1.内政
●政府は2012年の年次教書を議会に送付した。
●コロラド党のヘルマン・カルドソが下院議長に就任した。
●Cifra社が世論調査結果を公表し、ムヒカ大統領の支持率は前回に引き続き回復した。政党支持率では引き続きFAと野党合計が国民の支持を二分している。
2.外交
●ムヒカ大統領はチャベス・ベネズエラ大統領の葬儀に出席した。
●アストリ副大統領はローマ法王就任式に出席した。
●アルマグロ外相は中米諸国を訪問したほか、OAS総会及び国連本部におけるフォークランド(マルビーナス)諸島問題に関する会合に出席した。
●桑山幹夫法政大学講師が外務省講師派遣事業でウルグアイを訪問し講演を行った。
3.社会
●Cifra社が犯罪被害に関するアンケート調査結果を公表し、34%が自宅又は自宅外で家族の一員が窃盗や強盗の被害にあったと回答している。
●マンフレド・ノワク元・国連拷問に関する特別報告官がウルグアイを訪問し、未決拘留者を同じ施設に収容していること等について懸念を表明した。
●マルコーニ地区等において警察による大規模捜索活動が実施されたほか、共和国治安部隊と国道警察の合同による検問活動が初めて実施された。
1.内政
(1)政府、議会及び与党FAの動向
ア 1日、政府は2012年の年次教書を議会に送付した。同教書は、堅実なマクロ経済運営を基盤とした各分野における政府の取り組みにつき説明しており、特に外交面では太平洋同盟へのオブザーバー参加、ベネズエラのメルコスール正式加盟等とともに、日本との投資協定交渉開始についても成果の一つとして言及されている。
イ 1日、ヘルマン・カルドソ(コロラド党/Vamos Uruguay)が下院議長に就任した。コロラド党の下院議長は2004年のホセ・アモリン・バジェ以来9年ぶり。
ウ 8日、選挙裁判所はベネガス前厚生相の大臣就任資格に関して、同氏が就任資格を満たしていなかったとの判断を下した。
エ 13日、ムヒカ大統領は、キント・ルカス元エクアドル外務副大臣(MPP)を外務省地域統合機関担当無任所大使に任命した。ウルグアイ人でありながらエクアドルの外務副大臣を務めた同氏は、帰国後、大統領府広報局長に就任予定であったが、表現の自由の制限を許容する発言を行い野党やメディアから強い反発があったことから、同ポスト就任が見送られていた。
オ 17日付各紙は、バスケス大統領が本年9月~10月頃に次期大統領選挙への立候補に関して立場を明らかにする旨述べたと報じた。
カ 21日、センディック燃料アルコールセメント公社(ANCAP)総裁は当地メディアへのインタビューにおいて、本年10月に現ポストを辞職し次期選挙に向けた政治キャンペーンを開始すると述べた。
(2)野党の動向
9日にフォークランド(マルビーナス)諸島で実施された住民投票に、国民党の下院議員二名がオブザーバーとして参加し物議を醸した。ウルグアイ政府はこれまで一貫してアルゼンチンによる同諸島統治権の主張を支持している。
(3)世論調査結果
13日、Cifra社がムヒカ大統領への評価及び支持政党に関する世論調査結果を公表し、ムヒカ大統領に対する評価は、前回調査時(昨年12月)から上昇し、「親しみを感じる」との回答が53%(+3ポイント)、「政策を評価する」との回答が47%(+7ポイント)となった。また、政党別の支持率は、FA42%、国民党25%、コロラド党16%、独立党1%等となった。
(4)軍政期の人権弾圧問題
ア 5日、アルゼンチン法廷において、軍政期の所謂「コンドル作戦」による人権弾圧に対する裁判が開始された。今回の裁判においては、ウルグアイのマヌエル・コルデーロ退役大佐も11件の罪に関して起訴されている。
イ 11日、アゲレ陸軍総司令官が、軍人及び退役軍人の会員制クラブであるセントロ・ミリタルを脱退すると発表した。護憲派軍人であり軍政期に収監されていた父のペドロ・アゲレ退役将軍が、軍政期における護憲派軍人たちの動向を綴った本を出版し、これに対して軍や退役軍人の一部から誹謗・中傷があったことが脱退の理由であるとしている。
ウ 17日、駐チリ・スウェーデン大使として1973年の軍事クーデター後にウルグアイ人約50人を含む約1300人をスウェーデンに亡命させ、「南米のシンドラー」とも称される故ハラルド・エデルスタム氏の功績を称える式典が開催され、ムヒカ大統領らが出席した。
(5)その他
英エコノミスト誌が2012年版デモクラシー・インデックスを公表し、ウルグアイはラテンアメリカでトップ(全体では165カ国中18位)となった。
2.外交
(1)ムヒカ大統領のチャベス・ベネズエラ大統領葬儀出席
6日、ムヒカ大統領はベネズエラを訪問し、チャベス同国大統領の葬儀に出席した。今次訪問にはトポランスキー上院議員(ムヒカ大統領夫人)及びアルマグロ外相も同行した。
(2)アストリ副大統領のローマ法王就任式出席
19日、アストリ副大統領はバチカンを訪問し、ローマ法王就任式にウルグアイ政府代表として出席した。
(3)アルマグロ外相の中米・北米訪問
