ウルグアイ内政・外交:7月
1 概要
(1)内政
●アルマグロ外相は上院の召喚を受け、第43回メルコスール首脳会合におけるパラグアイの参加権利停止及びベネズエラの正式加盟決定に関する政府の立場につき説明を行った。
●国民党のラカジェ上院議員が次期大統領選挙への不出馬を表明するとともに、現政権は権威主義的であると発言し物議を呼んだ。また、コロラド党のVamos Uruguayが政府関連機関のポストを全て辞職すると発表した。
●各種世論調査結果が公表され、与野党ともに支持率を下げた一方、白紙/無効票等が増加した。また、ムヒカ大統領に対しては、特に政策への評価に関して厳しい結果が出た。
(2)外交
●ムヒカ大統領は、ブラジリアで開催されたメルコスール臨時首脳会合に出席した他、ルセーフ伯大統領及びチャベス・ベネズエラ大統領と首脳会談を行った。
●アルマグロ外相はペルーを訪問し、太平洋同盟へのオブザーバー参加に関心を表明した。
●アゲレ農牧水産相、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相らが韓国を訪問した。
●マルティン・ガルシア運河浚渫を巡り、対アルゼンチン関係が混迷の様相を呈してきた。
(3)社会
●モンテビデオ県内の治安改善傾向が確認され、県警による新たな治安対策の効果が現れてきたものとみられている。
●ウルグアイ少年庁(INAU)施設からの脱走者数が前年同期に比べ大きく減少している。
2 内政
(1)政府及び議会の動向
ア 5日、政府はPluna航空の経営状況悪化に伴い同社の破産を発表し、9日には信託等につき規定する法案を議会に送付した。同法案は両院での承認を経て、17日に法律として公布され、同社資産の競売プロセスが進められることとなった。
イ 18日、182回目の憲法宣誓記念日を迎え、政府式典では、体調を崩しているムヒカ大統領に代わり、ウイドブロ国防相が演説を行った。
ウ 24日、アルマグロ外相は国民党による上院への召喚を受け、第43回メルコスール首脳会合におけるパラグアイの参加権利停止及びベネズエラの正式加盟決定に関する政府の立場につき説明を行った。国民党からは同外相の辞任を求める声も上がったが、FA党が同外相の立場を支持する旨謳った動議を提出し、上院はこれを議決した。
(2)野党の動向
ア 21日、国民党のUnidad Nacionalが派閥大会を開催し、ラカジェ上院議員(元大統領)が、次期大統領選挙への不出馬を表明した。ラカジェ議員はまた、現政権を「全体主義的・権威主義的であり、自由にとっての脅威である」と強烈に弾劾したことから、FA党のみならず国民党内部からも常軌を逸した発言であるとして批判の声が上がった。
イ 30日、コロラド党のVamos Uruguay代表を務めるボルダベリ上院議員は、現在国営企業を中心に政府機関の要職に割り当てられている野党ポストに関して、同派閥が占める計8ポストを全て辞職すると発表し、野党内で対応を巡り混乱が生じた。
(3)各種世論調査結果
ア 17日、Cifra社が支持政党に関する世論調査結果を公表した。支持政党に関しては、FA党が37%と前回(本年5月)比-3ポイントとなった他、国民党19%(同:-2ポイント)、コロラド党14%(同:-3ポイント)、独立党2%(同:+1ポイント)、わからない、白票/無効票28%(同:+7ポイント)との結果が出た。
イ 18日、Cifra社がムヒカ大統領への評価に関する世論調査結果を公表した。ムヒカ大統領に「親しみを感じる」との回答が49%と前回(本年5月)比-5ポイント、「嫌悪を感じる」が30%(同:+4ポイント)となり、ムヒカ政権の政策評価に関しては、「評価する」が40%(同:-5ポイント)、「評価しない」が39%(同:+9ポイント)となった。
ウ 27日、Factum社が支持政党に関する世論調査結果を公表し、FA党が41%と前回(本年5月)比-2ポイントとなった他、国民党20%(同:-2ポイント)、コロラド党15%(同:-2ポイント)、独立党2%(同:±0ポイント)、白紙/無効票10%(同:+1ポイント)、その他政党/わからない12%(同:±5ポイント)との結果が出た。
3 外交
(1)メルコスール臨時首脳会合への出席
31日、ムヒカ大統領は、ブラジリアで開催されたメルコスール臨時首脳会合及びベネズエラのメルコスール正式加盟式典に出席した。また、30日にはこれに先立ち非公式外相会合が開催され、アルマグロ外相が出席した。
(2)対アルゼンチン関係 ~マルティン・ガルシア運河浚渫を巡る動向~
24日、ウルグアイ会計検査院(TCR)は、ラ・プラタ川管理委員会(CARP)によるRiovia社との契約に関する調査報告書を公表し、違法行為の可能性が完全には排除できないとしてウルグアイ側の告訴の余地を認めたところ、アルゼンチン政府がこれに反発し、25日にマルティン・ガルシア運河浚渫に係る事業プロセスの延期を一方的に決定した。
外務省は25日付でコミュニケを発出し、告訴は行わないとの立場を明確に表明するとともに、アルゼンチン政府による延期決定を非難し、交渉の早期再開を要求したが、27日にアルゼンチン政府は、Riovia社を入札から排除することを決定した旨コミュニケで公表。同日、ウルグアイ外務省もコミュニケを発出し、今回の措置はアルゼンチン政府の一方的な決定であり、これに伴う結果の責任は全てアルゼンチン政府に帰する旨述べた。また、31日のメルコスール臨時首脳会合の際に、ムヒカ大統領はフェルナンデス亜大統領に対して、本件解決のため対話を求めたとされているが、依然交渉再開の目処は立っていない。
