1 概要
(1)内政
●ムヒカ大統領は、これまで一律4ドル/haであった土地税があまりにも低いと考え、収益の最も高い農牧畜業セクターからより多くの税収を求めるため、今後2千ヘクタール以上の土地に8ドル/ha、5千ヘクタール以上に12ドル/ha、1万ヘクタール以上に16ドル/haの3段階に分けた課税による6千万ドルの税収増を提案した。
●1日~17日、第100回国際労働機関(ILO)総会がジュネーブで開催され、これまで団体交渉権に関する法令をウルグアイ政府が遵守していないとして、使用者側がILOに対し不服申立をしていた件で、本件がILO条約・勧告適用委員会の議題となった。
●19日、「ム」大統領は環境団体や市民から反対を受けている印アラティリ社(鉄鋼業)の採掘権認可や土地税の増額について、諮問的な国民投票を可能とするための法案を作成し、国民投票にかけることを検討する旨発表した。
●6月の「ム」大統領支持率は39%(昨年11月は58%)、不支持率は39%(昨年11月は18%)、同大統領人気度は48%。
(2)外交
●8日、習近平中国国家副主席がウルグアイを訪問し、「ム」大統領、アストリ副大統領、アルマグロ外務大臣及びクレイメルマン工業エネルギー鉱業大臣との会談を行った。
●14~15日、潘基文国連事務総長が、ウルグアイを公式訪問し、「ム」大統領やアストリ副大統領等と会談した他、国連平和維持活動訓練校の視察や議会訪問を行った。
●アスンシオンにおいて、第41回メルコスール共同市場審議会(CMC)及びメルコスール首脳会合が開催され、「ム」大統領を始め、アルマグロ外相やクレイメルマン工業エネルギー鉱業相等閣僚が出席した。本年後半はウルグアイが議長国に。日本より、松本外相等出席。
●12日、ウマラ次期ペルー大統領は、南米歴訪の一環としてウルグアイを訪問、13日に「ム」大統領と会談し、治安、麻薬取引との戦い、教育に関連する課題を解決する共通理解の場の必要性等を確認した。
(3)社会
●中旬、チリのプジェウエ火山の噴火の影響で、計162便が相次いで欠航となり、市民や観光客の足に影響を及ぼした。
2 内政
(1)政府及び議会の動き
ア 少年法関連法案
(ア)8日、少年による窃盗未遂を処罰可能とすること、及び重大犯罪における判決宣告までの期間を現行法の60日から90日と改正する法案が全会一致で下院を通過した。
(イ)15日、非行少年の補導歴を誘拐、窃盗、強姦、殺人等の重大犯罪に限り、成人後も2年間保存するとする法案が下院を通過した。
(ウ)23日、補導された少年を収容するためのウルグアイ青少年庁(INAU)に替わる青少年犯罪リハビリシステム(SIRPA)を設置する法案が上院で可決された。
(エ)29日、政府代表者は、コロラド党や一部の国民党が推進する少年法適用年齢引き下げキャンペーンに対し全国労働総同盟(Pit-Cnt)が主催した反対キャンペーンに出席、公の場で少年法適用年齢引き下げに反対を表明した。
イ 19日、「ム」大統領はアルティガス将軍生誕祝賀式典の場において、現在環境団体や市民から主に環境の観点から反対を受けている印アラティリ社(鉄鋼業)の採掘権認可や土地税の増額について、諮問的な国民投票を可能とするための法案を作成することにつき言及、党内派閥からはその必要性につき疑問が呈されている。
ウ 22日、行政府と県知事会は、全国19県において自動車登録税を統一することに合意、8月に車種や製造年別による税額の設定等詳細を含む法案を送付し、2012年1月からの適用を目指す。
