ウルグアイ内政・外交動向(2008年5月~6月)
●概要
(1)内政面
水面下で2009年の大統領選に向けた動きが既に始まっており、特にFA内部でアストリ経済財務相の立候補を支持するグループ(アサンブレア・ウルグアイ、アリアンサ・プログレシスタ、ヌエボ・エスパシオ)とそうでないグループ(MPPと共産党が手を組み、また社会党とベルティエンテ・アルティギスタも足並みを揃えている)が形成されつつある。
また、個人所得税の年金課税撤廃やそれに伴う社会保障支援税制度の成立、2009年度補正予算成立に向けた政府による働きかけが見られた。
(2)外交面
バスケス大統領は6月下旬、パナマ、キューバ、メキシコを訪問し、各首脳と会談するなど、中米諸国との関係強化に努めた。
●内政
(1)2009年度補正予算案及び教育改革法案
(イ)5月5日、閣議全会一致で補正予算案と教育改革法案が承認された。なお、教育法案に関しては、共産党とMPPが「教育の自治」を目指し、教育審議委員会等のメンバー全員を教師による直接選出にするよう求めており、合意は難しい。
(ロ)5月12日、大統領官邸にて大統領は閣僚、次官、FA下院議員・上院議員らを招き、教育改革法案と補正予算案の内容について説明を行った。今後、2009年1月1日発効に向け野党議員らに働きかけを続ける。
(ハ)5月29日、補正予算案が下院入り。
(2)中絶合法化法案
5月5日、FA多数派であるMPPの下院議員らが、2007年11月6日に上院にて承認された中絶合法化を含む法案(el proyecto de ley de Salud Sexual y Reproductiva)に賛成票を投じることを決定した。右によりFA下院議員の中で右法案に反対するのは2名のみとなり、FA下院議員50名が賛成に廻る見込みとなった。他方、国民党の36議員は全て反対する模様であり、コロラド党の10名は各々の判断により投票する予定。独立党の1名は反対に回ると表明している。
このまま行けば当法案が承認されることがほぼ確定であるが、バスケス大統領は、中絶合法化に関するあらゆる法案に関して、承認された場合拒否権を発動すると数度にわたって表明しており、今政権での成立は難しい。
(3)女性の政治参加促進法案
(イ)5月14日、議員候補者リストにおける女性候補者割合増加を求める(候補者3人につき女性候補1人)法案が上院で審議されたが、国民党の上院議員らが(県議会選挙や総選挙だけでなく)党内選挙も法案に含めるべきであり、プロセスは段階的であるべきだという主張をしたため議論は紛糾した。
(ロ)5月21日、再び上院にて審議が行われた。今回の審議では、2009年から各党内での政党執行部選挙及び党の重要ポスト選出まで適用、2014年及び2019年は国政選挙や県知事選挙、県議会選挙も含めて女性参加ができる方向で話し合いが成されたが、最終的には議論がまとまらず、投票は5月28日までさらに延期されることになった。
(ハ)5月28日、当法案が上院にて承認された。法案通過には3分の2の票が必要であったが30人中28人の票で可決。党内選挙(党全国会議、党県会議の各代議員の選出)及び各党の執行部などの選挙では2009年から実施。また、2014年には党内選挙及び各党執行部選挙と国政選挙で実施、2015年には県議会選挙(県知事選挙)でも実施することで合意。当法案は下院に送られた。
なお、当法案は時限立法であり、2015年にその後も施行を続けるかどうかの評価がなされる。また、FAの上院議員らは2019年と2020年にも今次法案を適用したい意向であったが、野党議員らとの合意には至らなかった。
現在のところ、130人居る国会議員のうちで女性は15人。上院、下院ともに女性の占める割合はほぼ12%。
(4)各政党支持率
6月27日付オブセルバドール紙によれば、世論調査会社FACTUMが、「今日選挙があったとしたらどの党に投票しますか?」とのアンケートの結果を公表し、それによれば、FA支持46%、国民党支持34%、コロラド党支持9%、独立党支持1%、支持政党未定8%、白紙投票2%であった。
同社のボティネリ代表は3月の同様のアンケートの時点ではFAへの投票意思が42%だったことから、FAは最悪の時期を脱したと解析している。
(5)年金受給者への個人所得税(IRPF)の廃止
