(2)外交
●11日に発生した東日本大震災を受け、「ム」大統領自ら在ウルグアイ日本大使館を訪問の上、弔問、記帳した他、各閣僚及び上下両院が被災者に対し黙祷や弔意表明を行った。
●15日、「ム」大統領及びアルマグロ外相は、Muaqqat駐亜パレスチナ大使とモンテビデオにおいて会談し、ウルグアイによるパレスチナ国家の承認を正式に発表した。
●30日、チャベス・ベネズエラ大統領がウルグアイを訪問し、「ム」大統領と会談、通信衛星システム(ベネズエラ所有)の共同使用やウルグアイ燃料・アルコール・セメント公社とベネズエラ石油公社間のオリノコ油田での共同開発合意等7つの合意書に署名した。
●31日、政府は、東日本大震災に対するウルグアイの援助物資として、コンビーフ缶約2000キロを日本へ向けて発送した。
2.内政
(1)政府の動き
ア 1日、新政権発足1周年に際し、ムヒカ大統領は年次報告書を議会に提出した。年次報告書では、教育、経済、インフラ整備、エネルギー、住居、治安面での成果を評価した他、外交面ではブラジルやアルゼンチンなど域内諸国との外交を評価した。
イ 1日、アストリ副大統領は政府代表として一般教書演説を行い、最も評価される成果として5.4%の失業率、8%のGDP成長率、重要課題(教育、インフラ整備、住居、治安)への予算配分増額等を挙げ、今後の優先政策として質の高い教育や治安強化を掲げた。
ウ 19日、失効法の無効化法案の可決に向け、与党拡大戦線(FA)党は党大会を開催、賛成票を投じることを党決定とした。
エ 30日、「ム」大統領は、バスケス前大統領時に創設され、2010年7月に初めて任命した大統領直属の国家情報局コーディネーターについて、その職務の曖昧さや各省との協力の困難等を理由とし、コーディネーターのグレゴリ氏を解任すると発表した。しかし、同日夜、大統領府はこれを撤回、4月一杯は存続を認めることとし、今後この職を特に疑問視している野党側との協議を行い、処遇を決めると発表した。
(2)軍政期の人権侵害関連
ア 軍政期の拷問等人権侵害の罪で服役中の軍人の釈放を求め、覆面をした3名が最高裁判事を脅迫している様子を撮影したビデオが存在すると報じられた。「ム」大統領以外誰もビデオを見ていないことから、野党はその存在自体を疑問視し、政府を厳しく追及した。
イ 24日、軍政時における37名の失踪者に関わる重大殺人罪で2007年より25年の刑に服しているグレゴリオ・アルバレス元大統領(1981-1985)が、1973年、軍参謀長の任務中にツパマロスメンバーの殺害に関与していたとして、刑事裁判所第一審法廷により新たに有罪を宣告された。
(3)内務関係
ア コロラド党は少年法改正(少年法適用の年齢の18歳から16歳への引き下げ)を可能とするための国民投票を2014年に実施するため、署名活動を開始したが、与党及びその他野党国民党及び独立党は、署名活動が次期大統領選へ向けた票集めであるとして反対している。
イ 11日、ボノミ内務大臣はモンテビデオ市内セロ・ノルテ地区、ボーロ地区及びマルコーニ地区の3地区は、機動隊などの組織された部隊の援護なくして警察活動が行えない状況にあると言及。上記3地区では薬物密売組織の抗争事件が多発するなどしており、警察官が単独では地区内で活動できない状況が続いている。与党FA党のサラビア議員は、右「レッドゾーン」がもはや看過できない状態にあるとし、ハイチ派遣経験等を有する軍人約1,000名を投入し、治安維持を行わせることを提案したが、「ム」大統領は「市内に警察官が活動できない地域はない」としてこれを否定している。
ウ 下旬、ボノミ内務大臣は、民間企業により運営されている刑務所視察のため米国を訪問した。
(4)労働関係
ア 賃金審議会で交渉中のグループが集中するガソリンスタンド、スーパー及びガス関係等サービス産業におけるストや職場占拠が全国各地で散見された。
イ 国際労働機関(ILO)は、ウルグアイの団体交渉権に関する法令改正に向けた状況調査のため、ウルグアイへミッション派遣を決定。今後、政府はミッション受け入れに関し閣議で協議する由。
(5)その他
ア 5日、米州人権裁判所は、軍政時共産党員であったマリア・ヘルマンの失踪、及びウルグアイでのその後の調査の欠如や責任者に対する訴追がなかったことに関し、(ア)ウルグアイ政府に中断されていた本件調査を直ちに再開する、(イ)失効法が右調査の障害とならないように配慮する、(ウ)被害者家族への経済的補償、(エ)今後ウルグアイが上記判決を遵守しているか監督していくこと等の判決を下した。
