ウルグアイ内政・外交動向(2007年3月~4月)
●概要
内政に関しては、政権3年目に入った3月2日に、過去2年間の成果を振り返る演説がバスケス大統領により行われた他、内務大臣や予算企画庁長官などの交代が行われた。
外交に関しては、3月9-10日にブッシュ米大統領が中南米外遊の一環でモンテビデオを来訪し、二国間通商関係強化につき両国間で合意した他、バスケス大統領も、経済ミッションを引き連れて4月9-10日にチリ及び4月28日―5月5日にア首連、カタールを往訪する等、ウルグアイ製品の国際市場への参入を目指して積極的な経済外交を展開している。
●内政
(1)内務大臣の交代
3月1日、ディアス内務大臣が健康上の理由により辞任を表明し、後任にはトゥルネ下院議員が指名され、8日に就任、右によりバスケス政権に4人目の女性閣僚が誕生した。
トゥルネ内務大臣はディアス前内務大臣と同じ社会党に属し、穏健派から急進派まで幅広いイデオロギーを含む左派の連合体である拡大戦線内の派閥間バランスを保つための措置であると見られている。一方で同氏は、社会党の中でも党内改革を目指すフェルナンデス書記長のグループに属しており、野党との関係もよく、バスケス大統領との直接ラインも有している。
(2)政権2年間の演説
3月2日、バスケス大統領は独立広場で政権2年間の評価につき演説を行った。未だ多くの留保事項や問題を抱えていることは認めつつも、経済回復や貧困状況の改善など多くの成果を上げたことを表明し、2年間の政権運営をポジティブに評価した。
(3)予算企画庁(OPP)長官及び副長官、税務長官の交代
3月21日、ザイデンスタット税務長官が辞任を表明し、副長官であるエルナン・フェルナンデスが新たに長官に就任することが発表された。同時に、行政改革を推し進めるにあたりOPPの機能を強化する目的で、影響力の高い与党の政治家であるエンリケ・ルビオ上院議員が新たにOPP長官に、副長官にはコンラッド・ラモス大統領顧問を指名することがバスケス大統領により発表され、両氏は28日に就任した。
(4)エコノミスト誌主催の経済セミナー
3月27日、モンテビデオにてエコノミスト誌主催の経済セミナーが開催され、バスケス大統領、レプラ工業エネルギー鉱業大臣、アストリ経済財務大臣他が出席した。各種セミナーが行われた中で、バスケス大統領は、ウルグアイは国際市場への参入を必要としている旨を強調するとともに、2007年の優先施策について講演を行った。右は1)生徒1人にパソコン1台を配布し小学校にネット環境を配備、2)保険改革、3)新税制度の実施、4)国家緊急社会計画(PANES)に変わり裨益対象を全国民とする社会的公正のための計画(Plan de Equidad)の策定、5)国家の近代化、民主化のさらなる定着、6)豊かさ、雇用が平等に分配される国家を目指し、生産的なウルグアイ計画(Uruguay Productivo)を実施することの6つである。
●外交
(1)ブッシュ米大統領来訪
ブッシュ米大統領はローラ夫人、ライス国務長官らを伴って、3月9日及び10日、中南米外遊(伯、ウルグアイ、コロンビア、グアテマラ、墨)の一環としてウルグアイを訪問した。両国首脳は50分に渡り通訳を交えて個別に会談を行い、バスケス大統領はウルグアイ製品の米国市場への参入、通商関係の強化等、ウルグアイ政府の主張の要点を説明した他、科学技術分野での協力、在米ウルグアイ移民の待遇等、固定のテーマにとらわれず自由な意見交換を行った。
右会談と平行して両国事務レベルでも会合が行われ、(両大統領も個別会談後合流)現状年間20万トンのウルグアイ産牛肉の輸入割り当ての拡大、割り当て量を超える輸出分にかかる関税率の引き下げ、羊肉、ブルーベリー、乳製品、繊維製品、ソフトウェアーの米国市場への参入、米伯と共同でエタノール等のバイオ燃料を生産する可能性等をウルグアイ政府は求めた。
