ウルグアイ内政・外交:4月
1.概要
(1)内政及び社会
●12日、与党拡大戦線(FA)党のイニシアティブで進められている失効法の無効化法案が上院を通過した。
●28日、国防関係全般及び国家の脅威に関わる事案について政府の諮問を受ける国家国防審議会(CODENA)が初のセッションを開催した。
●国際協力庁(AUCI)が大統領府内に新設された。今後、外務省及び予算企画庁とともに国際的な戦略と国家開発を推進し、各機関、各国からのウルグアイへの支援を効率的に調整する。
(2)外交
●4~9日、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相はイスラエルを訪問し、ウルグアイにおける灌漑施設、石油探査、電気関係、医療設備等への投資に関心のある企業との会合に出席した。
●5日、サン・ホセ県にエアバッグの生産工場を建設する日本企業タカタ社の地鎮祭が開催され、ムヒカ大統領も参加した。
●8日~13日、アルマグロ外相はイラン、レバノン、カタール等中東諸国を歴訪。各国と二国間関係の強化や貿易及び投資促進について協議した。
●27日~29日、ウルグアイ外務省及び国連軍縮調査研究所(UNIDIR)の共催により、2012年に国連での条約作成が目指される武器貿易条約に関する地域セミナーが開催された。
2.内政
(1)政府及び議会の動き
ア 5日、議会は、ムヒカ大統領が3月1日に提出した年次報告書に基づき「ム」政権の1年に関する議論を行い、「ム」大統領による野党との対話や合意、前政権時に悪化した対亜外交の早期修復を高く評価した一方、経済政策の揺れや政治任命職にかかる多大な経費等について批判した。
イ 5日、上院は国家水道局(OSE)の新総裁に任命されたミルトン・マチャド氏の同職就任を裁可した。
ウ 7日、カステラ国防次官が膵臓ガンのため軍病院で死亡した。
エ 12日、与党拡大戦線(FA)党のイニシアティブで進められている失効法の無効化法案が上院を通過。FA党は同党議員に対し上記法案に賛成票を投じることを党決定としたが、3名の上院議員が同法案に反対を表明していたためその動向が注目された。3名はそれぞれニン・ノボア議員(Alianza Progresista派)が休暇を取得しその代理議員が賛成票を、ウイドブロ議員(CAP-L派)は意思に反し賛成票を、サラビア議員(MPP派)は党内決定に背き反対票を投じた。議決後、ウイドブロ議員は議員辞任を表明、サラビア議員については、党決定に従わなかったことを受け、FA党内で今後の処遇につき協議されることになる等、FA党を分かつ法案の通過となった。なお、下院での議決は5月下旬の予定。
オ 軍政期の拷問等人権侵害の罪で服役中の軍人の釈放を求め、覆面をした3名が最高裁判事を脅迫している様子を撮影したビデオが存在すると報じられたが、「ム」大統領以外誰もビデオを見ていないことから、野党はその存在自体を疑問視し、政府を厳しく追及した。26日、野党上院議員は本件でロサディージャ国防相及びボノミ内相を召喚した。質疑は6時間にわたり行われたが、両大臣から新たな情報はなく、政府は野党を説得することはできなかった。しかし、過半数となる17名のFA党上院議員が両大臣の陳述内容を承認したため、当初懸念されていた両大臣の解任発議には至らなかった。
(2)労働関係
ア 国際労働機関(ILO)による、ウルグアイの団体交渉関連法令の状況調査ミッション派遣につき、11日、ミッションの受け入れが閣議決定された。また、14日、国際労働機関(ILO)事務局Ducci課長が訪ウ、ブレンタ労働社会保障大臣やバレラ商工会議所会頭、カスティージョ全国労働総同盟長と別々に会合し、ILOミッション派遣のための準備として、ウルグアイの労働状況につき情報収集を行った。ILOミッションの派遣は6月のILO総会開催後となる見込み。
イ 11日、昨年12月、ごみ回収をエッセンシャル・サービス(スト行為が制限される)とする緊急衛生政令を遵守せず、ごみ回収業務を忌避した150人のモンテビデオ県庁職員への制裁が部分的に始まることを受け、同日、県職員組合(ADEOM)は部分的ストを実行した。
