(1)内政
●同性婚合法化法案の議会承認プロセスが終了した。
●バスケス前大統領が本格的な政界復帰に向けて活動を開始した。
●シャビエルFA総裁が上院議員を辞職し、後任にコンデ外務次官が就任することとなった。
●国民党のララニャガ上院議員は、次期モンテビデオ知事選挙におけるコロラド党との野党統一候補擁立を支持すると明らかにした。
(2)外交
●ムヒカ大統領はベネズエラ大統領就任式に出席した。
●ムヒカ大統領がフェルナンデス・アルゼンチン大統領及び故キルチネル前同国大統領を中傷する「失言」を行い、二国間関係の悪化に発展することが一時懸念された。
●アルマグロ外相はドイツ、ルーマニア、英国、スイス及びスペインを訪問した。
●モンテビデオでラテンアメリカ・カリブ地域情報化社会に関する閣僚会議が開催された。
(3)社会
●NGO司法法律財団によるモンテビデオにおける少年犯罪に関する研究結果が発表された。
●警察官の給与増がないため、警察官が副業に就く状況が続いている。
●内務省が空巣事件への不十分な対応を理由にモンテビデオ県警を刑事告訴するとともに、薬物捜査を担当していた県警警察官宅に対する家宅捜索等を行ったことから、県警本部長及び副本部長が辞職する意向を示した。
●民間警備員の数が急増し、警察官数を上回った。
2 内政
(1)政府、議会及び与党FAの動向
ア 2日、アルバロ・ベガ下院議員がMPPを離脱した。教育改革、医療改革等を巡りMPP幹部と再三に亘り対立したことに加え、同議員が推進していたフロリダ県の食肉加工場再建問題に関して、MPP幹部が同議員を除外する形で計画を進めていたことが明らかになったことが離脱の原因とされている。また、3日にはエステバン・ペレス下院議員がMPPを離脱した。ハイチPKOへの派遣継続を巡る議会審議の際、派遣中止を主張したためにMPP内部で孤立したことが尾を引き、今回の離脱に繋がった。
イ 3日、ロレンソ経済財務相はボルダベリ上院議員(コロラド党)により上院に召喚され、インフレ対策や金融政策等に関して質問を受けた。
ウ 3日、1813年4月5日に「トレス・クルセスの議会」において起草され、ブエノスアイレス政府に対して自治独立を訴えた「13年の指令(Instrucciones del Año ⅩⅢ)」200周年を祝う式典が開催され、ムヒカ大統領ら政府関係者が出席した。また、5日には議会において「13年の指令」200周年を祝う特別両院総会が開催された。
エ 10日、下院は同性婚合法化法案に関する上院での修正点につき可決し、同法案の議会承認プロセスが終了した。同法発効により、ウルグアイは世界で12番目、中南米ではアルゼンチンに次ぎ2番目に同性婚を認める国となる(州単位で認められているものを除く)。同法には、同性婚の合法化のみならず、婚姻適齢の引き上げ(現行男性14歳以上、女性12歳以上から男女ともに16歳以上に引き上げ)、養親が養子の名字の順番を選ぶ権利(現行は「父方性」「母方性」の順番)、同性夫婦による養子縁組等、多くの民法上の変更が含まれている。今後90日以内にワーディングに関する修正法案を別途議決する予定。
オ 26日、シャビエルFA総裁(社会党)は上院議員を辞職すると発表した。FA総裁職と議員職との兼任を禁じるFAの規定に従ったもの。社会党、セレグニ戦線らが中心となり、シャビエル総裁が議員職に留まることができるよう各派閥との調整に当たったが、規定に従うべきであるとする共産党を中心とする基盤委員会との間で折り合いがつかず、内部対立を避けたいシャビエル総裁自らが議員辞職に踏み切った。後任にはゴンサロ・コンデ外務次官(社会党)が就任することとなった。
(2)バスケス前大統領の動向
ア 5日、FAは1971年3月26日に創設最初の政治集会が開催されてから42周年を記念する集会を開催し、次期大統領選挙への立候補が有力視されるバスケス前大統領も出席した。
