストリ経済財務相が大臣の座を退くことが発表された。
・本年3月から物議を醸していた個人所得税(IRPF)の修正が議会で可決された。
(ロ)大統領選に向けた各党の動き
与党拡大戦線(FA)党では、ムヒカ上院議員が亜、ベネズエラ、伯を訪問。亜ではフェルナンデス大統領及びキルチネル前大統領と会合を開き、ベネズエラにおいてはチャベス大統領と会談を行った。
他方、コロラド党ではアブダラ下院議員及びホセ・アモリン下院議員が相次いで新たな派閥を立ち上げた。
(2)外交面
(イ)バスケス大統領のルゴ・パラグアイ大統領就任式出席
(ロ)フェルナンデス外相とマドゥーロ・ベネズエラ外相の会談
(ハ)フェルナンデス外相とアモリン伯外相の会談
(ニ)フェルナンデス外相とハメド・パラグアイ外相の会談
(ホ)バスケス大統領一行のイスラエル・スイス・韓国訪問
●内政
(1)支持率調査
4日、テレビ番組にてCifra社が公表したアンケート結果(7月19日~27日に一般家庭1003人を対象に実施)によれば、『今日国政選挙が行われたとしたらどの党に投票するか』という質問に対し、42%がFA、
35%が国民党、7%がコロラド党、1%が独立党を支持するという結果になった。なお、アンケート対象者の15%が支持政党なし若しくは白紙投票すると答えた。
今回のアンケートの中でFA党に投票すると答えた人たちの中では、51%がムヒカ上院議員を支持、
35%がアストリ経済財務相を支持、14%がFA党のその他の候補者に投票すると答えた。
国民党の中なら誰に投票するかとの質問に対しては、ラカジェ元大統領47%、ララニャガ上院議員
45%、ビダリン・ドゥラスノ県知事6%、その他の国民党候補2%であった。
コロラド党に関しては、ボルダベリー前観光相67%、ホセ・アモリン下院議員12%、ルイス・イエロ前副大統領10%、その他のコロラド党候補10%となった。
(2)バスケス大統領の再選出馬否定
(イ)4日、バスケス大統領は官邸に閣僚及びレプラ前工業エネルギー鉱業大臣を集めて開催した夕食会にて、自身の大統領としての再選の可能性を再度否定するとともに、アストリ経済財務相とムヒカ上院議員がFA党大統領候補として一番相応しいと考えている旨語った。また、もう二度と公共の場で大統領選について言及したくないとも述べた。
(ロ)14日、ルゴ・パラグアイ大統領就任式出席のためにアスンシオンを訪れたバスケス大統領は、記者団からFA党内部(ロッシ運輸公共事業大臣やムニョス厚生大臣らを含む)でバスケス大統領再選運動が活発になっていることにつき質問を受けた。これに対しバスケス大統領は、「再選問題に関しては既に自分の考えを明示しており、信頼されているのは嬉しいことではあるが、もうこのテーマに関して話すつもりはない。また、上院議員という地位で政界に残る意思さえもない。」との意思を明確に示した。
(3)党内選挙日程変更案への反対
(イ)党内選挙の日程変更に関して、本年6月上旬にガジナル国民党上院議員の発案で5月第三日曜日に前倒ししてはどうかとの案が出されていたが、7日、上院議長のニン・ノボア副大統領が右提案をFA党幹部会(Secretariado Ejecutivo)に付したところ、同幹部会は全員が同提案を拒否した。FA党幹部会が今回の提案を拒否した主な理由としては、選挙日を早めた場合、FA党支持層において多数を占める学生ら約8万人が選挙権登録していない可能性があるということが挙げられている。
(ロ)FA党執行部は18日、ガジナル上院議員の提案に反対する旨決議し、ニン・ノボア副大統領は同決議をガジナル議員に伝えた。
(4)「労働者による職場占拠規制法案」への企業家等の反応
11日、企業家等が大統領官邸のバスケス大統領を訪れ、議会にて審議中の「労働者による職場占拠規制法案」につき、占拠自体が所有権及び企業主の就労の権利を侵害することから違憲であるとして、法案の審議中止を求めた。これに対し、バスケス大統領は、既に国会にて審議中であるため、当案件は議員と交渉すべきと述べ、巧みに企業家等の求めをかわした。
(5)経済財務相交代予定
11日閣議後の記者会見にて、バスケス大統領は同席のアストリ経済財務相が9月15日付けで離任すること、及び後任として同席の前国家開発公社総裁のアルバロ・ガルシア氏が就任し、経済チームも刷新されると公表した。また、バスケス大統領は、大臣が代わろうとも政策綱領に沿ったこれまでのマクロ経済政策は維持されると語った。