エ 25日、失効法の無効化法案の上院での審議で、FA党の党内決定に違反し、同法案の通過に賛成票を投じなかったサラビア議員が、FA党から離党することを正式に発表した。同議員の所属するパトリア・グランデ派は今後独立した党となる見込みであるが、同議員の議席の行方について未だFA党との合意に至っていない。
オ 30日、「ム」大統領は、これまで失効法の適用により調査がされなかった80以上の事案について、民政移管後各政権(バスケス前政権時分は省く)が発出した失効法の適用にかかる政令を取り消すための政令に署名。これにより、今後80以上の事案について調査再開及び起訴手続きが取られるものもでてくると見られているが、政府は、11月1日にきれる軍政期の重大犯罪に関する時効期間の延長については、その可能性を否定した。
(2)土地問題
ア 「ム」大統領は、これまで一律4ドル/haであった土地税があまりにも低いと考え、収益の最も高い農牧畜業セクターからより多くの税収を求めるため、今後2千ヘクタール以上の土地に8ドル/ha、5千ヘクタール以上に12ドル/ha、1万ヘクタール以上に16ドル/haの3段階に分けた課税で6千万ドルの税収増を提案。一方で、アストリ副大統領は、ロレンソ経済財務相やアゲレ農牧相、レスカノ観光スポーツ相等とともに、「ム」大統領による土地税策定の提案に反対し、代替案として生産物を輸送する際の荷物重量に基づく道路使用料の徴収を掲げ、同額もしくはそれ以上の税収確保を提案、農業生産者からも賛意を得ている。双方は数度にわたる会合後、「ム」大統領の提案するラインに加え、生産物を輸送する際の荷物重量に基づく道路使用料の徴収を補完的なものとして追加する方向で検討する由。
イ 「ム」大統領は、ロチャ県カボ・ポロニオにある農牧水産省の所有地である900ヘクタールの砂地が、農地としての生産性が全くなく放置されており、一部不法占有されていることを指摘し、この土地を売却することを提案。住宅土地整備環境省は該当地の売却は同観光地区の自然遺産の破壊には繋がらないとしているが、環境保護団体や野党は強く反発している。
(3)労働関係
ア 1日~17日、第100回国際労働機関(ILO)総会がジュネーブで開催され、団体交渉権に関する法令をウルグアイ政府が遵守していないとして、使用者側がILOに対し不服申立をしていた件で、直前まで政労使3者は本件をILO条約・勧告適用委員会での議題としないよう交渉を行ったものの交渉決裂。10日、本件が委員会での議題となった。委員会後、ILOがウルグアイ政府に対し既に行った同法令改正勧告について、3者間で遅延無く行われることを期待するとの委員会の見解が発表された。ウルグアイ政府は年末までに本件の進捗状況につき同委員会に報告書を提出しなければならない。
イ ILOは総会時、ウルグアイの社会保障、労働補償、インフォーマルセクターとの闘いに関する国家プロジェクトに融資することを発表した。
ウ 14日、労働社会保障省は、最終賃金審議会の交渉状況について報告書を提出し、国内85%のサブグループで労働協約締結が合意、5%が未合意、10%は3者間の投票で合意に至ったことを明らかにした。
エ 16日、公務員同盟(COFE)は団体交渉権に関する法令をウルグアイ政府が遵守していないとして、ILOに不服申立を行った。
(4)内務関係
ア ボノミ内相は、パラグアイで開催された第29回メルコスール法務大臣会合に出席し、治安に関する協力ガイドラインに合意。今後、同内相は、ブエノスアイレスにあるインターポールの事務所と麻薬取引、自動車盗難、スポーツイベントにおける暴力や人身売買等において協力していくことを提案する由。
イ 内務省は、ウルグアイ人と結婚し、永住権を申請した外国人の数が2010年だけで2,000件あったことを発表。しかし、この外国人が外国人犯罪者の保護またはウルグアイから麻薬取引等を操作している恐れがあることから、ウルグアイ人と結婚し、永住権を申請した外国人の経歴調査を開始した。