ウ 中旬、航空関係労組は、昨年11月に始まった賃金交渉が順調に進んでいないことを受け、首都カラスコ空港において部分的ストを実行、航空便の発着に影響が出た。
(3)国防関係
ア 28日、2010年2月に国防法により既に創設されていた国家国防審議会(CODENA)が初のセッションを開催した。CODENAは「ム」大統領、ロサディージャ国防相、ボノミ内相、アルマグロ外相及びロレンソ経済財務相により構成され、今後、国防に関する全般的な課題や国家の脅威となりうる事案につき政府の諮問を受ける。
イ ロサレス陸軍最高司令官は、軍内、特に国連平和維持活動に参加した帰国軍人にHIVウィルス感染者が多数いることを指摘。軍入隊時にはウィルス感染の血液テストが義務づけられているが、これまでこれが人権問題や差別に当たるとして行政府はその必要性を調査・検討していた。しかし、今回の調査により血液テストの妥当性が認められたことから、行政府はその継続を承認した。
(4)内務関係
ア 3日、国民党ララニャガ上院議員(Alianza Nacional派)は、コロラド党が取り組んでいる少年法改正(主に犯罪処罰年齢の引き下げ)について国民投票を行うための署名活動へは賛同しないことを表明。しかし、同党のラカジェ上院議員(Unidad Nacional派)は同署名活動に協力する用意があることを表明し、党内が分裂している。
イ 10日、内務省は2010年に未成年が関与した犯罪が10,349件に上り、補導された未成年の19.5%がウルグアイ青少年局(INAU)に保護されたことを発表。これにより、例として1月から10月までの強盗事件8,600件中約5,000件に未成年が関与していたなど、国内の治安悪化原因に未成年が関与していることが浮き彫りにされた。
(5)その他
28日、大統領府内に新設された国際協力庁(AUCI)のオープニングレセプションが開催された。今後、AUCIは外務省と予算企画庁とともに、国際的な戦略と国家開発を推進し、各機関、各国からのウルグアイへの支援を効率的に調整する他、三角協力や南南協力等のウルグアイが実施する協力の調整も行う。
3.外交
(1)対日関係
5日、サン・ホセ県にエアバッグの生産工場を建設する日本企業タカタ社による建設予定地の地鎮祭が開催され、「ム」大統領及び本使も参加した。同社は1,000万ドルを投資し、ウルグアイでのエアバッグの生産及び右製品のブラジルへの輸出を目指す。
(2)対ブラジル関係
25日、「ム」大統領はインフラ、港湾、鉄道、エネルギー関係及びロジスティックへの投資に関心を持つブラジル人企業家グループと面会、ピンタド公共運輸事業大臣も同席し、現在ウルグアイが進める官民連携法案の可決や戦略的計画による投資の採算性調査の必要性につき確認した。
(3)対パラグアイ関係
ア 13日、クラメル・パラグアイ観光相は南米南部外遊の一環としてウルグアイを訪問し、レスカノ観光スポーツ相と面会、ウルグアイとの観光振興の必要性につき確認した他、ウルグアイ観光関係者との会合において、パラグアイにおける観光産業の成長を強調、イエズス会伝道施設やイグアスの滝等文化及び自然観光についても紹介した。
イ 29日、カストロ・パラグアイ外相がウルグアイを訪問し、「ア」外相と会合、メルコスールの枠組みを超えた共通の課題に取り組むことに合意した。右により二国間のエネルギー統合や水路の問題、ウルグアイの港を利用したパラグアイ農産物の出荷等が今後の課題となる。
(4)対中東関係
ア 4~9日、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相は、センディック燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)総裁及びカジョイア共和国銀行総裁等とイスラエルを訪問し、ウルグアイにおける灌漑施設、石油探査、電気関係、医療設備等への投資に関心のある企業との会合を行った。この他、同大臣は、シモン産業貿易労働大臣やカハロン通信大臣及びランダウ・インフラ大臣とも会合した。
イ 8日、「ア」外相はイランを訪問し、アフマディネジャド・イラン大統領と会合し、現在の二国間関係を評価した他、更なる経済・貿易関係強化の必要性を確認した。また、同外相はサレヒ・イラン外相とも会合し、二国間協力の覚え書きに署名した他、農牧相やイラン・ウルグアイ友好議員連盟の議員等とも面会した。