経済財務相交代と同時に、ベルガラ経済財務次官に代わりこれまでのバスケス政権の3年間経済財務省にてマクロ経済顧問を務めてきたAndres Masoller氏が次官に(ガルシア次期経済財務相とは25年に渡って旧知の仲)、また、ロレンソ・マクロ経済局長に代わり同じく経済財務省にて政策策定に携わってきたMichael Borchard氏がマクロ経済局長に就任することとなった。
アストリ経済財務相は、上院議員として、また、FA党大統領候補として各派閥からの支持を取り付けるべく選挙キャンペーンを始めることになる。
(6)国会審議
(イ)個人所得税(IRPF)修正問題
(a)4日、FA議員らを前にアストリ経済財務大臣は個人所得税修正についての説明を行うとともに、今次改正が政府側からの最大限の譲歩であり、地方の貧しい生産者らの現状に配慮して出来るだけのことはするが、これ以上の税の引き下げは無いと述べた。
(b)26日、下院にて個人所得税修正法案が承認された。出席議員55名のうち54名が賛成票を投じ、反対したのは独立党ポサダ議員のみであった。今回の修正により労働者及び年金受給者の80%が所得にかかる税金を払わなくて良くなり、20%の富める層のみが所得にかかる税を納めることになるとアストリ経済財務相は語った。
(c)上院は28日、個人所得税修正案を可決し、これにより修正版個人所得税は9月1日より施行されることになる。最低課税額は8875ペソから12425ペソに引き上げられ、18歳未満の子供を扶養する納税者に関しては控除額が倍(注:扶養する子供1人につき控除額が961ペソから1922ペソへ)になる。また、
2009年1月1日からは1家族毎の納税も可能となり、夫婦どちらかの収入が最低賃金(現時点では4150ペソ)以下である場合、最低課税対象額は14200ペソとなる。夫婦双方が最低賃金以上の収入を得ている場合、一家族の最低課税額は24850ペソとなる。
(ロ)アルコール飲料販売規制法案
政府当局の統計によれば、中等教育課程にある学生の51.4%が恒常的にアルコールを摂取している。また、飲酒運転による交通事故も後を絶たない。このような現状に対応するため、政府は、12日アルコール飲料販売規制のための法案を議会に送った。
当法案が成立すれば、大規模なスポーツイベント、文化イベント、音楽イベントにおけるアルコール飲料販売が禁止される上、イベントが行われる場所の5ブロック四方にわたってイベント開始前と終了後それぞれ2時間アルコール飲料の販売が禁止される。また、キオスクやガソリンスタンド、インターネットカフェ、ボーリング場など娯楽施設でのアルコール飲料購入・飲酒も禁止される(アルコール飲料の販売もライセンス制にする)。
アルコール飲料の宣伝も規制され、18歳未満を対象としたアルコール飲料の宣伝はもちろんのこと、宣伝の中で外見上18歳未満に見える人間を起用することも禁じ、スポーツウェアなどでもアルコール飲料の広告印刷が禁じられることになる。アルコール飲料の容器に関しても、アルコールが人体に与える健康上の危険性について記載するよう規定される。ディスコに関しては営業時間の短縮を求める法案となっている。なお、居酒屋やビリヤードバー等にはこの法律は適用されない予定。
(ハ)メルコスール・イスラエルFTA締結の議会による批准
8月13日、両院総会にて2007年12月18日に締結されたメルコスール・イスラエルFTAが批准され、8月21日公示された。
(ニ)2009年度補正予算案
20日、上院は7月11日に下院で承認された補正予算案を可決した。軍人の給料改善、組織犯罪撲滅のための検事局創設等、防犯対策予算を重視した法案修正が加えられたため、下院にて今一度審議される。
(ホ)米国・ウルグアイ貿易投資枠組み協定(TIFA)批准
27日、2007年1月に締結された米国とのTIFAが上院にて出席議員20名全会一致で採択され、今後批准手続きに入る。
(7)大統領選に向けた各党の動き
(イ)与党拡大戦線(FA)党