ウ 25日、リベルタ刑務所で21名の警備員が勤務条件の改善や賃上げ等を要求してストを実施。内務省は、このストを中心的に率いた2名に厳しい制裁を課す由。なお、刑務所内の麻薬密売人が、現在別途検討されている囚人の再配置等に反発して、ストを扇動した可能性が示唆されている。
(5)その他
ア 軍政期の殺人罪で刑の宣告を受けたマチャド退役大佐に関し、ロサレス陸軍最高司令官は、同退役大佐を刑務所に訪問面会しないよう現役軍人に命じていたにも拘わらず、これを無視して8名の軍人が訪問面会したため、ロサレス司令官の求めに応じ「ム」大統領はこの8名を3日間の自宅謹慎処分に科す政令を発出した。
イ ラカジェ国民党上院議員は、11日、国民党大会において同党執行委員会の委員長を辞任し、議員職に専念することを発表した。後任にはヘベル上院議員が就任。また、ラカジェ上院議員は、2014年の時期大統領選には出馬する意志がないことを発表した。
ウ Cifra社のアンケート調査によると、6月の「ム」大統領支持率は39%(昨年11月は58%)、不支持率は39%(昨年11月は18%)、同大統領人気度は48%(昨年11月は67%)。
3 外交
(1)対アルゼンチン関係
ア 22日、両国科学委員会(CARU)がグアレグアイチュ川から水質検査のためのサンプルを採り、ウルグアイ川の共同モニタリングを行った。
イ 24日、アルマグロ外相及びティメルマン・アルゼンチン外相はブエノスアイレスで会合し、アルゼンチンからのガスの輸入に関するエネルギー問題及びUPM工場の環境問題について協議した。
(2)対パラグアイ関係
28日の第41回メルコスール共同市場審議会開催時、アルマグロ外相及びパラグアイ・カストロ外相は会合し、両国の文化遺産保護のための協定に署名した。
(3)対中国関係
8日、習近平中国国家副主席がウルグアイを訪問し、「ム」大統領、アストリ副大統領、アルマグロ外務大臣及びクレイメルマン工業エネルギー鉱業大臣との会談を行った。「ム」大統領との会談においては、主に経済、観光、文化を中心とした17の協力協定及びウルグアイ産品の輸入契約(計5億2,800万米ドル相当)に署名を行った。
(4)対国連関係
ア 5月31日、ニューヨークで開催された第1回強制失踪条約締約国の会合において、強制失踪委員会委員選挙が行われ、ウルグアイのアルバロ・ガルセ氏が選出された。
イ 10日、ウルグアイ外務省は同省バジェス戦略的分析局長が国連貿易開発会議(UNCTAD)国際貿易局長に任命された旨発表した。
ウ 14~15日、潘基文国連事務総長がウルグアイを公式訪問し、「ム」大統領やアストリ副大統領等と会談した他、国連平和維持活動訓練校や国内刑務所の視察、及び議会訪問を行った。
エ 20日、ウルグアイは国連人権理事会の理事国に就任。任期は3年。ラ米地域諸国の合意により、1年目はウルグアイが議長国(各地域での持ち回り制)を務めることになる。
(5)対メルコスール関係
アスンシオンにおいて、第41回メルコスール共同市場審議会(CMC)及びメルコスール首脳会合が開催され、「ム」大統領を始め、アルマグロ外相やクレイメルマン工業エネルギー鉱業相等閣僚が出席した。「ム」大統領は、首脳会合においてメルコスールの組織化を進めることや、メンバー国の国立大学を統合すること、さらにエネルギー統合を達成すること等を目標として掲げ、ベネズエラのメルコスール加盟の迅速化を訴えた。首脳会合終了間際、ウルグアイは次期議長国に就任した。