ウルグアイ内政・外交:2009年5月~6月
1.概要
(1)内政
○トゥルネ内務大臣が自身の政治集会の場での不適切な発言の責任を取り、辞職した。
○「失効法無効化」の是非を問う国民投票が10月25日大統領・両院議員選挙と同時に実施されることが確定した。
○バスケス大統領が、独立の英雄であるアルティガス将軍の遺骸を移転させる決定を下し、物議を醸した。
○6月28日、10月の大統領選挙に向けて各党統一大統領候補等を選出する党内選挙が実施された。大方の予想通り、主要3党では、ムヒカ上院議員(FA党)、ラカジェ元大統領(国民党)、ボルダベリー前観光大臣(コロラド党)がそれぞれ選出された。
(2)外交
○ウルグアイ政府は、ホンジュラス国軍によるセラヤ大統領の拘束を違憲・非民主的であるとして同国新政府を承認しないと発表した。
2.内政
(1)支持率等
(イ)FA党政権及びバスケス大統領の人気度
5月13日に公表されたEquipos Mori社アンケート調査結果(4月実施)では、現FA党による政権運営を支持するかという問いに対し、55%が支持すると答えた。これは、2005年に左派FA党政権が始動したばかりの5月時点での支持率と同じで、軍事独裁以後(1985年~)の調査では、政権最後の年としては最高値。他方、バスケス大統領個人の現時点での人気度も62%と非常に高かった。(2008年4月の時点ではFA党政権による政権運営への支持率は44%、バスケス大統領個人への支持率・人気度は53%であった。)
同社は、6月16日にも同様のアンケート調査結果を公表。5月時点でのバスケス大統領による政権運営への支持率アンケート調査によれば、バスケス大統領による政権運営支持率は56%。これは、2005年9月以降最大の水準で、任期最終年のものとしては軍政期以降歴代大統領の支持率記録を更新した。なお、同アンケート結果によれば、21%がバスケス大統領による政権運営を不支持。22%がどちらでもないとの答え。他方、バスケス大統領個人への人気度は61%であった。
(ロ)党内選挙を控えた各政党への支持率調査結果
5月14日、アンケート調査会社Factumは、4月に実施したアンケート調査結果として各党への支持率を公表した。FA党49%、国民党32%、コロラド党7%、独立党1%という結果が出た。年齢別では、FA党に関しては、32歳までの若者及び中低所得者層による支持が一番多いことが判明。国民党とコロラド党に関しては、高齢者及び高所得者層による支持が若干高い結果となった。
(2)国家雇用・職業訓練機関の設立
5月25日、国家雇用・職業訓練機関(INEFOP)が設立された。同機関は、雇用の維持と創出を強化することを目的とした法人であり、前身は国家雇用機関(JUNAE)。役員は7名で、行政(労働社会保障省、教育文化省、大統領府予算企画庁)から3名、雇用側(商工会議所)から2名、被雇用側(労働総同盟)から2名が選出される(多数決によって意志決定)。
(3)タバコの有害性明示強化のための大統領令
6月1日、市販タバコのパッケージ面積の半分を占めている喫煙の有害性についての警告広告部分の面積を80%へと広げる大統領令が署名された。右大統領令は6月16日に公示された。
(4)トゥルネ内務大臣の辞任と後任人事
(イ)トゥルネ内務大臣の辞任
トゥルネ内務大臣(FA党社会党派出身)は、6月3日の夜、社会党の本部にて党内選挙キャンペーンの一環として行われた若者たちとの集会の場で、「恥知らず」「愚か者」等の極めて不適切な言葉を使って、野党からの中傷への反論や議会・野党の政治参加姿勢への批判、自身の属するFA党国会議員の立ち居振る舞いへの不平不満を展開した。この様子が4日テレビニュースとして報道されたたことを受け、公共の場における自身の発言の責任を取って、トゥルネ内務大臣は5日、自身が現政権における政権運営の妨げとなるのを避けるべくバスケス大統領に辞表を提出し同辞表は受理された。なお、トゥルネ内相は、辞任後数日間の休暇を経て同18日、下院議員に復職した。
(ロ)ブルニ新内務大臣の誕生
6月5日、バスケス大統領は、国際労働機関(ILO)の会議出席のためジュネーブに出張中のブルニ労働社会保障次官に内務相職就任を求め、同氏はこれを受諾。数日間ロッシ運輸公共事業大臣が内相代理を務めた後、6月15日、ブルニ氏が内務大臣に就任した。
