ウルグアイ内政・外交動向(2006年3月~4月)
●概要
内政・外交ともに、セルロース工場建設問題を巡る亜との対立への対応に終始した2ヶ月間であった。この間に、キルチネル亜大統領とバスケス大統領の会談が二度中止となり、これをもって両国大統領間の政治対話による解決の途は閉ざされた。
亜がハーグ国際司法裁判所への提訴に向け本格的に準備を行う一方、ウルグアイはメルコスールやOASなど地域機関の仲裁による解決をめざしたが、亜はあくまでも本件を二国間問題とし第三国や地域機関の介入を牽制している。
セルロース工場建設問題の悪化に伴い国内ではメルコスールに対する失望感が強まっており、メルコスール脱退あるいは準加盟国化を求める意見が野党から出てきている。また、バスケス大統領は南米諸国やメキシコを訪問し、ウルグアイの立場を説明したがパラグアイ以外からは明確な支持を得られていない。
●内政
(1)禁煙
3月1日、ラ米諸国としては初めて世界では5番目に、公共施設の屋内での喫煙が全面的に禁止となった。
(2)生殖保健に関する法案
3月6日、特定ケースの堕胎合法化を含む生殖保健に関する法案が8日の世界女性デーに国会に提出される件に関し、バスケス大統領は右法案が可決された場合は大統領拒否権を発動する旨表明した。右に対し、8日、政府主催の「国家機会と権利の平等計画」発表会場で女性団体が、国会では女性議員グループが大統領の発言に対し抗議した。バスケス大統領は、大統領拒否権に関する発言は自分ではなくニン・ノボア副大統領の発言であると弁明した。
(3)地方での閣僚会議
3月31日、サルト県(北部)で閣僚会議が開催され、効率化と生産性向上のための97の政策が発表された。
(4)元ウルグアイ将校のチリ引き渡し
4月17日、チリ人諜報員ベリオス氏がウルグアイで誘拐・殺害された件に関与した容疑で3名の元ウルグアイ軍将校がチリに引き渡された。
右に対し野党より反発が起こり、27日、ベルッティ国防大臣が下院において経緯を説明した。
●外交
(1)セルロース工場建設問題
3月11日、バスケス大統領はバチェレ・チリ大統領の就任式のためチリを訪問した際、キルチネル亜大統領と緊急会談し、ウルグアイはBotnia社及びENCE社に対し環境への影響調査のため最長90日間の工場建設工事停止を求める一方、亜側は環境団体に対し国境の橋梁封鎖解除を求め、更に2回の首脳会合によって政治解決をめざす旨が話し合われた。
しかし、3月29日に予定された首脳会談は、ウルグアイ側が用意した共同宣言案に亜側が納得せず延期され、4月4日に予定された会談も直前にBotnia社が工事停止を最長10日とする旨を発表したため中止となった。
首脳会合開催失敗により二国間による政治的解決は実質的に頓挫した。その後、ウルグアイはメルコスール特別共同審議会の開催を要求しメルコスール域内での解決を試みたが、亜は同問題をあくまでも二国間問題であるとし、他国の仲裁を拒みつつハーグ国際司法裁判所への提訴の準備を進めた。ウルグアイのメルコスール特別共同審議会開催の申請は、議長国亜から返答がないまま、伯が同問題は二国間問題と表明したことで実質的に却下された。
メルコスール等の地域機関や周辺諸国の仲裁による政治的解決は望めない状況で、ハーグ国際司法裁判所で争う以外に同問題の解決はない状況となり、両国間関係は益々溝が深まっている。同時に、ウルグアイ国内ではメルコスール域内大国の小国に対する配慮の欠如及びメルコスールの機能不全に対する批判の声が野党を中心に高まっている。
また、バスケス大統領は、南米各国(ボリビア、ベネズエラ、伯、パラグアイ)及びメキシコを訪れ、同問題に関する各国の支持を求めたが、これまでのところ、パラグアイ以外に明確にウルグアイ支持を表明している国はない。
(2)要人往来
(イ)3月11日、バスケス大統領はバチェレ大統領の就任式出席のため、チリを訪問し、ライス米国務長官等と会談した。また、キルチネル亜大統領とセルロース工場建設問題につき話し合った。
(ロ)3月12~13日、バスケス大統領はボリビアを訪問しモラレス大統領と会談した。ボリビア南部からパラグアイ及びウルグアイに天然ガスを供給するガスパイプライン建設のフィージビリティー調査を開始することで合意した。
(ハ)3月14~15日、バスケス大統領はベネズエラを訪問し、チャベス大統領と会談した。12の経済協力協定に調印した。
(ニ)3月16日、バスケス大統領は伯を訪問し、ルーラ大統領と会談した。
(ホ)3月17日、バスケス大統領はパラグアイを訪問しドゥアルテ大統領と会談した。
(ヘ)3月22日、バチェレ・チリ大統領が来訪し、バスケス大統領と会談した。
(ト)4月11日、ムニョス厚生大臣は、キューバとベネズエラの国際協力プロジェクト「奇跡のオペレーション(Operación Milagro)」によりキューバで眼科手術を受ける123人の患者に伴って、キューバを訪問した。
(チ)4月19日、バスケス大統領は、アスンシオン(パラグアイ)で開催された「エネルギー統合に関する首脳会合」に出席した。同会合には、ドゥアルテ・パラグアイ大統領及びモラレス・ボリビア大統領が出席し、チャベス・ベネズエラ大統領がゲストとして参加した。
(リ)4月23~24日、エレラ外務次官はキューバを訪問し、キューバとの間に4の二国間協定に署名した。
(ヌ)4月25~26日、レトマキ・フィンランド通商開発大臣が来訪し、フェルナンデス大統領府長官と会談し、Botnia社への支持を表明した。
(ル)4月26日~28日、バスケス大統領はメキシコを訪問し、フォックス大統領と会談した。