アルマグロ外相は、次期議長国としての目標はメルコスールの組織構造を改善し、258にのぼる機関のうち不要なものを廃止する他、メルコスール仲裁裁判所の機能改善と法的権限の強化、2012年1月から対外共通関税の二重課税撤廃の開始や域内の経済・貿易プロジェクトの加速、メンバー国間のトラブル解決システムの改善、社会政策では、特に域内学生を中心とした交換留学を通した人の移動の自由化を今後の目標とするとした。また、EUとの自由貿易協定、カナダとの準備会合を基本とした交渉を優先事項とするとした他、アフリカやアジアも視野に入れると述べた。日本より松本外相等出席、貿易・投資に関する合意に向けた対話の開始をメルコスールに提案した。
(6)その他
ア 3日、ジェレミック・セルビア外相がウルグアイを訪問、アルマグロ外相と会合し、両国間査証免除協定を締結した。
イ 10日、ウルグアイ外務省はセラヤ・ホンジュラス前大統領の権利や自由さらに同人の本国への帰国を認めるカルタヘナ合意署名を喜びと共に受け入れ、同国の米州機構(OAS)への復帰の承認、及び同国との外交関係正常化についてプレスリリースを発出した。
ウ 12日、ウマラ次期ペルー大統領は、南米歴訪の一環としてウルグアイを訪問、13日に「ム」大統領と会談し、治安、麻薬取引との戦い、教育に関連する課題を解決する共通理解の場の必要性を確認。メルコスールと政治的コネクションを持つことにも関心を示した。
エ 19日、ラカジェ国民党上院議員は、エルサレムで開催された世界ユダヤ人会議に出席、20日にはネタニヤフ首相と共に中東情勢や右情勢がイスラエルの外交政策に与える影響等について演説を行い、250人のユダヤ人リーダーの前でイスラエルの正当性を認め、ウルグアイがパレスチナを国家承認したことを遺憾とした。
オ 23日、アルマグロ外相は、ブエノスアイレスで南極条約の効力延長を認証する宣言にその他条約締約国と共に署名した。
4 社会
(1)治安
ア 4日、国道8号上において、未成年らしき4人組に54歳の男性が連れ去られ,ATMで現金の引き出しを強要される事件が発生、男性は約3時間後国道5号上において解放された。
イ 6日、公共料金支払所、換金所等への強盗事件が多発している中、経営者は、警備員の費用を抑えるため、従業員に講習、訓練等を受けさせた上で,銃を持たせることの検討を始めた。
ウ 7日、内務大臣は、警察官の銃紛失の多発を受け、今後、紛失した警察官の給与から銃の代金を差し引く計画があることを発表した。労組側はこれに反発しているが、2009年から現在まで約400丁の拳銃が紛失している実態がある。
エ 7日、コルドン地区の消費者金融に銃と手榴弾を持った2人組が押し入り、従業員と客を脅し、現金40,000ペソなどを奪って逃走する事件が発生した。
オ 10日、コロニア県において、運転免許証の不正取得事件により行政書士、医師及び県庁職員2人の4人が逮捕された。この他にも県庁職員15人が取調べを受けた。
カ 13日、セリート地区において、会社経営者が自動車を運転中、銃を持った2人組に足を打たれる事件が発生した。事件現場に通りかかった警察官も同人らに撃たれ重体。
キ 21日、カラスコ地区において、銃を持った2人組が一般住宅に押し入り、家人6人を脅し、現金等を持ち去る事件が発生した。
ク 21日、プンタゴルダ地区において、胸や頭を刺された69歳女性の死体が自宅で発見された。警察は強盗殺人事件として捜査している。
ケ 24日、カラスコ地区において、個人売買に出している中古冷蔵庫を見たいと言って一般住宅を訪れた2人組が、家人2人を縛りあげ、現金などを持ち去る事件が発生した。
(2)中旬、チリのプジェウエ火山の噴火の影響で、計162便が相次いで欠航となり、市民や観光客の足に影響を及ぼした。