なお、ブルニ労働者会保障次官が内務大臣に就任したため、フリオ・バライバル労働社会保障省労働局局長が同省次官として任命された。
(5)「失効法」を無効とする国民投票の実施確定
6月15日、選挙裁判所は、4月27日に引き渡された「失効法無効化(anular)」を求める署名に関し、国民投票実施の要件である258,711人分(全有権者の10%以上)の有効署名があることを確認し、本年10月25日、正副大統領・上下両院議員選挙と同日に「失効法無効化」の是非を問う国民投票が実施されると正式に発表した。
(6)失効法無効化等国民投票実施に関する国民の反応
6月19日、Cifra社のアンケート調査結果によると、有権者の48%が失効法無効化を求める国民投票で賛成票を投じると答えた。「反対」は29%。「分からない」は23%。
他方、在外投票を可能にする憲法改正に賛成する国民は56%。反対が41%。「分からない」は3%。
(7)「決して二度と(Nunca Mas)」式典
独立戦争の英雄であるアルティガス将軍の生誕日である6月19日、Nunca Mas「決して二度と」の式典(国家によるテロリズムや軍事独裁また国内紛争を繰り返さないことを目的とした記念日)が行われた。バジャルディ大臣、ニン・ノボア副大統領、ムヒカ上院議員、トポランスキー上院議員、ガルシア下院議員(国民党アリアンサ・ナシオナル派)、デルガド下院議員(国民党UNA派)等が参列した。
バスケス大統領はこの日、アルティガス将軍の遺骸を現在の霊廟から旧大統領府に移す決定を下したことを発表した。霊廟が軍政期に建てられた(1977年完成)ものであり、軍事独裁時代のシンボルであるのが政府が移動を考慮している主要な理由の一つ。他にも「無敵の軍人としての英雄」としてのアルティガス将軍の概念を捨て去りたい意向もある。バスケス大統領は、「革命の父を独裁政権が押し込めた冷たい霊廟の大理石の中から救い出し、博物館として利用されている元大統領府に移送することで人々に近づけたい。」としている。
遺骸の移動に関し野党は、「大統領の一存で決められることではない」「国民感情を弄ぶべきではなくじっくりと検討する必要がある」などとして反対。また退役軍人等からも非難の声が聞かれる。
(8)国会審議
(イ)国家による軍政期の人権侵害を認め被害者への補償を可能とする法案の提出
5月4日、バスケス大統領、1968年6月(注:都市ゲリラであるツパマロスが活動を活性化させた時期で、治安回復のため政府により強行な措置が取られていた)以降及び軍政期(1973年~1985年)の司法が介在しない不法な人権侵害に関し、国家の責任を認め行方不明となった者及び死亡者の家族、実際に拷問を受けた者たちに対する補償金(重大な外傷に対する終身の治療費も含む)を支出する法案に署名し、同日国会に付託した。
(ロ)労災規定修正法案への大統領拒否権発動
5月15日、通勤途中に起こる全ての事故を労災とみなす法案(1989年に承認された法律16074「労災保険に関する規定」への修正)にバスケス大統領は拒否権を発動した。バスケス大統領によれば、この法律は管理が非常に難しく、保険料の値上げが必須となり実効性がないとの判断。この法案は国民党下院議員のイニシアティブで、コナプロレ社(乳製品大手)の職員が通勤途中にバイクで事故死したが保険の適用外(工場の外での事故だったため)となったことを受け、2006年に法案として提出され、2007年末に下院で投票、本年5月6日にPit-Cntの圧力を受け、上院にて承認されたものである。今回の大統領の拒否権発動にはPit-CntをはじめFA出身議員からの反発の声も強く、両院総会で大統領拒否権を否決するか議論(両院総会にて出席議員の5分の3の賛成が必要)がなされる見込み。しかしながら、党内選挙に向けた選挙キャンペーンの最中にこのような政治論争を回避するため大統領拒否権否決には至らない見通し。
(ハ)国境沿い土地所有制限法案