ウ 11日、「ア」外相はレバノンを訪問し、スレイマン・レバノン大統領及びベリー国民議会議長等と会合し、現在の二国間・地域関係、商業、投資及び観光促進における代表団派遣について協議した。
エ 12日及び13日、「ア」外相はカタールを訪問し、サーニー首長兼外相及びバイナイ外務次官と会合、二国間関係強化や情報交換促進のための覚え書きに署名した他、カタール商工会議所会頭と二国間貿易促進の可能性について協議し、ウルグアイの投資誘致への関心を強調した。
(5)その他
ア 13日、ピニェイロ・メルコスール上級代表がウルグアイを訪問し、「ム」大統領と会合、南米統一の深化、生産統合プロセス開発、域内の人の移動の自由化促進、及び各国間の貿易関連法案の協調の必要性につき確認した。
イ 27日~29日、ウルグアイ外務省及び国連軍縮調査研究所(UNIDIR)の共催により、2012年に国連での条約作成を目指す武器貿易条約に関する地域セミナーが開催され、中南米諸国35ヵ国及び地域機関、市民社会団体が参加し、武器貿易抑制に向けた改善策について議論が交わされた。
ウ 下旬、ルーカス・エクアドル外務次官がウルグアイを訪問し、アストリ副大統領や「ア」外相等と会合、南米諸国連合の強化等について協議した。また、ルーカス外相は、ウルグアイ議会による南米銀行の早期承認を要請したものの、ラカジェ・ポウ下院議長は、承認の可能性を明確にしなかった。
4.社会
(1)治安
ア 2日、国内サッカーリーグでライバルとされているダヌービオとディフェンソールの試合において警察は入場者等に対する厳重な身体検査を行った。その結果、銃や警棒及び自家製の爆薬を所持していた56人のサポーターを逮捕した。両チームの熱烈なサポーター同士は、これまでにも数回の乱闘事件を起こしており、問題視されていた。
イ 3日深夜、サシャーゴ地区において路線バスの運転手が単独の強盗犯に襲われた。付近を走行していた同じ会社の同僚が騒ぎに気付き、バスに乗り込んだところ、犯人に銃で足を撃たれ負傷。同社の運転手らが加盟する労働組合は、街頭の治安が改善されていないとして、夜までストライキを行い、市民の足に影響を及ぼした。
ウ 7日、モンテビデオ県警本部は、機動隊や騎馬隊などの警察部隊を投入し、チャカリタ・デ・ロスパドレス地区の大規模な捜索を行い、違法薬物を所持していたなどとして約50名を検挙。同地区は近年、麻薬の違法販売組織が跋扈するなどしており、警察官が単独では活動できない「レッドゾーン化」が進んでいた。なお、ラ・クルス、マルビン・ノルテでも同様のオペレーションが実施されている。
エ 19日、INAUに収容されていた17歳の少年が、別のINAU施設に収容されている兄弟の面会に出向く途中で仲間の手助けにより逃亡。当時INAU職員2名が付き添っていたものの、本来必要とされる警察による監視がついていなかったため批判が起きている。
オ アルゼンチンやチリ、エル・サルバドル、EU及び日本等を含む当国に駐在する外交団の盗難被害や、大使館及び公邸等外交団施設及び近郊での強盗等が2010年に増加したことにより、外交団はウルグアイ外務省に懸念の意を表明。これを受け「ア」外相は、これまでの事件をまとめた資料を内務省に提出するとともに、今後、治安・警備対策官を各外交団施設に配置するよう正式に要請した。
(2)保健衛生
15日、厚生省はウルグアイにおいて抗生物質の効かないスーパーバクテリア(KPC)の感染者が2名いることを発表、その感染ルート及び原因究明を急いでいる。
(3)東日本大震災関係
ア 8日、東日本大震災の被災者への哀悼の意を込めてウルグアイの小学生達が折った千羽鶴の展示会が、ポルトネス・ショッピングセンターで開催された。
イ 14日、ウルグアイ・アルティガス青少年楽団のオーケストラコンサートにおいて、東日本大震災の被災者に対する黙祷とともに君が代の演奏が捧げられた。
ウ 27日、在ウルグアイ日本人会は、日本庭園において東日本大震災の追悼式を開催。日本庭園の所有者であるモンテビデオ県庁の副県知事や本使夫妻を始め、日本人・日系人や日本と関係の深いウルグアイ人等約200名が参加した。