ウルグアイ内政・外交:6月
1 概要
(1)内政
●先月に引き続き閣僚交代が行われ、ムスレラ住宅土地整備環境相に代わってベルトラメ農村部不衛生住宅根絶推進委員会(MEVIR)委員長が新大臣に就任した。
●政府は治安対策パッケージを発表し、中でも大麻の栽培及び販売に関するプロジェクトは国内外で大きな反響を呼んだ。
●モニカ・シャビエル上院議員がFA党新総裁に就任した。
(2)外交
●ムヒカ大統領は、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)会議に出席した。また、現地滞在中にはルセーフ伯大統領と会談を行った。
●ムヒカ大統領は、アルゼンチンのメンドーサで開催された第43回メルコスール首脳会合に出席した。
●温家宝中国首相がウルグアイを訪問した。
(3)社会
●モンテビデオ県内におけるバス強盗の多発を受け、県警本部はパトロール強化や検問等を実施している。
●2013年1月から、国内で統一的に管理する新免許制度が開始されることが発表された。
2 内政
(1)閣僚交代
8日、ムヒカ大統領は、グラシエラ・ムスレラ住宅土地整備環境相を解任し、新大臣としてフランシスコ・ベルトラメ農村部不衛生住宅根絶推進委員会(MEVIR)委員長を任命した。ベルトラメ新大臣は、ウルグアイ建築家協会理事を務めたほか、住宅土地整備環境省国家住宅局(DINAVI)顧問や同農村住宅局長を歴任している。現政権での閣僚交代は今回が5人目。
(2)政府及び議会の動き
ア 5日、ボノミ内相は、国民党のカルドソ下院議員による下院への召喚に応じ、約5時間に渡って治安問題や刑務所における暴動事件等に関する説明を行った。これに対して、国民党が同内相の不信任決議案を提出するとの意向を表明したところ、同内相の召喚に際して国民党に協力していたコロラド党が、両党合意に国民党が背いたとして退席する事態となった(最終的に下院は不信任決議案を否決)。
イ 12日、アルマグロ外相、コンデ外務次官及びブスティージョ・ラプラタ川管理委員会ウルグアイ側委員長は、上院にてマルティン・ガルシア運河浚渫を巡る一連の問題に関して説明を行った(5月内政・外交定期報告参照)。
ウ 19日、ムヒカ大統領は、スペインからの独立戦争を率いたホセ・アルティガスの生誕日に際し全国のテレビ・ラジオを通じて国民向け演説を行い、昨今の治安悪化に関して、政府のみならず国民全体が取り組むべき課題であるとして、他者への思いやりと生命の尊さといった基本的価値観を再認識するよう呼びかけた。
エ 20日、ボノミ内相、ウイドブロ国防相、オレスケル社会開発相及びブレチア大統領府長官は、「生命と共生」と名付けられた治安対策政策パッケージ15項目を発表した。同パッケージには大麻の栽培及び販売を合法化し、国がこれを管理するプロジェクトも含まれており、国内外で大きな反響を呼んでいる。
(3)与党拡大戦線(FA)党関係
5月27日に実施されたFA党の党内選挙の結果、42.97%を獲得したモニカ・シャビエル上院議員(社会党派)が新総裁となることが決定し、30日の党総会において正式に就任した。また、同時に行われた総会各派閥代表選挙において、現政権の主流派を占めるMPPが28議席から15議席へと大きく議席を減らす結果となった。
(4)軍関係
24日及び25日、ベネズエラ国軍所属の軍人210名がウルグアイを訪問し、ウルグアイ軍関係者らとの意見交換及び施設の視察を行ったほか、モンテビデオのラテンアメリカ統合連合(ALADI)本部において、域内統合等に関するブリーフを受けた。なお、軍施設で開催された講演会において、ベネズエラ軍のキンテロ将軍が政治活動に値する発言を行ったとして、野党がアルマグロ外相及びウイドブロ国防相に対して下院外交委員会での説明を求める事態に発展した。
(5)軍政期の人権侵害問題等
4日、政府は、1973年6月27日から1985年2月28日までの軍政期における法治国家の破綻及び国家による人権侵害の責任を認め、軍政期の人権弾圧による被害者及び同家族に対する賠償金等に関する証明書を発行した。
(6)その他
1日、Factum社が、閣僚評価に関する世論調査結果を公表した。最も高い評価を受けたのは、5月に離任したレスカノ前観光スポーツ相であり、現政権発足後3年連続での1位となった。次いでアストリ副大統領、ロレンソ経済財務相らも引き続き高評価を受けた。
3 外交
(1)国連持続可能な開発会議(リオ+20)への出席
ムヒカ大統領は、20日~22日にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)会議に出席した。ムヒカ大統領は20日のセッションで演説を行い、大量消費社会を厳しく批判し、生活様式の転換を呼びかけた。会議には、アルマグロ外相、アゲレ農牧水産相、ベルトラメ住宅土地整備環境相らも出席した。
(2)パラグアイ情勢