イ 9日、バスケス前大統領はFA所属のシンクタンクであるリーベル・セレグニ財団に入会した。今後の本格的政界復帰に向けた更なる一歩であると見られている。
ウ 13日、社会党中央委員会はバスケス前大統領を次期大統領選挙立候補者として事実上支持する旨の声明を発出した。
エ 18日、バスケス前大統領はサンパウロを訪問し、カルドソ元同国大統領主催のiFHC財団において講演を行い、自身の去就については本年9月~10月頃に公表すると述べた。また、メルコスールに関してはパラグアイの早期復帰を望むと述べるとともに、地域統合プロセスにおけるブラジルの更なるリーダーシップを求めた。
(3)野党の動向
ア 14日、コロラド党が提案する次期地方選挙におけるモンテビデオ知事ポストへの野党統一候補擁立に関して、これまで否定的な立場を貫いていた国民党のララニャガ上院議員(Alianza Ncional)が一転して賛同する旨公言した。国民党内部ではラカジェ上院議員(元大統領)率いるUnidad Nacionalが以前より賛成の意向を表明しているため、今回のララニャガ上院議員の決断により具現化の可能性が高まった。
イ 28日付当地主要紙によれば、国民党の伝統派閥の一つであるロチャ国民運動(MNR)が次期大統領選挙に向けて同党の各立候補予定者との協議を開始し、今後支持する候補者の選定を進めていくと発表した。前回2009年の大統領選挙において、MNRはララニャガ候補(Alianza Nacional)を支持したが、次期大統領選挙においてはラカジェ・ポウ下院議員(Unidad Nacional/Aire Fresco)を支持する可能性も囁かれている。
(4)世論調査結果
3日、Factum社が支持政党に関する世論調査結果を公表し、FA43%(前回(昨年12月公表)比:+1ポイント)、国民党23%(同:-1ポイント)、コロラド党16%(同:±0ポイント)、独立党:2%(同:±0ポイント)等となった。
(5)軍政期の人権弾圧問題(3(6)イも参照)
ア 8日、1978年にサルト県でエンリケ・ピエガスが殺害された件に関し、最高裁は人道に対する罪が適用されず、時効が成立するとの判決を下した。
イ 9日、ルイバル最高裁判所長は当地主要紙のインタビューの中で、軍政期の人権弾圧に関する責任追及問題は、最高裁において「城壁(muralla)」に阻まれるであろうと発言し、人権保護関係者から強い批判の声が上がった。
ウ 11日、1974年にコロニア県でアルド・ペリーニが逮捕・拷問の末虐殺された「ペリーニ事件」に関して、最高裁は免責法の所謂無効化法の一部違憲を理由に裁判終了を言い渡した。テレチェア検事は、偏見に基づく不公平な裁判をする虞があるとして、「城壁」発言を行ったルイバル裁判長及び、「ペリーニ事件」担当判事を含む3名の最高裁判事に対して忌避の申し立てを行った。その後も複数の検事が忌避申し立てを行い、申し立て件数は計5件に及んでいる。
エ 23日、1977年に教師・ジャーナリストのフリオ・カストロがモンテビデオで監禁され拷問の上殺害された「フリオ・カストロ事件」に関し、刑事裁判所は人道に対する罪が適用されるとして被告側の裁判終了請求を退けた。
オ 26日、1974年にトゥパマロスのアントニオ・ビアナがブエノスアイレスで監禁・拷問され、モンテビデオに移送後も複数の軍施設で拷問を受けた「ビアナ事件」に関し、ラリュー刑事裁判所判事は人道に対する罪が適用されるとして被告側の裁判終了請求を退けた。ラリュー判事は、2月に突然の異動で大きな物議を呼んだモタ判事の後任。
3 外交
(1)ムヒカ大統領のペルー及びベネズエラ訪問
18日、ムヒカ大統領はペルーで開催されたベネズエラ情勢に関するUNASUR臨時首脳会合に出席した。その後19日にベネズエラを訪問し、マドゥーロ同国大統領就任式に出席した。
(2)アルマグロ外相の欧州訪問
ア 8日、ドイツを訪問したアルマグロ外相はヴェスターヴェレ同国外相と会談し、二国間社会保障協定に署名した。また、EU・メルコスールFTA交渉を早期に再開することの重要性を強調した。