(a)21日、ムヒカ上院議員(MPP)は亜にてフェルナンデス大統領及びキルチネル前大統領と1時間半に渡る会談を果たし、セルロース工場問題をはじめ様々な話題について話し合った。この会合については、ムヒカ上院議員側近のみが事前に承知していたとのこと。バスケス大統領さえも、事前に知らされていなかった由。他方、ムヒカ上院議員は今次亜出張は自身がFA党大統領選挙候補であることとは関係ないとしている。
(b)25日、各地で基盤委員会メンバーらが集まり、12月に行われる党大会(FA党公認大統領候補選出が行われる)参加メンバーを選ぶことになる役員を選出した。今次集会の中で、ブロベットFA党代表は、2007年12月15日、16日に実施されたFA党大会にて失効法の廃止が支持され、右に向けた署名活動を行う決議がなされたにも関わらず、FA党員の大多数が失効法廃止に向けたキャンペーンに参加していないことを指摘した。
(c)27日~30日、ムヒカ上院議員(及びボノミ労働社会保障大臣:MPP)はベネズエラを訪問した。表向きはウルグアイ及びベネズエラのサッカー友好試合出席が目的であったが、29日にはチャベス大統領の招きでムヒカ及びボノミ大臣はオリノコ油田地帯を視察した他、両国の通商関係、二国間関係などについてチャベス大統領と会談を行った。他方、ムヒカ上院議員は、ベネズエラでは、コレア・エクアドル大統領とも顔を合わせた模様。
(ロ)国民党
2日、ララニャガ国民党党執行委員会委員長(上院議員)(アリアンサ・ナシオナル派)は、9月27日の国民党大会を機に現職を辞する旨公表した。その後は、党内選挙に向けたキャンペーンに専念する由。
(ハ)コロラド党
(a)ワシントン・アブダラ下院議員(元フォロ・バジスタ派)が、7日、自身が率いる派閥「Podemos Más」の立ちあげを宣言した。今後、コロラド党大統領候補として自身の選挙キャンペーン活動を開始する。
(b)28日、ホセ・アモリン下院議員は、2009年大統領選に向けて、新たな派閥「Batllismo Siglo XXI」の事務所開所式を行った。
●外交
(1)バスケス大統領のルゴ・パラグアイ大統領就任式出席
(イ)14日から15日にかけてバスケス大統領は、同夫人、フェルナンデス外相、ボノミ労働社会保障相、アストリ経済財務相、トゥルネ内務相、ムヒカ上院議員、トポランスキー上院議員(ムヒカ上院議員夫人)、モンソン国家食糧協会(INDA)代表、エルリッチ・モンテビデオ県知事、ブレシアCANAL5(国営放送)代表等と共にアスンシオンを訪問し、15日のルゴ大統領就任式に出席した。今次大統領就任式には、多くのFA議員等も別途就任式に参加しており、その参加者数は他国を圧倒的に凌駕した。
就任式においてバスケス大統領はルゴ新大統領に対し、メルコスール域内に依然として存在する不均衡を解消することを呼びかけた。他方、モラレス・ボリビア大統領は、数年前に頓挫したままとなっている所謂URUPABOL(ウルグアイ・パラグアイ・ボリビアによる同盟)構想の再考を、新たな地域同盟の選択肢としてウルグアイ及びパラグアイに対して提案した。
(ロ)バスケス大統領及びフェルナンデス外相、アストリ経済財務相は14日アスンシオン着後、グティエレス米商務長官と会談し、両国の置かれている現状についてそれぞれ確認しあった。
(ハ)バスケス大統領とともにパラグアイ入りしたムヒカ上院議員は、ルゴ大統領の求めにより急遽ウルグアイ帰国日を17日まで延ばし、ルゴ大統領及びチャベス大統領とともに、パラグアイでも最も貧困率の高いサン・ペドロ市を訪問した。
(2)フェルナンデス外相とマドゥーロ・ベネズエラ外相の会談
17日マドゥーロ外相がウルグアイを訪問し、フェルナンデス外相との会談においてインシュリン研究機関設立、対ベネズエラ輸出214品目の関税引き下げ、バイオテクノロジー関連での協力、シモン・ボリバル通信衛星の11月1日打ち上げを目指すこと等につき合意に達した。
また、共同声明にて、両外相はベネズエラのメルコスール早期正式加盟を期待する旨表明した。他方、両国の良好な関係を確認した他、多国間分野での地域統合メカニズムとして南米諸国連合(UNASUR)を進展させることでも合意した。
(3)フェルナンデス外相とアモリン伯外相の会談