(イ)個人所得税年金課税廃止
4月22日以降、最高裁に新たにLarrieux判事が加わったことで個人所得税の年金課税を合憲であるとする判決が相次いだ後の5月19日、バスケス大統領は閣議終了後、アストリ経済財務相及びボノミ労働社会保障大臣を伴って記者会見を開き、個人所得税の年金課税を廃止し、社会保障支援税(IASS)を新たに導入する意向であると発表した。
政府は、この新税制導入により最高裁の年金課税違憲判決により生じた不平等をなくし、社会保障支援税による税収を年金支給額増額のために活用するなど、税制度を改善できるとしている。また、バスケス大統領は、最高裁の違憲判決は尊重しなければならないが、同時に現政権の公約を支持して票を投じてくれた国民の意思も尊重しなければならないとして、年金受給者への再課税を正当化した。
(ロ)野党による大臣らの召喚
個人所得税年金課税廃止発表の翌日の5月20日、ボノミ労働社会保障大臣とアストリ経済財務相が国会に召喚され、個人所得税の年金課税等につき野党から質疑を受けた。この中で、野党側から、アストリ経済財務相は国庫の金を使って大統領選挙キャンペーンを行っているとして、大統領候補は選挙活動に向けて大臣職を辞するべきであるとの発言があった。また、年金受給者らに対して新税制を導入するのは司法の決定に対する侮辱であると非難した。
(6)社会保障支援税(IASS)
現在のところは年金収入が月8875ペソ以上の者が個人所得税を納めているが、社会保障支援税導入により、月14200ペソ以上の年金収入がある者が納税義務を負うことになり、年金受給者の87%は納税を免除されることになる。また、個人所得税では納税義務を負っていた約5万人の年金受給者が税金免除されることになり、新税制が導入された場合、全国に約69万7900人いる年金受給者のうち約9万2400人が納税することとなる。
右税制への切り替えにより、試算では、年間で約4千万ドルの税収減が見込まれる。
(イ)社会保障支援税法案は、5月26日閣議にて承認を受け上院に送られた。
(ロ)6月3日、当法案はFAの票(27人中17票)のみで上院議会にて承認された。
(ハ)6月18日、下院議会はFA票により年金受給者への個人所得税(IRPF)課税に代わる税制、社会保障支援税を承認した。これにより当税制は成立し、7月1日より施行されることとなった。
(7)ウルグアイ国鉄(AFE)総裁
5月21日、2月から空席(FAによる内閣改造の影響)となっていたウルグアイ国鉄の総裁についてFAが投票を行った。結果、通信サービス規制機関(URSEC)のレブ総裁が国鉄総裁として任命された。
(8)下院議会によるETAの爆破行為に対する非難決議
6月3日、下院議会は西ビスカジャにてETAが5月19日に行った爆破行為などを拒絶し非難する決議に達した。国民党議員によるオリジナルの草案ではETAをテロリストグループと定義していたが、FA議員の要求により決議文の中からはETAを「テロリストグループ」と定義する箇所は削除された。右は、国民党が、下院で過半数を占めるFAの同意を確保するためにFAの条件を受け入れたもので、MPP議員らが、武装闘争とテロリズムは異なる概念であると主張したことが大きく影響した。(当館注:FA最大派閥であるMPPには過去ツパマロスという武装ゲリラグループメンバーであった者が多い)
当事案につき、バルデラマ在ウルグアイ・西大使は、非難決議には満足の意を表しつつも、ETAをテロリストと定義しなかったことに関しては、憂慮の念を示した。
(9)通信サービス規制機関(URSEC)総裁
6月4日、元上院議員のアルベルト・ブレシア(Alberto Breccia)氏が通信サービス規制機関総裁に任命された。
(10)在伊ウルグアイ大使の更迭
6月11日、外務省内部調査の結果を受け、フェルナンデス外相は、記者会見にて、カルロス・アビン在伊ウルグアイ大使を罷免すると発表した。理由は、外務省が伊政府に向けて発出した司法共助依頼に関し、大使館からの司法共助依頼書の提出を遅滞させたことに正当性がないと判断したため。(3月18日に依頼文書が在伊大使館に届いたにもかかわらず、本省に無断で大使がバルセロナ休暇をとっていたため、同月23日に伊に帰ってきた時には文書を伊司法当局に渡す期限が切れてしまった。)