イ 9日~10日、アルマグロ外相はルーマニアを訪問し、コルラツェアン同国外相と会談した。両外相は本年下半期にブカレストにおいてビジネスフォーラムを開催することに合意したほか、二国間教育・文化協力プログラム(2013~2018年)及び外交官の家族の労働に関する二国間協定に署名した。また、社会保障協定の交渉開始につき合意した。さらに、両外相はEU・メルコスールFTA締結に向けた両国のコミットメントを確認した。
ウ 10日、英国を訪問したアルマグロ外相はスワイヤー英国務大臣と会談し、本年5月に二国間租税情報交換協定を署名することで合意した。また、マルビーナス(フォークランド)諸島問題に関し、両国の立場につき意見交換を行った。
エ 11日、スイスを訪問したアルマグロ外相はブルクハルター同国副大統領兼外相と会談し、二国間社会保障協定に署名した。また、EFTA・メルコスールFTA交渉の再開が有する重要性を強調した。
オ 12日~13日、アルマグロ外相はスペインを訪問し、ガルシア・マルガージョ同国外務・協力相と会談したほか、19名の駐欧州ウルグアイ大使との懇談会に出席し、EU・メルコスールFTA交渉及びEFTA・メルコスールFTA交渉の推進等に関して意見交換を行った。
(3)ムヒカ大統領の「失言」
4日、ムヒカ大統領は記者会見の席において、マイクが入っていることに気づかずにフェルナンデス・アルゼンチン大統領及び故キルチネル前同国大統領に対する中傷ともとれる発言を行い、これが大統領府WEBページを通じて生放送されたことから、国内外のメディアやソーシャルネットワークを通じて瞬く間に世界中に流布された。同日午後、ティメルマン・アルゼンチン外相はポミ駐アルゼンチン大使に対して抗議の書簡を手交し、二国間関係の悪化が懸念されたが、その後ムヒカ大統領が謝罪し、18日にペルーにおいて開催されたUNASUR臨時首脳会合には両大統領がアルゼンチン政府専用機でともにペルー入りしたことで事態はひとまず収束した。
(4)ルーラ前ブラジル大統領のウルグアイ訪問
4日、ルーラ前ブラジル大統領がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領、シャビエルFA総裁らと会談した。また、ムヒカ大統領やバルセナECLAC事務局長らとともにフリードリヒ・エーベルト財団主催の国際フォーラムに出席した。
(5)その他要人往来
ア 10日~12日、アンタナス・モックス元コロンビア・ボゴタ市長が内務省の招待でウルグアイを訪問し、自身が代表を務める非営利組織Corpovisionariosが実施したウルグアイ版国民文化及び共生に関する第1回調査の結果を公表した。
イ 12日、ドイツのライナー・ドイチュマン下院議員(自由民主党)がウルグアイを訪問し、ウルグアイ・ドイツ友好議連メンバーらと会談した。
ウ 16日、パラグアイ大統領選挙に立候補していたパラグアイ・アレグレ連合のアレグレ候補らがウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を私的に表敬した。
エ 17日、ドイツ・ハンブルクのショルツ市長がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を表敬した。
オ 23日~24日にチリ・サンティアゴで中国・ラテンアメリカ農業協力閣僚会合準備会議が開催され、ベネッチ農牧水産次官が出席した。
カ 25日~28日、ビシャラ・ブトロス・ライ東方典礼カトリック教会マロン派アンティオキア・全レバント総大司教がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を表敬した。
キ 29日~30日、欧州議会議員団がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領、アストリ副大統領兼上院議長、アルマグロ外相、カルドソ下院議長らを表敬し、EU・メルコスールFTA交渉の活性化等につき意見交換を行った。