イ 14日は公立中等教育校の始業式であったが、モンデビデオ県内では80%の教員がストに参加したため、通常の52%分の授業時間しか確保できなかった。
ウ 25日、FA党結成40周年を記念する式典に参加するため、ルーラ前伯大統領がウルグアイを訪問、「ム」大統領と両国間の政治的統合及び貿易に関し話し合い、その強化の重要性を確認した。
エ 27日、社会保障銀行の執行部メンバー選出のため全国一斉の選挙が実施され、労働者、経営者及び年金生活者代表となる3名のメンバーが選出された。「ム」大統領も選挙に駆けつけたが、大統領就任前に保険に加入していなかった期間があったため名簿に名前が記載されておらず投票できなかった。
オ 28日、コロラド党ボルダベリー上院議員は同党党首を辞任し、パスクエット上院議員が新たな党首となった。今後は1年交代のローテーション制とする由。
カ 「ム」大統領の支持率が53%となり、対前月比で5ポイント上昇した。
3.外交
(1)対日外交
ア 11日に発生した東日本大震災を受け、「ム」大統領自ら在ウルグアイ日本大使館を訪問の上、弔問、記帳した他、各閣僚及び上下両院が被災者に対し黙祷や弔意表明を行った。
イ 16日、ウルグアイ外務省は東日本大震災における在日ウルグアイ人の状況に対応するため、緊急援助本部を設置した旨発表した。
ウ 31日、ウルグアイ政府は、東日本大震災に対するウルグアイの援助物資として、コンビーフ缶約2000キロを日本へ向けて送付した。
(2)対アルゼンチン関係
ア 16日、亜において第2回亜・ウルグアイ二国間閣僚会合が開催され、アルマグロ外相他計9名の閣僚が出席。主な合意内容は、ラ・プラタ川のマルティン・ガルシア運河浚渫の入札を実施することが決定されたこと、これまで問題となっていた亜による輸入規制の問題に関し、二国間フォローアップ委員会が毎週チェックを行い、認可期限の30日に遅延がないようにすることで一致した。
イ また、上記会合では、第一回サッカーワールドカップの開催から100周年となる2030年のワールドカップを協同で誘致するための二国間委員会を設置することが決定された。
(3)対ブラジル関係
14日、「ム」大統領、「ア」外相、ロレンソ経済財務相及びクレイメルマン工業エネルギー鉱業相はサンパウロを訪問し、同州工業連盟が開催したセミナーに参加、企業家らとも会合を持ち、ラ米統一やウルグアイへの投資を呼びかけた。また、「ム」大統領は両国間の貿易を現地通貨で行うという提案を積極的に行った。
(4)対米国関係
ア 16日、フランク・モラ米国防次官補西半球担当がウルグアイを訪問し、ロサディージャ国防大臣と会合、国防分野における戦略的対話の開始に合意した旨発表した。
イ ウルグアイ軍の国連平和維持活動の促進のため、米国政府は24台のジープを寄贈した。
(5)対中東関係
ア 15日、「ム」大統領及び「ア」外相は、Muaqqat駐亜パレスチナ大使とモンテビデオにおいて会見し、ウルグアイによるパレスチナ国家の承認を正式に発表した。
イ 24日、イランの人権状況に関する人権理事会での特別報告者マンデート創設決議において、国連は上記決議案を採択したが、ウルグアイ政府は棄権票を投じた。
ウ 29日、ウルグアイとパレスチナとの外交関係を樹立した。
エ 29日及び30日、ウルグアイでイスラエル・パレスチナ和平支援に係る国連地域会議が開催され、「ア」外相、タランコ国連政務局次長、Dialloパレスチナ不可侵権実行委員会会長、Erakatパレスチナ解放機構(PLO)執行委員会メンバー等が参加し、中東地域における暴力への懸念を表明、双方が改めて交渉のテーブルにつき和平プロセスを再開することが必要であるとする最終声明が発出された。
オ 31日、「ム」大統領はPLO代表団と会合し、ウルグアイによるパレスチナ国家の承認に謝意を表するアッバス議長の書簡を手交した。
(6)その他
ア 1日、ウルグアイとドミニカ国は駐国連代表部大使を介して外交関係を樹立した。
イ 14日、ウルグアイとナウル共和国は駐国連代表部大使を介して外交関係を樹立した。
ウ 21日、コンデ外務次官は、国連安保理がリビア攻撃を容認したことに対し、ウルグアイ政府は本件について議論は行わず、政府として特別な声明も発出しないと言及した。
エ 23日、ウルグアイとエチオピアは駐国連代表部大使を介して外交関係を樹立した。