ア 14日~16日、アルマグロ外相はグアテマラを訪問し、ペレス・モリーナ同国大統領を表敬し、メルコスール議長国として、本年6月にウルグアイにおいて開催されるメルコスール首脳会合に招待した。また、カレラ同国外相と会談し、メルコスール・中米統合機構(SICA)FTA交渉開始を提案した。
イ 18日、アルマグロ外相はエルサルバドルを訪問し、マルティネス同国外相と会談した。両外相はエルサルバドル・ウルグアイ二国間委員会第1回会合及び二国間技術協力委員会第3回会合の実施に向け双方が準備を進めることを確認した。
ウ 19日、ニカラグアを訪問したアルマグロ外相は、オルテガ同国大統領を表敬し、メルコスール議長国として本年6月にウルグアイにおいて開催されるメルコスール首脳会合に招待した。また、サントス同国外相と会談し、本年下半期に二国間合同委員会会合を開催することが決定されたほか、米州ボリバル同盟(ALBA)加盟国間決済メカニズムについて意見交換し、アルマグロ外相はウルグアイがALBA共通通貨制度「スクレ」への加入に関心がある旨述べた。
エ 20日、コスタリカを訪問したアルマグロ外相は、リバーマン同国大統領代理を表敬したほか、カスティージョ同国外相と会談し、本年下半期にモンテビデオにおいて、第2回二国間政策協議及び技術協力・科学技術協力に関する合同委員会第1回会合を開催することで合意した。また、米州人権研究所(IIDH)を訪問し、ピカド同研究所長と懇談した。
オ 22日、アルマグロ外相はワシントンで開催された米州機構(OAS)総会に出席した。
エ 25日、ニューヨークを訪問したアルマグロ外相は、ガスパール・ハイチ国連代表部大使と会談し、2010年ハイチ地震の復興義援金として347万7,770ドル(ウルグアイ国民一人当たり1ドルに相当)を寄付した。
カ 27日、国連本部において実施されたフォークランド(マルビーナス)諸島問題に関する潘基文国連事務総長との会合及び国連脱植民地化特別委員会との会合が実施され、アルマグロ外相はメルコスール議長国代表として、ティメルマン・アルゼンチン外相、パリージャ・キューバ外相(CELAC代表)及びベラウン・ペルー外務副大臣(UNASUR代表)とともに出席した。
(4)対ブラジルACE附属議定書への署名
11日、ブラジルとの経済補完協定(ACE 2)附属議定書への署名が行われた。同議定書は二国間通商委員会の創設を定めており、今後ラテンアメリカ統合連合(ALADI)による登録通報が終われば両国において同時に発効することとなる。
(5)その他要人往来
ア 1日~4日、ジャン・トッド国際自動車連盟(FIA)会長がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領及びアルマグロ外相を表敬した。
イ 6日~7日、ボノミ内相は、メキシコシティーにおいて開催された国際フォーラム「治安、麻薬対策、武器規制」に出席し、政府が準備を進めている大麻合法化法案につき説明を行った。
ウ 13日、ロシアのサンクトペテルブルグ議会関係者がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を表敬した。貿易、代替エネルギー開発、造船、教育、テクノロジー等に関するワーキンググループ創設を進めることで合意した。
(6)対国際機関関係
ア 11日~15日、ウィーンで第56会期国連麻薬委員会が開催され、カネパ大統領府副長官が出席し、政府が準備を進めている大麻合法化法案につき説明を行った。
イ 13日、ブレンタ労働社会保障相はジュネーブのILO本部で現在議会審議中の若年層雇用プログラムについて報告した。
(7)桑山幹夫法政大学講師の講演会
6日~9日、桑山幹夫法政大学講師(元・国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)国際貿易・地域統合課長)が外務省講師派遣事業でウルグアイを訪問し、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)本部及びウルグアイ商業サービス協会で講演を行った。
3.社会
(1)治安
ア 2012年の犯罪被害に関するCifra社のアンケート調査結果によれば、全国の回答者のうち34%(前年比6%増)が、自宅又は自宅外で家族の一員が何らかの財産犯(窃盗や強盗)の被害にあったと回答している。また、モンテビデオでは43%(前年比8%増)、他県では26%という結果になっている。
イ 2009年にウルグアイの刑務所環境の調査を行ったマンフレド・ノワク元・国連拷問に関する特別報告官が再訪し、ウルグアイの刑務所環境をアフリカと同等であると批判するとともに、判決の決まっていない者を同じ施設に収容していることについて懸念を表明した。現在、9700人が刑務所に収容されており、うち60%が未決拘留者となっているが、検察関係者は、無罪となるのは収容者の1%に過ぎないとして現状を正当化している。
ウ 3月下旬、マルコーニ地区、ボーロ地区、チャカリタ・デ・ロス・パドレス地区及びセロ地区において、警察による大規模捜索活動が実施され、17人を逮捕、車両41台等を押収した。また、共和国治安部隊と国道警察の合同による検問活動も初めて実施された。