同文書は、軍事独裁時代に人権侵害をした疑いのある退役軍人ホルヘ・トロッコリの(外国政府への)引き渡し・送還手続きを依頼する文書であった。
手続きの遅れにより、伊司法当局はトロッコリ氏を釈放した。
(11)Nunca másの式典(6月19日)
バスケス大統領は、軍部と元ツパマロスが、国民的英雄アルティガス将軍の生誕記念日でもあるNunca másの日に、60年代と70年代に起こした暴力行為は二度と繰り返さないと公式に宣言をし、過去に対する認識(それぞれが過去の出来事に関して責任の一旦を担っているということ)を新たにするよう関係者らに働きかけていた。しかし、双方このイニシアティブには賛同せず、式典当日の6月19日期待されたような宣言はされず、中米外遊中のバスケス大統領に代わってニン・ノボア副大統領が主催したNunca másの式典はモンテビデオ独立広場でしめやかに開催された。
当式典には、閣僚からバジャルディ国防大臣が出席。元ツパマロスメンバーのムヒカ上院議員は式典の途中まで出席。野党からはボルダベリー前観光大臣、ミエレス独立党代表、ララニャガ国民党上院議員が出席した。
同日、バスケス大統領は外遊先のキューバにてアルティガス像に献花をした上で、ウルグアイ国民に向けて、協調・団結・対話を呼びかけると同時に、独裁政権時代の人権侵害に関しての情報提供を要請した。
(12)職場占拠に関する大統領令の廃止
(イ)6月17日、バスケス大統領は外遊先のパナマにて、ストライキの権利の延長としての平和裏での労働者による職場占拠を法的に公認する大統領令を撤廃すると表明した。企業家らに政府が一歩歩み寄った形となり、外遊に同行した企業家らは大統領の決定を評価した。
(ロ)6月30日、バスケス大統領が、職場占拠を規制していた大統領令を撤廃したことを受け、ボノミ労働社会保障大臣は、バスケス大統領と相談の上、代替案として職場占拠を規制する新しい規程を策定する意向であると発表した。
(13)警察手続き法の成立
6月24日、両院総会にて「警察手続き法案」が満場一致で可決・成立した。同法律は、警察による取り調べや家宅捜索などの実施手法を明確に定義するものであるが、争点となっていた1)身分証不携帯者の拘留処置、2)緊急時における家長による許可無しでの家宅捜索、は条文から削除された。
(14)党内選挙の日程変更についての協議
6月上旬、ガジナル国民党上院議員の発案により、2009年6月の最終日曜日に行われる予定の党内選挙を、5月の第三日曜日(5月17日)に実施しようという案が検討され始めた。6月末現在、各党派閥との調整中であり、全派閥の合意がとれた時点で議会に正式に提案する予定である。
日にち変更の理由は、党内選挙での投票は大統領選挙と違い義務ではなく、1999年及び2004年に実施された党内選挙の投票率が有権者の50%前後であったことから、冬の寒さで投票率が下がるのを防ごうという考え。
ガジナル議員によれば、現在の所、当イニシアティブに関し、ニン・ノボア副大統領、ラカジェ元大統領(国民党エレリスモ派)、アモリン下院議員(コロラド党Lista15)、アブダラ下院議員(コロラド党フォロ・バジスタ派)は好意的な反応を見せているとのこと。当提案に関し、各党派閥で意見が分かれており、党内選挙前倒しが実現するかどうかは微妙なところ。
(15)FA大統領選に向けた各派閥の動き
(イ)6月14日
Espacio 609(MPP、Claveles Rojos、Congreso Frenteamplista、La Corriente de Accion、Pensamiento Libertad)のリーダーらは、今後FA内での合意を取ることの出来る大統領及び副大統領候補を探していく予定であるが、もしもふさわしい候補が見つからない場合には、ムヒカをFA大統領候補とすると決議した。
今後、党内で合意を得るために動く予定で、週一回会合を開き政策綱領など策定していく。
(ロ)6月17日
17日、共産党は、共産党本部にてMPPとの会合を開き、大統領選に向けて協力していくことで意見をともにした。今のところは大統領候補ではなく、まず政策綱領策定が重要であるとの見解で合意した。今後、ベルティエンテ・アルティギスタ及び社会党を引き込んで、アストリ候補に対抗する勢力を作っていく見込みである。