6月1日、2008年頭から政府内で調整が進められてきたウルグアイ国境における外国人及び株式会社等による土地所有を禁ずる法案(国境沿いからの病原菌の侵入を防ぐために国境地帯を管理する目的)に関して、アガシ農牧水産相が、法律案原案に修正を加えたものを閣議にて提案した。この場で、閣僚の大半が同法案修正案に賛意を示し、特にバスケス大統領が今修正案に賛同(FA綱領とも合致する)したため、ガルシア経済財務相が「国際金融危機の時代におけるこういった法案は海外投資家にとって悪いサインとして映る可能性があるとして法案に難色を示しているものの、アガシ農牧水産大臣とガルシア経済財務相に6日までに会合を開き意見の相違に関して話し合うように指示した。
その後、6月15日、政府は国境から20キロの地点までは衛生安全地区として個人・法人による土地所有を規制する同法案を議会に付託した。
(ニ)セクハラ防止法案
6月9日、上院で、満場一致により、職場及び学校におけるセクシャルハラスメントを規制・処罰する法案が可決された。(下院は未決)
(ホ)労働者団体交渉法案
6月10日、下院の労働法委員会にて労働者の団体交渉にかかわる法案が審議され、ストライキ権の延長としての職場占拠を許容する条項を削除した上で、FA党議員のみの賛成により大筋で承認された。今回の労働法委員会審議では、国民党議員らが法案に反対し審議途中で席を後にした。また、企業家からも反対の声が強く、労働争議において企業と労働者だけでなく、政府の介入を可能としている点、また、賃金審議会(Consejos de Salarios:政府、企業、労働者3者による業種毎の最低賃金交渉の場)で最低賃金の規定のみならず労働条件なども決議出来るとしている点に反発している。今法案は今後下院で審議が開始される。
(9)党内選挙に向けた各党の動き
(イ)与党拡大戦線(FA)党
(a)ムヒカ大統領候補のブエノスアイレスにおける選挙キャンペーン
5月9日、ムヒカ大統領候補(上院議員)とロリエル上院議員(共産党)は、ブエノスアイレスにてFA党選挙キャンペーン集会を開き、国際社会でウルグアイが競争力を付けるためには教育が重要であり、右は若者のやる気を向上させ治安を改善するのにも重要であると強調するとともに、6月28日の党内選挙にウルグアイまで投票に行くよう呼びかけた。
(b)政策綱領の発表
5月11日、ブロベットFA党代表は、ムヒカ上院議員やアストリ上院議員などFA党の主要な政治家の出席する中、2008年12月13日~14日にFA党大会で承認された政策綱領原案を元としたFA党政策綱領(2010年~2015年)を正式に公表した。
同政策綱領は、次期政権で、健康保険制度(Fonasa)の拡充、食の安全保障、中絶の合法化、消費税を段階的に所得及び財産への課税に代替していくこと、付加価値税(IVA)縮小、富の再配分、選挙システム改革を含む憲法改正、政治における男女比率の平等化、労働者のための会社復興の優先、労働者が参加する組織運営、最低賃金・年金最低支給額等の増加、司法省設立促進、法の近代化、失効法無効化(破棄)、製造業における国の管理システム創出、雇用創出のための国立食肉処理施設設立の検討、住居への公共投資を増し民間投資を刺激すること、生活必需品を含む商品に関して価格合意システム構築、生活必需品の価格コントロールのためのメカニズム検討、極貧・貧困の減少、情報通信産業をはじめとする付加価値のある産業の育成、などに重点(今政権で始めた変革の深化)を置くことを政策の基本としていくことを謳っている。
(c)アストリ副大統領候補誕生か
党内選挙に向けて、5月上旬、与党FA党ムヒカが大統領統一候補となった場合、同党のアストリに副大統領候補の座をオファーするつもりであるとムヒカ側近が語っていることを受け、アストリは党内選挙の前から誰が勝つか決めつけていることに不快感を示すとともに、副大統領になるつもりはないと繰り返し表明した。
5月中旬には、FA党MPP派のルシア・トポランスキー上院議員(ムヒカ夫人)、フェルナンデス・ウイドブロ上院議員が相次いで、ムヒカ大統領候補及びアストリ副大統領候補の組み合わせがFAにとって最良であるとコメントし、党内選挙でムヒカ候補が当選することを前提の上で、10月の総選挙に向けてアストリを副大統領候補に推す声が強まっている。