(3)ルセーフ伯大統領との会談
31日、ムヒカ大統領は、メルコスール臨時首脳会合出席のためブラジリア滞在中にルセーフ伯大統領と会談を行い、二国間の通商・協力に関するハイレベル・ワーキンググループを発足させることで合意した。
(4)チャベス・ベネズエラ大統領との会談
31日、ムヒカ大統領は、メルコスール臨時首脳会合出席のためブラジリア滞在中にチャベス・ベネズエラ大統領と会談を行い、両国の生産性マップ作成につき合意した他、二国間通商・投資関係の深化等につき協議した。
(5)アルマグロ外相のペルー訪問 ~太平洋同盟オブザーバー参加への関心表明~
24日、アルマグロ外相はペルーを訪問し、ウマラ・ペルー大統領及びロンカリオロ同外相と会談を行った。アルマグロ外相は、ロンカリオロ・ペルー外相の呼びかけに応え、太平洋同盟にオブザーバー参加することへのウルグアイ政府の関心を表明した。
(6)対韓国関係
ア 16日~21日、アゲレ農牧水産相率いる政府代表団が韓国を訪問し、ウルグアイが出展しているヨス国際博覧会を訪れたほか、通信やエネルギー分野に関する二国間協議を行った。今回の訪問には、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相を始め政府関係者や民間代表、労組代表が同行した。なお、当初はアストリ副大統領が訪問団長を務める予定であったが、風邪による体調不良を理由に急遽参加を取りやめることとなった。
イ 27日、韓国の国土海洋部高官がウルグアイを訪問し、ジオリファレンス化及び空間データ基盤に関する二国間協力の強化につき両政府間で協議が行われた。
(7)メメディヤロフ・アゼルバイジャン大統領のウルグアイ訪問
27日、ムヒカ大統領及びアルマグロ外相は、ウルグアイ訪問中のメメディヤロフ・アゼルバイジャン外相と会談を行い、経済協力協定及び査証免除協定に署名したほか、通商・文化面における二国間関係の強化につき協議した。同国政府要人のウルグアイ公式訪問は今回が初めて。
(8)対国際機関関係
ア 6月27日~7月2日、プンタ・デル・エステにおいて、水銀に関する条約の制定に向けた政府間交渉委員会第四回会合(INC4)が開催され、日本からも政府関係者等が出席した。
イ 2日~9日、ニューヨークにおいて、国連経済社会理事会(ECOSOC)実質会期ハイレベル・セグメント年次閣僚級レビューが開催され、ブレンタ労働社会保障相が2日のセッションで本年4月にウルグアイで開催された地域準備会合の結果報告を行った。
ウ 4日~6日、エクアドルのキトにおいて、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)人口開発特別委員会が開催され、ブリオッツォ厚生省次官が出席した。会合では、同委員会が「ラテンアメリカ・カリブ人口開発地域会議」に格上げされ、2013年に第一回会合がウルグアイで開催されることが決定した。
エ 25日及び26日、モンテビデオにおいて、ラテンアメリカ・エネルギー機関(OLADE)石油・ガスに関する第二回ラテンアメリカ・カリブ会議が開催された。
オ 27日に国連武器貿易条約(ATT)制定会議において交渉が決裂したことに関して、外務省はコミュニケを発出し、交渉決裂に遺憾の意を表明しつつも、条約制定プロセスに重要な前進がみられた点につき評価した。また、ウルグアイ政府が会議において人道的問題や人権保護に関する規制を同条約に盛り込むべきであるとの立場を取った点を強調した。
4 社会
(1)治安
ア 1月1日から7月15日までの犯罪統計が公表され、モンテビデオ県内における治安改善傾向が確認された。窃盗については、モンテビデオ県では前年同期比で9.1%減少し、カネロネス県でも2.2%減少している。また、強盗事件についても、モンテビデオ県内で本年1月から5月には毎月1000件を超えていたが、6月は861件に減少している。モンテビデオ県警では、本年1月から、警察官の増員、共和国治安部隊と連携したパトロール等新たな治安対策を推進しており、これらの効果が現れてきたものとみられている。
イ 本年1月1日から7月15日までの間のウルグアイ少年庁(INAU)施設からの脱走者数は43人(うち24人は再収容)で、前年同期の194人に比べ大きく減少している。2009年は695人、2010年は440人が脱走している。
ウ モンテビデオ県ヌエボ・パリス地区(第19警察署管内)において、盗品捜査のための家宅捜索が行われ、本年最高量となる168キログラムのマリファナ等が押収された。
エ マルドナード県サン・カルロス市内で活動しているカルト集団「Ho Li Tao」の教祖らが信者に対する監禁などの疑いで逮捕された。同カルト集団は1980年代にシウダ・ビエハ地区で活動を始め、2000年にはカネロネス県エル・ピナル市内に道場を建設した。最近になり、サン・カルロス市内の農場に信者を監禁し、奴隷的扱いをしていた。
オ 本年上半期の国道における交通事故統計が発表された。発生件数は1577件で、前年同期比11%の増加となったが、死者数は84人と、前年同期比24%の減少となった。