(ハ)6月18日
外遊先のキューバにてバスケス大統領は、自身の意見として公の場で初めてFA大統領選候補としてアストリ大統領・ムヒカ副大統領のペアを支持する立場を公表した。
同発言に対し、野党からは、大統領は憲法によって選挙に関連する政治的プロパガンダに介入するのを禁じられている点を指摘し、憲法違反ではないかとの批判も出た。
他方、FAの様々な派閥からは、未だ党として大統領候補に関しての合意はなく、12月の党大会でFAとしての大統領候補者は決められるべきであるとの主張が多く聞かれる。同時に、まず初めに政策綱領を決議すべきであるという声が挙がっている。これらの声に対して、6月24日、バスケス大統領は、全てのFA党員がそうであるように大統領であっても大統領候補について意見を表する権利はあり、党員としての一意見に対しての非難は受け入れないとした上で、大統領選候補者を最終的に決めるのはFAであり、その決定は尊重すると述べた。
(ニ)6月27日
社会党及びベルティエンテ・アルティギスタの幹部らが国会にて会合を開き、今後共同で2009年の大統領選に向けて政策綱領を策定していくことで合意した。
なお、今のところ両派閥はFAとしての大統領候補を選ぶ党内選挙への候補者を擁立していない。
(16)野党の動き
(イ)5月10日
国民党Correntada Wilsonista(代表:ガジナル上院議員)は同派閥の集まりにてエレリスモ派のラカジェ元大統領を大統領候補として支持することを満場一致で決定した。その後、5月15日、ガジナル上院議員は国民党本部にてラカジェ氏を大統領候補として支持する旨正式に表明した。
(ロ)5月17日
コロラド党のホセ・アモリン・バジェ下院議員(Lista 15のスポークスマン的存在)が2009年党内選挙でLista 15の大統領候補になることが発表された。同氏はホルヘ・バジェ前大統領の甥っ子。
(ハ)5月20日
国民党派閥のLista 51が、国民党党内選挙ではララニャガ氏を支持する方針を明らかにした。
●外交
(1)南米諸国連合(UNASUR)首脳会合
5月23日、伯ブラジリアにて南米諸国連合首脳会合が開催された。この場に、ニン・ノボア副大統領が出席し(フェルナンデス外相も同行)、南米諸国連合設立条約の署名を行った。
この組織への加盟には、ラ米の昔ながらのレトリックでしかないとして、野党が反対していたが、フェルナンデス外相はこの批判に対して、全てのラテンアメリカの国々がこの団体創設のため署名をするというのに、ウルグアイだけが外に残る訳にはいかないと説明した。
(2)亜とのBotnia社セルロース工場問題
5月27日、フライベントスの国際橋梁封鎖によって影響を受けた労働者らは、政府から計230万ペソを補助金として受け取った。住民等は橋封鎖解除を訴え続けている。
(3)外相による米国とのFTA締結の可能性の否定
5月29日、上院の外交委員会にてTIFAの進捗状況について説明をしたフェルナンデス外相は、バスケス政権において米国とのFTA締結をすることはない旨明言した。
(4)バスケス大統領の外遊
(イ)パナマ訪問
バスケス大統領は大統領夫人、アストリ経済財務相、フェルナンデス外相、アリスメンディ社会開発相、アガシ農牧水産相、ムニョス厚生相、センディック燃料アルコールセメント公社(ANCAP)総裁、フラッティ国立食肉協会(INAC)会長、ウルグアイ港湾局(ANP)プンティグリアノ局長、ウルグアイ労働総同盟(Pit-Cnt)幹部2名、及び100名近い企業家らを帯同し、6月15日~17日パナマを訪問した。
バスケス大統領は、トリホス・パナマ大統領との会合(話題の中心は物流及び港湾レベルでの協力についてであった)及び協定署名、パナマ運河の視察、ウルグアイ人コミュニティー訪問等を行った。その他、アストリ経済財務相が商工農業会議所にて現地の企業家らを対象にウルグアイの投資環境についての説明を行った。
(ロ)キューバ訪問
バスケス大統領は6月17日から21日にかけてキューバを訪問。ラテンアメリカ医学学校(La Escuela Latinoamericana de Medicina)に留学中のウルグアイ人奨学生ら訪問、ラウル・カストロ国家評議会議長との会談、フィデル・カストロ前議長との昼食懇談会などが行われた。