(d)ムヒカ上院議員のMPP派執行部離脱
5月24日、FA党公認大統領候補であるムヒカ上院議員は、MPP派執行部に対し辞任届を提出した。党内選挙(6月28日)を目前にして、FA党の中のMPP派という一派閥の代表であるとのイメージを払拭し、FA党を代表する大統領になりうる存在であることをアピールするとともに、自身を左派全体のリーダーとして位置づけるためのものであった。
(e)アストリ大統領候補の党内選挙キャンペーン一時休止
5月18日以降、発熱など風邪の症状により選挙活動を休止していたアストリ候補が、同21日肺炎との診断により病院への入院を余儀なくされ、選挙キャンペーンを休止することとなった。
この事態を受け、FA党は、5月30日にパイサンドゥ、6月11日にサンホセにて開催する予定であったFA大統領候補3名(ムヒカ、アストリ、カランブラ)共同のFA党選挙キャンペーンの中止を決定した。
なお、アストリ候補は、6月11日、集中処置室から一般病室へ、その後、同15日には担当医から退院許可を得て自宅療養に移った。退院はしたものの外出は厳禁とされ、同氏は28日の党内選挙投票には行くものの、選挙当日まで、マスメディアによるインタビュー等を除いて屋内・屋外を問わず公共の場での選挙キャンペーンは行えないこととなった。
(ロ)野党国民党
○ラカジェ大統領候補の入院
5月9日、ラカジェ国民党大統領候補(UNA派)は自宅の階段でつまずき、右足の大腿四頭筋の腱を損傷し、病院にて手術の上入院した。ララニャガ大統領候補(国民党アリアンサ・ナシオナル派)は党内選挙での対抗馬となるラカジェ氏を見舞い、また、政治集会で同氏の批判をするのを一時控えた。その後、ラカジェ氏は同20日、松葉杖を使ってではあるが選挙キャンペーンに復帰した。
(ハ)野党コロラド党
○エチェガライ氏の党内選挙出馬表明
5月19日、コロラド党から新たな大統領候補が名乗りを上げた。ペドロ・エチェガライ氏49歳、コンサルタント。政府関連機関での経験はなく、党内選挙への出馬を表明したのも、自身の属するグループから党代表者会議代議員を輩出することを念頭に置いてのことで、大統領当選は狙ってはいない。
(10)党内選挙(6月28日)
(イ)投票率(選挙裁判所公表による開票率99.8パーセント時点での得票率)
(a)主要候補得票率
○FA党(与党・左派)
ムヒカ候補 52.0%
アストリ候補 39.7%
カランブラ候補 8.3%
○国民党(野党・中道右派)
ラカジェ候補 57.1%
ララニャガ候補 42.8%
○コロラド党(野党・中道右派)
ボルダベリー候補 72.2%
アモリン候補 14.8%
イエロ候補 12.0%
(b)政党別得票率と投票人数
FA党 41.18%(417,563人)
国民党 46.11%(467,639人)
コロラド党 11.93%(120,973人)
独立党 0.33%(3,326人)
その他 0.42%(4,592人)
白紙投票及び無効票 1.75%( 20,137人)
(c)投票権取得者全体の投票率:
44.4%(1,148,833人)
(ロ)投票結果分析
3大政党の統一大統領候補は、それぞれ事前の予想通り、FA党(左派「拡大戦線」党)ムヒカ候補(上院議員)、国民党(中道右派)ラカジェ候補(元大統領)、コロラド党(中道右派)ボルダベリー候補(前観光大臣)となった。今時選挙の投票率は、投票権取得者のおよそ44%で非常に低かったが、その理由として、雨こそ降らなかったものの非常に寒かったこと、投票日が学校の休みと重なったことにより旅行に出かけてしまった有権者が多かったと見られること、また、各政党の当選者がほぼ決まっており、有権者の関心が低かった、新型インフルエンザの感染を気にして外出を避けた有権者が多かったこと等があげられている。なお、本選挙における投票は、大統領・両院議員選挙とは異なり義務ではない。
FA党、国民党を比較すると、ラカジェ候補の得票数が27万余り、一方のムヒカ候補は22万余りとなっており、その票差は約5万人で、10月の大統領・両院議員選挙に向けて国民党候補者の躍進が見られた。更に、選挙結果が確定してすぐに、国民党ラカジェ大統領候補は、党内選挙でライバルとして戦ったララニャガ候補を副大統領候補として取り込むなど次期選挙を視野に入れて迅速な選挙キャンペーン活動を始めた。