通商分野における具体的な成果には欠けたというのが当地紙などの一般的評価ではあるものの、米国からは共通の価値観を持つ国としてウルグアイへの支持が表明され、今後貿易投資枠組協定(TIFA)の交渉の場である二国間委員会を通じた通商関係強化の進展が待たれる。
(2)セルロース問題
(イ)エントレ・リオス亜州知事選
3月16日に実施された亜のエントレ・リオス州知事選では、ブスティ知事及びキルチネル大統領の支持を得たウルバリ候補が当選した。新知事はセルロース工場建設問題に関するエントレ・リオス州の立場に変化はなしと表明した。右に関し、ウルグアイ政府は公式には反応を示してはいない。
(ロ)西王による対話促進
4月18日―20日、スペイン・マドリッドにてウルグアイと亜両国代表による直接対話が行われた。今回の会合は、2006年3月末に予定されていた両国首脳会談がキャンセルされて以降、公式には初の対話再開となる。
ウルグアイ側からはガルガノ外相を筆頭にフェルナンデス大統領府長官、カンセラ外務省官房長、トレス環境庁(DINAMA)長官、カウシジャス住宅土地整備省顧問、ウルグアイ河運営委員会のロレンソ代表が参加した。
亜側からはタイアナ外相を筆頭に、フェルナンデス首相、ウリバリ・エントレ・リオス州知事、ピコロッティ環境庁長官が参加、「仲介」(Facilitador)役の西からはモラティーノス外相及び、本件の特使を務めたヤネス国連代大使が対話の促進者として参加し、会合は3日間に渡りマドリッド郊外のキンタ・デル・パルド宮にて非公開の形で(puerta cerrada)行われた。
両国はマドリッド宣言に署名を行い、今後とも技術・政治の2レベルで、西王の仲介の下、直接対話を継続していくことで合意した。今後の二国間対話では、以下が話し合われる予定である。
(ⅰ)場所(localizacion)やその他の重要問題を含めプロジェクト・オリオン(注:Botnia社セルロース工場)の問題ついて
(ⅱ)国際橋梁及び道路の通行について
(ⅲ)ウルグアイ河規約の適用について
(ⅳ)ウルグアイ河の環境保護及び同地域における持続的発展の促進について
(ハ)国際橋梁の封鎖
亜とウルグアイを結ぶ3つの国際橋梁の内、フライ・ベントス市―グアレグアイチュ市を結ぶ橋は昨年11月20日以降、引き続き封鎖されており、断続的に封鎖を行っている北2つの橋が折りを見て封鎖に加わっている。
観光客が多く往来する観光週間(3月31日から4月8日までの8日間)には3つの橋
で封鎖が行われ、ウルグアイ政府は亜政府に物・人の自由な流通を保障するべく必要な措置をとるように求める口上書を新たに発した。
マドリッドでの直接対話の成果に不満を表明して、4月22日にも14時―22時の間、両国間の陸路は完全封鎖された。この他、亜の活動団体は22日にブエノスアイエス国際ブックフェアのフィンランドのスタンドの前で、また23日には在亜フィンランド大使館前で抗議運動を行った。
さらに、4月29日には、グアレグアイチュ市の活動団体の呼びかけで、フライ・ベントス市とグアレグアイチュ市を繋ぐ国際橋梁の中間点までの抗議行進が行われた。参加者は約8万~10万人に登ったとみられ、活動団体は満足の意を表した。
3月28日、ロッシ運輸公共事業大臣が、封鎖による被害は1億ドルを超える旨発言した。
亜の市民団体は、BOTNIA工場の移転によってのみ問題は解決されうるとの姿勢を崩していない。
(3)バスケス大統領のチリ訪問
4月9日-10日、バスケス大統領はアストリ経済財務大臣等の閣僚及び経済ミッションを伴い、チリを訪問した。今回の訪問の目的は、約50ヶ国とFTAを締結しているチリを中継の橋としてウルグアイ製品の域外市場への参入の可能性を探ることである。右目的のため、ウルグアイとチリは経済・通商・技術協力を中心とする9つの協定を締結し、年二回開催予定の二国間通商委員会、二国間企業家諮問委員会が設立された。後者では今後、両国間の通商活動を緊密化し、第三国での通商活動を協調して行っていくことを目的とした対話を行っていく予定である。但し、チリがFTAを締結している諸国の市場へのアクセスについては、バストラ商工会議所会頭が「原産地規則の問題があり容易ではない」とコメントするなど懐疑的な見方が多い。