オ 21~23日、「ア」外相は英国を訪問し、ヘーグ英国外相と会合、二国間及び地域関係の他、フォークランド諸島に関して協議した。ヘーグ外相は、二国間貿易の拡大やウルグアイでの英国による投資の活性化に意欲を見せた。「ア」外相及びウルグアイ企業家からなる代表団一行は、Barclay銀行関係者との間でウルグアイでのビジネスチャンスに関する会合を開催した。
カ 24日、「ア」外相はアイルランドを訪問し、ギルモア副首相兼外務・通商大臣と面会、二国間及び地域間関係、その他国際状況やメルコスール・EU間のFTA交渉について協議した。特に農業や気候変動、教育、スポーツ、科学技術、二重課税防止等の課題について今後何らかの合意に向けて協議していくことを確認した。
キ 30日、チャベス・ベネズエラ大統領がウルグアイを訪問し、「ム」大統領と会談、通信衛星システム「シモン・ボリバル」(ベネズエラ所有)の共同使用やウルグアイ燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)とベネズエラ石油公社(PDVSA)間のオリノコ油田での共同開発合意の他、科学技術分野、農業分野、ガラス生産に関する技術協力など、7つの合意書に署名した。
4.社会
(1)東日本大震災
ア 3月現在、ウルグアイにおいて日本への渡航禁止情報等は特に発出されなかった。
イ ウルグアイサッカー協会は、当地プロ1部リーグ、2部リーグ他全ての試合開始前に、東北地方太平洋沖地震の被災者に対して黙祷を捧げるよう通達を出し、12日及び13日に開催された試合で黙祷が捧げられた。
ウ 23日、震災後初めて在日ウルグアイ人家族4名がウルグアイ政府の支援を受けて帰国した。
エ 24日、ウルグアイ剣道協会の発案の元、在ウルグアイ日本大使館前にて、被災者激励のための集会が行われ、激しい風と霧雨が降る中、20名ほどが被災者のための黙祷を行った。
オ 30日、フアン・ソリージャ・デ・サン・マルティン小学校の児童150名と保護者約20名が在ウルグアイ日本大使館を訪問し、本件地震被災者を激励するため、「日本、応援しています("Japon te abarazamos (Japan, We hug you)")」と銘打ったたれ幕をかけ、参加者全員で手をつないで大使館を取り囲み「抱擁」する等の行事を行った。
(2)治安
ア 4日、内務省統計局が2010年の国内における犯罪発生数を公表、窃盗事件は前年比0.8%と微増であったが、強盗事件発生数は前年比21.4%と大幅増加した。
イ 9日、国内最大収容数を誇るコムカル刑務所で収容されていた男性が、対立していた囚人グループの男に銃で射殺された。後に刑務所内で行われた所持品検査では多数の刃物等が発見された。刑務所委員会のガルセ代表は監視を行う刑務所職員内に賄賂などの不正が横行しているとして軍隊による出入場時の検査を行うなど抜本的な改革を訴えている。
ウ 12日、ポシートス地区の銀行で武装した2人組による銀行強盗事件が発生、23日にはプンタ・カレータス地区の銀行に同じく武装した2人組が押し入り、警備員に暴行を加え、現金を奪い逃走するという銀行強盗事件が発生。両銀行とも内務省が行う222サービス(内務省が斡旋する警察官の時間外業務)から民間の警備会社へ警備を移行したばかりで、本年1月から内務省が同サービスを順次縮小している事に対する不安が高まっている。
エ 28日、ポシートス地区の路上で駐車中の車内に居た男性が3人組の男達に車ごと拉致され、ATM機から現金を引き降ろすよう要求、現金を奪われる短時間誘拐事件が発生した。被害者の男性は数時間後に解放されたものの、警察では今後、連続発生する可能性があるとして、警戒を強めている。
オ 29日、マルビン・ヌエボ地区のスーパー内にある両替商店舗に対する2人組による強盗事件が発生。同店では現金回収のため、武装した警備員が警戒に当たっていたが、犯人らは銃を数発発砲し、現金1万ペソを奪い逃走した。なお、負傷者はなかった。
(3)22~25日、ソリアノ県農村協会が主催したExpoactivaにムヒカ大統領も出席。280企業、600農業ブランドが参加し、農業機械などの展示が行われ、5日間で2万人が参加した。
(4)国家統計局は、2010年の極貧率が1.1%(対前年比0.5%減)、貧困率が12.6%(対前年比2.1%減)に改善されたことを発表した。
(5)厚生省は、2010年の乳児死亡率は1,000乳児中7.71人となり、ラ米ではキューバとチリに次いで低い指数となったことを発表した。