3.外交
(1)OECD「グレーリスト」掲載問題
5月7日、下院の財務委員会が開催され、この場に出席したフェルナンデス外相は、タックスヘイブン問題でウルグアイがブラックリストから抜けるため4月にOECDと交わした合意に関連し、『銀行情報開示は世界的潮流であってウルグアイにとって好ましかろうがそうでなかろうが追随するほか無い』と述べた。
この発言は、二重課税を避けることなどを目的とした銀行情報開示協定が特にアルゼンチン及びブラジル政府との間で結ばれた場合、両国からのウルグアイへの投資が減る可能性があることを懸念する声が多いためのものである。フェルナンデス外相及びガルシア経済財務相は、上述二カ国とは心配されているような協定を結ぶ予定は無いと回答した。
(2)ガルシア経済財務大臣による南米銀行設立のための会合出席
5月8日、ガルシア経済財務大臣はブエノスアイレスに赴き、南米銀行参加各国の経済大臣等とともに南米銀行運営・設立に関して最終合意に達した。初期資本金は70億ドルで、本部はカラカス、ブエノスアイレスとラ・パスにそれぞれ支店を設置する。
(3)国連人権理事会における第5回普遍的・定期的レビュー(UPR)
5月11日、ジュネーブで開催された国連人権理事会における普遍的・定期的レビュー(UPR)の作業部会においてフェルナンデス外相出席のもと、ウルグアイの審査が行われ、同13日、同審査の報告書が採択された。ILO第169号条約の批准、女性差別撤廃条約及び児童の権利条約等既に批准した条約の国内法への適用、人権保護のための独立系機関設置、女性に対する法律上の差別的規則の撤廃、家庭内暴力被害者への支援強化、女性の婚姻適齢(12歳)を含む民法の改正、飽和状態にある刑務所の改善、児童の権利促進、貧困撲滅への対策の維持等勧告がなされた。
(4)2009年人権理事会選挙
5月12日、NYにて国連人権理事会(2009年~2012年)選挙が行われ、ラ米グループの中でウルグアイが、メキシコ、キューバと共に当選を果たした。
(5)キルチネル前亜大統領のセルロース工場問題に関連した働きかけ
5月12日、キルチネル前亜大統領は、亜国内ラジオ番組の中でグアレグアイチュ市環境活動家に対して橋梁封鎖を止めるよう呼びかけた。キルチネル前亜大統領によれば、抗議活動自体は合法であるが、封鎖を続ける行為はそうではない。また、同氏は、ウルグアイ政府がBotnia社セルロース工場建設を許可したことはウルグアイ河規約違反であるとの見解は崩していない。
(6)バスケス大統領のパラグアイ訪問
5月13日~14日、バスケス大統領はマルティネス工業エネルギー鉱業大臣、ロッシ運輸公共事業大臣、バス外務次官、ブレチネル・ウルグアイ技術研究所(LATU)所長等と共にアスンシオンを訪問し、パラグアイ独立記念式典(14日)に出席するとともに、ルゴ・パラグアイ大統領と会談(14日)を行った。
両首脳会談では、ウルグアイへのエネルギー供給による協力、両国間の水上交通を深化させる可能性、メルコスールを通じた地域統合の重要性、主権及び人権の原則擁護、URUPABOL(ウルグアイ・パラグアイ・ボリビアによる同盟)構想実現等に関心が示された。また、バスケス大統領はウルグアイ政府としてルゴ政権を全面的に支持する旨表明した。
(7)外交関係樹立
(イ)5月14日、当国は、コモロとの外交関係を樹立した。
(ロ)6月16日、当国は、ルワンダと外交関係を樹立した。
(8)北朝鮮による核実験の実施に関するウルグアイ政府の反応
5月26日、ウルグアイ外務省は、北朝鮮による核実験の実施及び短距離弾道ミサイルの発射に関し、北朝鮮が、安保理決議1718号に違反して核実験及び短距離弾道ミサイルの発射を行ったことに対し強く非難するとともに、六者会談を再開し、再度外交交渉の場について、当事者間で相互に信頼性を醸成して東アジア地域における緊張関係を避けるよう勧告する声明を発出した。
(9)フェルナンデス外相のOAS総会出席