(4)バスケス大統領の中東外遊
バスケス大統領は4月28日から5月5日にかけてアラブ首長国連邦及びカタールを訪問した。今回の外遊の目的は、両国とウルグアイの二国間経済関係を深めること、具体的にはウルグアイ製品の両国市場への参入、及びアラブ諸国からウルグアイに向けた投資誘致を行うことであった。4月30日にはア首連においてバスケス大統領とハリーファ大統領の会談、アブダビの商工会議所会頭と同行大臣の会談が行われ、5月1日にはドバイにて、バスケス大統領とムハンマド副大統領兼首相と会談が行われた他、3日にはバスケス大統領はカタールにてハマド第一副首相兼外務大臣と会談を行った。また、一行はSheik Hamdan bin Rachid Al Maktum経済産業大臣兼第二首相と通商関係強化及び投資誘致のための将来的な交渉の基礎について会談した。
(5)貿易投資枠組協定(TIFA)二国間委員会
4月26日にワシントンにてTIFAの二国間委員会の初回が開催され、ウルグアイからはフェルナンデス大統領府長官が、米側からはベロノーUSTR次席代表が参加した。今後、右枠組みでは投資・通商分野での二国間関係を深化・強化するための作業計画につき両国で合意した。TIFAの枠組みでは、農業分野を含めた通商・投資の自由化、衛生・植物検疫、通商に関する技術的障害、知的財産権、通商・投資に影響を及ぼす規則問題、情報通信技術、サービス貿易、政府調達等が扱われる。次回会合は今年末に予定されている。
●要人往来
(1)3月7日、Kisliak露副外務大臣が来訪し、実効的な安保理を目指す改革推進の必要性及び平和構築委員会の重要性、特に食肉分野での二国間経済関係強化等につきガルガノ外相他外務省幹部と会談した。
(2)3月9、10日、ブッシュ米大統領が中南米外遊の一環として来訪した。
(3)3月16日 ガルガノ外相がチリを訪問し、チリ社会党と関係のあるINSTITUTOIGUALDAD及びPOLICY NETWORK主催のセミナー「グローバリゼーションと福祉国家:新しい社会モデルを目指して」に出席した。
(4)3月16日―20日 アストリ経済財務大臣がIDB年次総会出席のためグアテマラを往訪、7500万ドルの生産性向上のためのプロジェクトに署名を行った。
(5)3月25日、対ウルグアイ投資の可能性を探るため、フルラン伯開発商工相を筆頭とする経済ミッションが来訪し、通商・投資・インフラに関するワークショップに参加した。
(6)3月29日、NZのピータース外相が来訪し、ガルガノ外相と会談を行った。
(7)4月9-10日、バスケス大統領は経済ミッションを伴ってチリを訪問、バチェレ大統領と通商関係強化のための会談を行った。
(8)4月10日―13日、マルティネス国連代表部大使を筆頭とするアンゴラ外交団が来訪し、エレラ外務次官など外務省幹部と多分野における二国間関係を発展させる目的で会談を行った。
(9)4月13日、レケイホ・キューバ経済協力・外国投資副大臣他が来訪し、ガルガノ外相と会談した。
(10)4月16―17日、ベネズエラで行われた第1回南米エネルギー・サミットにニン・ノボア副大統領、ムヒカ農牧大臣、エレラ外務次官、ポンセ・デ・レオン工業エネルギー鉱業次官、アルコール燃料公社(ANCAP)幹部が出席した。
(11)4月19―20日、レプラ工業エネルギー鉱業大臣はアブレウ上院議員、オペルティALADI事務総長、他企業家等を伴い、スイスにて「メルコスールにおけるビジネスチャンス」セミナーに参加し、同地でラミーWTO事務総長との会談で農業補助金撤廃の必要性を訴えた他、国連産業発展機構により主催された代替エネルギーに関するセミナーにて講演を行った。
(12)4月28,29日、ベネズエラで行われた第5回ALBAサミットにボノミ労働大臣が参加した。