23日、大統領府は、パラグアイにおけるルゴ大統領罷免に関するコミュニケを発出し、弾劾裁判での手続きの性急さを指摘するとともに、デュー・プロセスの保証に疑問を呈し、民主主義的な大統領選挙の早期実現を望む旨の声明を発出した。
(3)第43回メルコスール共同市場会合・首脳会合への参加
28日、ムヒカ大統領はアルゼンチンのメンドーサで開催された第43回メルコスール首脳会合に出席した。
ア パラグアイの参加権利停止
ムヒカ大統領は、パラグアイの参加権利停止は政治的な性格のものであり、経済的には現在有効な全てのスキームがパラグアイには引き続き適用される旨述べた。
イ ベネズエラの正式加盟決定
ムヒカ大統領は、ベネズエラの正式加盟決定に際しては、法的問題よりも政治的要因が優先されたと述べ、また、これまで同国の正式加盟承認を拒否し続けてきたパラグアイ議会を厳しく批判した。
ウ 他のラテンアメリカ諸国とのFTAの可能性
ムヒカ大統領は、域外ラテンアメリカ諸国とのFTA交渉を進めることが可能となった点を強調し、メルコスール全体としては対中国FTA交渉開始を進めるべきであるとの考えを表明した。
エ 対外共通関税の据え置き
アルマグロ外相は、対外共通関税据え置き及び例外品目100品目の追加に関して、ウルグアイの主張が尊重され、目標が達成できたことに満足の意を表明した。
オ 野党による批判
ベネズエラの正式加盟決定に関して、政府は当初反対の立場であったとアルマグロ外相が明らかにしたことから、野党は政府による今回の対応を批判し、アルマグロ外相を議会に召喚することを発表した。
(4)対ブラジル関係(経済関係は、6月経済定期報告を参照)
21日、リオ+20に出席のためブラジル滞在中のムヒカ大統領は、ルセーフ伯大統領と会談を行い、両国間ハイレベルグループの立ち上げに合意した。
(5)対中国関係
22日及び23日、温家宝中国首相がウルグアイを訪問した。ムヒカ大統領は、22日に温家宝首相と会談し、両首脳は二国間関係や国際場裏の問題につき意見交換を行った。また、両国政府は、協力関係の各種覚書に署名した。温家宝首相は、23日にアストリ副大統領及びオリコ下院議長とも会談を行った。
(6)対日関係
5日,上院は新駐日ウルグアイ大使として、エドゥアルド・ブスゥ外務省儀典長を任命することを承認した。
(7)対国際機関関係
ア 4日からパリで開催された第4回ユネスコ無形文化遺産保護条約総会において、ウルグアイが初めてユネスコ無形文化遺産保護に関する政府間委員会のメンバーとなることが決定された。ウルグアイでは、2009年にタンゴ(アルゼンチンとの共同)及びカンドンベがユネスコ無形文化遺産リストに登録されている。
イ 18日及び19日、エルリッチ教育文化相は、ジュネーブで開催された第20回国連人権理事会に出席するとともに、ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官と会談を行い、人権保護におけるウルグアイの成果を強調したほか、シリア情勢に懸念を示し、国連ミッションの尊重と対話を通じた紛争解決を訴えた。
(8)その他
ア 5日、ロシアの上院予算・金融市場委員会議員団がウルグアイを訪問し、アストリ副大統領と二国間関係等について意見交換を行った。
イ 15日、ムヒカ大統領はウルグアイ訪問中のブラッターFIFA会長と会談し、アルゼンチンとの2030年ワールドカップ共催への立候補等につき意見交換を行った。
4 社会
(1)治安
ア モンテビデオ県内においてバスを対象とした強盗事件が多発しており、4月及び5月は、各月100件(1日平均3件以上)を記録した。モンテビデオ県警本部は、「安全なバス(Bus Seguro)」をキャッチフレーズにバス会社と協力し、バスの循環路におけるパトロール強化や検問などを実施しており、件数には若干の減少が見られるものの、依然として多発している。特に、16署館内、17署館内及び18署館内での発生が多い。
イ これまで県ごとに独立して自動車免許の管理を行っていたが、的確な免許行政を実現するため、2013年1月から、国内で統一的に管理する新たな免許制度が開始されることが発表された。
ウ 6月中旬に、マルドナード県、ロチャ県、トレインタ・イ・トレス県、フロリダ県及びラバジェハ県の関係者300人とボノミ内相らが治安関係会議を行った。ボノミ内相は、2010年、2011年に国内で発生した事件のうち、96%がモンテビデオ県及びカネロネス県で発生していることから、他県は治安が安定しているように見えるが、悪化傾向にあり、ラバジェハ県では数年前まで強盗事件の発生がなかったが、最近になって発生が見られるようになったと語った。
エ 6月中旬の一週間に、シウダ・ビエハ地区の8カ所において、パスタ・バセ密売の一斉摘発が行われ、販売場所2カ所が物理的に閉鎖されるとともに、21人の密売人が逮捕された。
(了)