6月1日から3日まで、ホンジュラスのサン・ペドロ・スーラ市において開催された第39回米州機構(OAS)総会にフェルナンデス外相が出席した。フェルナンデス外相は、コンセンサス形成に大きな役割を果たしてきたウルグアイにとって、キューバのOAS復帰決議は米州にとっての大いなる一歩であると評価した。3日には、米州人権裁判所の裁判官にウルグアイ人のアルベルト・ペレス氏(現共和国大学法学部人権研究所所長)が選出された。今後同氏は2010年~2015年米州人権裁判所の裁判官として籍を置くことになる。
(10)米国とのTIFA協議
6月5日、フェルナンデス外務大臣、ガルシア経済財務大臣及びジアネリ駐米ウルグアイ大使等は、ワシントンにてオバマ政権発足後初めてのTIFA協議に出席した。米国によるウルグアイ産骨なし羊肉の輸入解禁に関し基本合意が見られた。
(11)カンセラ国連代表部大使の国連第1委員会(軍縮・国際安全保障)委員長当選
6月10日、国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障分野)委員長としてホセ・ルイス・カンセラ国連代表部大使が選出された。同氏は9月15日に開催される第64回国連総会において委員長として就任する。
(12)セルロース工場問題(グアレグアイチュ市環境活動家による国際橋梁封鎖の一時解除議論)
6月17日、同28日に亜連邦議会選挙及びウルグアイ党内選挙が行われることを受け、同日の国際橋梁(亜グアレグアイチュ市、ウルグアイ・フライベントス市間)封鎖を一時解除するか否かにつき亜グアレグアイチュ市環境活動家が検討会議を開いたが、結果は、一時解除賛成45%、反対55%で、28日の国際橋梁封鎖維持が確定した。
(13)アルベルト・フェルナンデス前亜首相の当国訪問
6月22日~23日、アルベルト・フェルナンデス前亜首相が当国を訪問し、ムヒカ上院議員(与党FA党)及びラカジェ元大統領(野党国民党)の両大統領候補と個別に会談するとともに、当地経団連(ADM)主催朝食会にて亜・ウルグアイ両国関係等について語った。
特に、フェルナンデス前亜首相が、国民党UNA派のラカジェ候補とFA党MPP派のムヒカ候補が10月の大統領選挙を争うことになるであろうと発言したことから、国民党アリアンサ・ナシオナル派のララニャガ大統領候補から、6月28日の党内選挙を控えたウルグアイに対する「亜の干渉である」との非難がなされた。
そのほか、セルロース工場建設問題に関し、亜政府がこれまで一度たりとも両国国境を結ぶ国際橋梁封鎖を支持したことはないこと、亜政府として社会抗議活動を力で抑えつけることはできないものの、再三に渡って橋梁封鎖という手法は適切ではない旨指摘している点を強調しつつ、ウルグアイとの一刻も早い関係改善を望んでいる旨語った。
(14)ホンジュラス情勢に関するウルグアイ大統領府プレスリリース等
6月28日、ホンジュラスで発生した同国軍によるセラヤ大統領の拘束に関し、ウルグアイ大統領府は、メルコスールが発出した声明(セラヤ大統領の身柄拘束と国外移送を非難)を支持する声明を発表した。同時に、セラヤ大統領の拘束及び国外移送は民主主義制度に照らすに違憲であり、断固拒絶(repudio)すること、また、非民主的な制度から生まれた新政府を承認しないとした。
4.要人往来
(1)来訪
○エン・ティ・ゾアン越国家副主席
5月12日~13日、グエン・ティ・ゾアン越国家副主席等が当国を訪問。
○3(13)参照
(2)往訪
○3(2)、(3)、(6)、(9)、及び(10)参照。
5.その他(社会面)
(1)マリオ・ベネデッティ死去
5月17日、ウルグアイを代表する詩人であるマリオ・ベネデッティ氏が88歳で亡くなった。同18日には国会にてバスケス大統領やニン・ノボア副大統領も参列する中告別式が営まれた。
(2)新大統領府完成
46年の歳月をかけて行われた大統領府建設が終わり、5月25日、独立広場にてバスケス大統領出席のもと、鍵手交式典が行われた。
(3)新型インフルエンザの影響
5月27日、ウルグアイ厚生省は国内初となる2名の新型インフルエンザ感染者の存在を確認した旨公表した。2名共にアルゼンチンから帰国したウルグアイ人であった。
なお、6月29日には、ウルグアイ国内では初めて、モンテビデオにて入院中の60歳の女性が新型インフルエンザが原因で死亡している。