ラウル・カストロ国家評議会議長との会談では、米国とのFTA交渉やTIFA締結に踏み切った理由などについて話すとともに、両首脳は両国の通商関係を深化させ、協力関係を促進していくことで合意した。また、ラテンアメリカ及び国際社会における両国の関心事項にも話しは及び、特に世界経済の複雑な現状及びその両国への影響と対応策についても話し合いがなされた。ラウル・カストロ議長からはウルグアイ政府が米国と通商関係を密にしていることに関して理解が示された。他方、様々な分野での協定も締結された
(ハ)メキシコ訪問
バスケス大統領はキューバ訪問の後、6月21日~25日の日程でメキシコを訪問した。カルデロン墨大統領と会談の他、バスケス大統領に同行したウルグアイ企業家らと墨企業約115社との懇談会が開催された。また、バスケス大統領は、在墨ウルグアイ人との会合に参加した。メキシコ訪問の後、バスケス大統領はサンパウロでの乳ガン・シンポジウムに出席した。
カルデロン墨大統領との会談では、両国FTAの枠組みでの対墨輸出品に対する関税の引き下げ、2009年頭をめどにしたウルグアイ羊肉の輸入許可への取り組みが約束された。また、バスケス大統領から、亜と伯に牛耳られているメルコスールの力学を変え、同時に域内統合プロセスを促進するべく、メルコスールに正式加盟するよう墨への働きかけが行われたが、カルデロン大統領は感謝の意を述べるに留まった。
両首脳は欧州議会による不法移民規制ガイドラインに対して反対の意を表明した。他方、カルデロン大統領はバスケス大統領からのウルグアイへの招待を受け入れ、来年訪「ウ」する予定。
(5)欧州議会による不法移民規制ガイドライン可決への反応
(イ)上院による反対声明
6月17日、上院は満場一致で欧州議会で可決される予定(18日)の不法移民規制ガイドラインに反対する声明を可決した。欧州の決定は基本的人権を侵害し特に自由な移動の権利を侵害しているとした。また、上院は、欧州によるこの規制は、欧州に一貫性がないことを示していると指摘。過去、欧州がラテンアメリカへの移民を助長していたことに触れた。なお、同ガイドライン適用により、違法滞在者に対して18ヶ月までの拘留を可能にし、5年の間欧州の国々への再入国が禁止される。
(ロ)バスケス大統領の発言
6月21日、バスケス大統領は外遊先のメキシコにて、ラジオ番組のインタビューに応え、18日欧州議会で決議された違法移民規制ガイドラインに関し、南米の国々が以前ヨーロッパからの移民を快く受け入れたように、必要性に駆られて仕方なく移民を決意した南米人に対する真剣さ・敬意・寛容・権利と人権の尊重をEUに求めた。
●要人往来
(1)5月6日~7日
(イ)ブラジリアを訪問したフェルナンデス外相は、アモリン伯外相と会談し、これからの冬に向けて水不足と相まって危機的状況にあるエネルギーに関して支援を受けるべく、ブラジルが供給可能なエネルギー全ての受給に関心がある旨語り、さらなるエネルギー支援を求めた。できる限りの支援を依頼したが、ブラジル側からは、エネルギー支援の確約を得ることはできなかった。
(ロ)ブラジルに引き続きパラグアイ・アスンシオンを訪問したフェルナンデス外相は、ルゴ次期パラグアイ大統領、ドゥアルテ現パラグアイ大統領及びラミレス外相とそれぞれ会談を行った。
(2)5月10日~12日
中国の回良玉(Hui Liangyu)国務院副総理が当地を公式訪問し、バスケス大統領、ニン・ノボア副大統領他と会見。バスケス大統領とともに中国・亜・ウルグアイの合弁会社であるChery Socma社自動車工場を視察するとともに、ニン・ノボア副大統領、アガシ農牧水産大臣と会談し、経済協力及び家畜衛生協定等の両国間協定署名を行った。
両国は1988年に外交関係を樹立しており、本年は20周年にあたる。
(3)5月13日~14日
Astrid Thorsフィンランド移民・EU問題担当大臣が、中南米EUサミット出席のためにリマに向かう経途、フィンランドとウルグアイの良好な関係継続のため来訪した。
(4)5月15日
伯のジョビン国防大臣が、伯の提唱している南米諸国連合の一部としての南米防衛理事会(Consejo de Defensa Sudamericana)設立についての支持を得る為ウルグアイを訪問し、フェルナンデス外相及びバジャルディ国防大臣と会談を行った他、上院外交委員会においても同案についての説明を行った。