ク 29日、ウルグアイを公式訪問したグルジアのデビッド・ジャラガニア外務副大臣はアルマグロ外相と会談し、外交・公用旅券査証免除協定、二国間外交官学校協力協定等に署名した。同国政府関係者のウルグアイ公式訪問は今回が初めて。
ケ 29日、アゼルバイジャン議員団がウルグアイを訪問し、ウルグアイ・アゼルバイジャン友好議連メンバーらと会談した。
(6)国際関係機関関係
ア 3日~5日、モンテビデオで国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)主催の第4回ラテンアメリカ・カリブ地域情報化社会に関する閣僚会議が開催され、ムヒカ大統領、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相、カネパ大統領府副長官、バルセナECLAC事務局長らが出席した。
イ 9日~10日に政府はジュネーブで国連強制失踪委員会に対して、強制失踪条約の義務履行のための措置に関する報告書を同条約第29条第1項に基づき世界で最初に提出した。委員会側は同報告書を受けて15の勧告を提示し、特に軍政期の人権弾圧に関する免責法の無効化法に関し、本年2月に最高裁がその一部を違憲とする判決を出したことを憂慮する旨述べた。今後、政府は2014年4月19日までに上記勧告の検討状況につき回答することになっている(2(5)を参照)。
(7)その他
ア 1日、豪州とのワーキングホリデー制度に関する覚書が発効した。
イ 2日付当地主要紙によれば、カマロサノ駐メキシコ大使が新・駐チリ大使に任命された。ウルグアイ輸出業協会出身の同大使は、中南米各国の民間企業とのネットワークを有しており、チリとの通商関係強化を重視する現政権の意向を反映した人事であると評されている。新・駐メキシコ大使にはホルヘ・デルガド国防相官房長(CAP-L)が就任予定。駐チリ大使ポストは、昨年12月のバス大使死去の後空席となっていた。
ウ 18日~19日、第1回ウルグアイ・コロンビア麻薬対策会合が開催された。
エ 18日、ウルグアイはカナダとの租税情報交換協定に署名した。
オ 21日付当地主要紙によれば、国防相はハイチ政府に対して、ウルグアイ国内における国防・災害救助分野における研修プロジェクトの実施を提案した。
4 社会
(1)治安
ア NGO司法法律財団(Fundación Justicia y Derecho)の研究グループが2005年から2010年までのモンテビデオ県における少年犯罪について研究した結果が発表された。強盗事件について、75.5%に少年が関与、対象別では商店や交通機関に対するものが増加傾向にあり、約7割が複数犯、86.3%にけん銃が使用されていることなどが明らかになった。
イ 警察官の生活費を補うために行っている222サービス(警察組織が管理して行わせている警備員等のアルバイト)については、警察体制強化のため、年々削減(2015年までに月50時間に削減目標)されてきているが、警察官の給与が上がらないため(巡査の平均給与:約1万4500ペソ=約7万2500円)、引き続きタクシー運転手、配達人、マンションの門番などの副業に就いている者が多い。
ウ カラスコ地区で発生した空巣事件に第14警察署の警察官が迅速に対応しなかったことについて、内務省は職権乱用に当たるとして刑事告訴した。また同日、内務省は薬物捜査を担当していた県警警察官宅に対する家宅捜索等を行った。これを受け、モンテビデオ県警本部長が辞職する意向を示した。副本部長も辞職する意向であり、今後大規模な人事異動が行われることとなる。
エ 民間警備員の数が急増し、2年前の1万9000人から現在では2万3924人となり、警察官数2万2600人を超えた。また、警備員の給与が急騰しており、2005年に時給10.5ペソであったのが、現在は64ペソとなっている。