18日、フェルナンデス外相は当国外務省にてアモリン伯外相と会談した。この中で、アモリン外相は、伯が共通対外関税の二重課税撤廃を優先・緊急事項として捉えている旨説明し、右撤廃は2009年中に実施されるべきと語った。他方で、ドーハ・ラウンド妥結に向けたより一層の努力が必要である旨強調するとともに、EUとの交渉の再開の必要性にも触れた。フェルナンデス外相はウルグアイとしても右に関し同調する旨述べるとともに、アモリン外相に対し、メルコスール加盟各国がEUや第三国との交渉を各国のペースで比較的自由に進められるような柔軟性が認められることに関心があると語った。
(4)フェルナンデス外相とハメド・パラグアイ外相の会談
22日、パラグアイのハメド外相がモンテビデオを訪問し、フェルナンデス外相と会談。メルコスールの小国同士として共通政策実施の必要性につき合意した。
(5)バスケス大統領一行のイスラエル・スイス・韓国訪問
(イ)バスケス大統領のイスラエル訪問
23日から27日までバスケス大統領は、大統領夫人、アストリ経済財務相、ムニョス厚生相、アガシ農牧水産相、シモン教育文化相、バス外務次官、Pit-Cnt代表、企業関係者等と共にイスラエルを訪問した。滞在中の主なイベントは以下。
(a)24日、平和維持活動(MFO)のためシナイ半島(エジプトとの国境付近)に展開する83名のウルグアイ軍兵士慰問。
(b)ペレス大統領、オルメルト首相、リヴニ外相とそれぞれ会談。オルメルト首相との1時間以上に渡る会談においては、産業界における起業を支援すべく両国共同の投資基金の設立につき合意した。また、科学研究の発展に向けた協力協定に署名した。
(c)ペレス大統領主催晩餐会が25日に開催され、この場でバスケス大統領は、世界平和のためテロには決然とした態度で臨むべきと述べた。一方ペレス大統領は、独立記念日という大切な日にイスラエルを訪問してくれたバスケス大統領に感謝するとともに、メルコスール・イスラエルFTA締結推進に果たしたウルグアイの役割を賞賛した。
(d)26日、ワイツマン科学研究所を訪れ、原子エネルギー施設などを視察したバスケス大統領は、同研究所のモンテビデオ支部設立を希望している旨研究所当局に伝えた。
(e)26日、テル・アビブにてイスラエル現地企業家等と会合を開いたアストリ経済財務相は、両国のビジネスを活性化させるべく、投資受け入れ国としてのウルグアイの優良性及び良好な経済情勢について説明を行った。
(ロ)バスケス大統領のスイス訪問
27日から29日にかけて、バスケス大統領はイスラエルに続いてスイスを訪問した。
(a)バスケス大統領は、27日クシュパン大統領との会談に臨み、メルコスールの統合過程について現状説明すると同時に、メルコスール・EU関係について述べた。
(b)27日、ジュネーブで開催された世界腫瘍学会に出席したバスケス大統領は、スピーチを行い、癌という病気がコントロール不可能な要因と治療可能な要因とで発症する点を強調し、ニコチン中毒やアルコール中毒、栄養失調、肥満、事務仕事による運動不足などを治療・矯正可能な要因として挙げた。バスケス大統領は、タバコに関して、ウルグアイがラテンアメリカでは初めて、世界では7番目に公共の場での喫煙を全面的に禁じたことを強調した。
(c)28日、バスケス大統領は、アストリ経済財務相、アガシ農牧水産相、バス外務次官、ホルヘ・バスケス大統領府副長官、バジェスWTO代ウルグアイ大使を帯同し、ラミーWTO事務局長と会談した。この場で、バスケス大統領は、世界貿易における「明確なルール」の必要性を訴え、同時にウルグアイのような国々が二国間協定で前進するに当たって国際場裏を最大限に活用できるよう「透明性及び開放性」のある環境作りを求めるとともに、多角的メカニズムの必要性を強調し、本年末までに補助金削減と世界貿易の段階的な自由化についての具体的協定結実を求めた。また、バスケス大統領は、ラミー事務局長のこれまでの施策を支持する旨述べた。
(ハ)バスケス大統領の韓国訪問
(a)8月30日から9月3日にかけて、バスケス大統領一行が韓国を訪問し、1日、イ・ミョンバク大統領との会談が開催された。両首脳は、国際場裏における両国間協力を促進することで合意に達した。また、イ・ミョンバク大統領は、牛肉輸入のためのフィージビリティ調査を開始するために近々専門家代表団をウルグアイに派遣することを約束した。他方、バスケス大統領は、韓国からの投資にインセンティブを与えるべく、二重課税防止を含む投資保護促進協定を締結する準備があると表明するとともに、イ・ミョンバク大統領をウルグアイへ招待した。