(5)5月15日
ベラスコ・エクアドル厚生省健康普及及び社会保障担当次官が医療・健康保険制度調査のため当地を訪問した
(6)5月16日
リマにて開催された中南米EUサミット、ニン・ノボア副大統領が出席した。
(7)5月20日~24日
ルゴ・パラグアイ次期大統領が5月20日、実姉のメルセデス・ルゴ氏を伴い、プンタ・デル・エステの当国大統領別邸に到着した。22日にはモンテビデオの大統領官邸においてバスケス大統領と会談を行った。
他方、ルゴ次期大統領のエネルギー問題顧問を務めるRicardo Canese氏はマルティネス工業エネルギー鉱業大臣と会談し、本年8月15日のルゴ次期大統領就任後、パラグアイからウルグアイへのエネルギー輸出の為の協約を結ぶ可能性についての検討を行った。
(8)6月1日~3日
フェルナンデス外相は、第38回米州機構(OAS)総会出席のため、5月31日ウルグアイを出発。コロンビアのメデジン市に向かった。
(9)6月9日
カナダのデリー外務省次官がエネルギー関連企業(地熱・風力・バイオマス・バイオ燃料・核エネルギー専門)の幹部等とともにウルグアイを訪問し、マルティネス工業エネルギー鉱業大臣らと会談。ウルグアイのエネルギー危機を視野にカナダのエネルギー技術をアピールし、同分野での通商関係の可能性を探るとともに、両国FTA交渉開始の可能性について発言した。
(10)6月29日~7月5日
(イ)マルティネス工業エネルギー鉱業大臣が6月29日にウルグアイを出発し、スペインとポルトガルを訪問した。スペインマドリッドにて世界中の石油関連企業が出席する石油に関する国際会議に出席しウルグアイでの天然ガス及び原油発見の見込みについてプレゼンをし、2日には2008年12月に行うウルグアイ海底資源調査結果報告会についての説明会を行った。
また、ポルトガルからの公式招待により7月3日から5日までポルトガルに滞在し、Portucelなど多くの企業や投資家との懇談を行った。
(ロ)6月24日、外遊先のメキシコにおいて、バスケス大統領はウルグアイ沖大陸棚における天然ガスの存在を是認した。
●その他
(1)節電計画の拡大
5月12日、義務的節電計画をプライベートセクター(商業及び住居)にも拡大する大統領令が発令された。右は、守らなかった場合、一定期間電気を供給しない(2時間~5日間)などの罰則が適用される。
ウィンドウや看板などイルミネーションの消灯、エレベーター・エスカレーターの50%使用停止。門や入り口など保安上不可欠な点灯を除いては電気を使わない。また、商業スペースでは、展示用の電化製品の電源を切っておくことなどが義務化された。
(2)サンパウロ・フォーラム
5月22日から25日までモンテビデオにて第14回サンパウロ・フォーラムが開催された。ラ米各国左派間の政策調整、経験の共有、国際情勢についての議論などを目的とし、ラ米・カリブの左派政党及び進歩主義団体が出席する会合であるが、今回、ラ米の左派政治団体及び欧州からのオブザーバーら32カ国から107団体約850人の参加があった。
当初、中南米の左派政府から多数の大統領が参加すると言われていたが、結局首脳レベルの参加は、ニカラグアのオルテガ大統領だけであった。ホスト国ウルグアイからもFAからはブロベットFA代表、ムヒカ上院議員(前農牧水産大臣)、アガシ農牧水産大臣等は本会合に出席しているが、バスケス大統領、ニン・ノボア副大統領とも出席していない。
連日の会合を通じ、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、ニカラグアからの参加者が活発に動き、米国による帝国主義と資本主義への非難が行われた他、ラ米地域の不安定を米国が誘発しているという指摘が多く発せられた。また、多国籍企業及びマスコミが権力を握り続けており、ラ米各国には「政府」は存在するものの、本当の意味での「権力」を持っていないとの発言が繰り返された。
(3)タバコ中毒対策法施行
2006年3月1日から施行された公共施設屋内での喫煙禁止政令に関連して、6月1日より、たばこ関連の宣伝及びタバコ会社による助成が禁止される。