ウルグアイ内政・外交動向(2006年7月)
●概要
セルロース工場建設問題に関して、大きな局面であるハーグ国際司法裁判所(ICJ)の判決が14日に出された。14対1で亜からの建設工事中止の要求が退けられた右結果は、政府当局にとって予想以上の好結果であった。今後は、橋梁封鎖による経済的損失の補償、将来的な封鎖の回避、世銀融資の早期獲得が課題となる。ガルガノ外相は二国間共同モニタリング委員会の結成を提案するなど亜政府との接近が計られたが、亜の対応は鈍く二国間関係に大きな進展はない。
また、4日にカラカス(ベネズエラ)でベネズエラの正規加盟に関する議定書の調印式が、20日にコルドバ(亜)でメルコスール共同市場審議会(CMC)が開催され、メルコスール加盟国首脳が短期間に2度も一同に会した。ICJ判決に前後していたため、バスケス大統領とキルチネル亜大統領の会談の可能性が注目されたが、会談は実施されず儀礼的挨拶が交わされたのみであった。バスケス大統領は、CMCの首脳会合において、域内大国の伯・亜は小国ウルグアイ・パラグアイに対して域内格差からくる不利益に配慮するべき旨を強調した。
●内政
(1)与党拡大戦線(FA)党の全国総会
7月16日、与党FA党の全国総会が開催され、多数派の政治派閥によって草案された政策要綱「地域と世界に統合されたウルグアイ」が承認された。右は、FTAA及び生産的な国家建設の妨げになるような二国間での経済協定は締結しないとする第4回特別党大会の決議を再確認しつつも、ウルグアイの世界市場進出に有益である場合は二国間経済協定の締結を承認する内容となっている。
また、総会では11月12日に全国総会構成員を選出する党内選挙を開催する旨決定した。
(2)ラバジェハ県メロ市での閣僚会議
7月23日、ラバジェハ県メロ市において閣僚会議が開催された。右会議において、ムニョス厚生相は国民が等しく保健医療を受ける権利を保障するために憲法改正を提案した。
(3)スラムの増加
国家統計院(INE)は、スラムが2000年以降に32%増加している旨の調査報告書を発表した。右によると、全国のスラム数は00年に464であったのに対し、06年には676に急増し、全人口の6%にあたる195,772人が居住している。また、スラムの約5分の3(412箇所)がモンテビデオにあり、首都在住者の11%(144,707人)が居住している。
●外交
(1)ハーグ国際司法裁判所(ICJ)
7月13日、ICJは、亜がウルグアイをウルグアイ河協約違反で提訴し工場建設停止の仮保全要求をしていた件に関して、14対1で亜の要求が却下された。
(2)メルコスール
7月4日、バスケス大統領はベネズエラを訪問し、ベネズエラのメルコスール加盟に関する議定書の調印式に出席した。
また、20日には、亜のコルドバで開催されたメルコスール共同市場審議会・首脳会合に出席した。
(3)PKO
7月5日、上院はハイチにおけるPKO活動に対する増員を承認した。これまで活動してきた要員のうち160名が帰国し、23日及び28日に新たに派遣され計227名が活動している。
(4)中東問題
7月10日、在ウルグアイ・イスラエル大使は、国連人権理事会が出したイスラエルのパレスチナ侵攻非難決議にウルグアイが賛成票を投じたことに関し、ガルガノ外相に対して意見の相違を表明した。また、与党FA党の政治執行部が「選挙で選ばれたパレスチナ政府へのイスラエルの介入」と表明した点についても遺憾を表明した。
17日、右に対し、ガルガノ外相は中東、特にイスラエルとレバノンの紛争について、即時停戦及び平和維持を訴えるコミュニケを発表した。
●政府要人等往来
(イ)7月4日、バスケス大統領はベネズエラのメルコスール正式加盟に関する議定書の調印式に出席するためカラカスを訪問した。
(ロ)7月16日、エルリッチ・モンテビデオ県知事はキューバ政府の招聘によりハバナを訪問し、キューバとベネズエラがラ米・カリブで実施している奇跡の作戦(Operacion Milagro)の実績を高く評価し謝意を表明した。
(ハ)7月20、21日 バスケス大統領は亜コルドバを訪問し、第30回メルコスール共同市場審議会・首脳会合に参加した。