(b)2日、バスケス大統領は韓国企業家等を前にスピーチし、次期大統領選に専念するために15日に引退を控えたアストリ経済財務相のこれまでの経済政策を賞賛した。また、バスケス大統領は、ウルグアイ政府が追求する民主主義と広範な市民参加を基礎とする社会正義を伴う経済成長のためには投資、生産、貿易が必要であること、また、ウルグアイは安定したマクロ経済対策を採用しており、外国企業を差別するようなことはないとも述べた。
●要人往来
(1)ムヒカ上院議員の伯訪問
7月30日から2日まで、ムヒカ上院議員はトポランスキー夫人(上院議員)とともに伯サンパウロを訪問した。今次伯訪問では、伯与党のPT(労働者党)幹部等(ガルシア伯大統領府外交問題特別補佐官を含む)との会合、モラレス・ボリビア大統領を支援する集会にも参加。また、農牧関連の研究機関を訪問した。ルーラ伯大統領と面談することも目的の一つであったが今回は叶わなかった。
(2)シモン教育文化大臣のチリ訪問
1日、チリのサンティアゴを訪問したシモン教育文化大臣は、ウルティア・チリ国家文化芸術評議会議長と会談し、映画の共同製作による両国の協力・統合を主な目的とした覚書に署名した。この合意は2年間有効で、どちらかが異議を唱えない限り自動的に更新される。
●その他
(1)米州人権裁判所特別セッション開催
11日~15日、米州人権裁判所の第35回特別セッションがモンテビデオにあるメルコスール事務局にて開催された。今次集会では、パナマにおける表現の自由(パナマ政府による一般国民の私的通話傍受・録音及びその公開)やブラジルでの2つの同様の事項について審議がなされた。
(2)メルコスール関連
(イ)メルコスール議会開催
18日、モンテビデオにてメルコスール議会が開催されアモリン伯外相がメルコスール議長国として伯が今年下半期に推進していくテーマについて語った。
この中で、同外相は、メルコスールを関税同盟として強化するため、対外共通関税の二重課税撤廃を今年下半期の優先事項とする旨述べた。また、ドーハ・ラウンドの結果待ちで2004年以降停滞していたEU・メルコスール地域間連携協定のための交渉再開を目指している点にも触れた。
(ロ)ペニャ・メルコスール人権委員会委員長のベネズエラ訪問
6日及び7日、ペニャ議員(メルコスール人権委員会委員長、国民党下院議員)が、約200名のベネズエラ地方選挙候補者(野党候補者)の資格剥奪に関する事情聴取を目的にベネズエラを訪問し、人権侵害の疑惑があると報告したことに関し、マドゥーロ・ベネズエラ外相はじめベネズエラ政府から国内問題への干渉であると非難を受けた。
これを受け、18日モンテビデオにて開催されたメルコスール議会セッションでベネズエラでの地方選挙候補者資格剥奪を巡るペニャ・メルコスール人権委員会委員長の対応が激しい議論の対象となった。
ペニャ議員はベネズエラ訪問中、ベネズエラ政府関係者と会っておらず、そのため、同議員の報告書が部分的な評価でしかないとの判断もなされている。今次メルコスール議会セッションの中でベネズエラ与党議員等はペニャ議員の辞任を求めた。
本件に関し、メルコスール議会人権委員会は、ペニャ議員のベネズエラ訪問時の行動に関して同議員の責任を問う決議を採択した。右決議は、メルコスール人権委員会のメンバーは中立性及び客観性を持って行動する義務があるとし、ペニャ議員によるベネズエラでの行動は委員会を代表したものではないとして右を非難している。
(3)失効法(軍事政権時に行われた軍人による人権侵害を免責とする法律)廃止関連
(イ)ムヒカ上院議員は19日、失効法廃止キャンペーンに賛同し、同法廃止を求める書類に署名を行った。現在のところ署名数合計は約11万5千。法改正には全部で約25万の署名が必要とされる。政府関係者は、バスケス大統領の公約に真っ向から反対するムヒカ上院議員の行動に遺憾の意を表している。
(ロ)28日、バジャルディ国防大臣がバスケス政権閣僚としては初めて「もしも大臣という職になければ失効法廃止を支持していただろう」と語り、個人的には失効法には反対である意向を示した。しかし政権内にいる限りは、現状維持に努めるとも述べた。