定期報告(ウルグアイ内政・外交:2013年2月)
【概要】
1.内政
●ベネガス厚生相が辞任し、後任にムニスASSE第二種医療機関局長が就任した。
●最高裁が、軍政期の数多くの人権弾圧事件を担当するモタ刑事裁判所判事の民事裁判所への異動を突如発表し、政界や人権保護団体等を巻き込んで大きな騒動に発展した。
●最高裁は、軍政期の人権弾圧に関する免責法の所謂無効化法に関し、その一部を違憲とする判決を出した。
2.外交
●センディックANCAP総裁が日本外務省の招聘により訪日した。
●アルマグロ外相は、キューバ、アンゴラ及び赤道ギニアを訪問した。
●ウルグアイは「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」選択議定書の寄託を行い、3カ月後に同議定書が発効することとなった。
3.社会
●INAUのコロニアベロ施設は定員を大きく上回る少年(約半数が14歳以下)を収容しており、脱走が相次いでいる。
●カーニバルのパレードが行われるバリオ・スール地区では治安が悪化傾向にある。
1.内政
(1)閣僚交代
19日、大臣就任資格を問われていたベネガス厚生相(共産党)が辞任し、25日に後任としてスサナ・ムニス保健サービス公社(ASSE)第二種医療機関局長(共産党)が就任した。
(2)政府、議会及び与党FAの動向
ア 4日、アルマグロ外相はエベル上院議員(国民党)により上院に召喚され、1月のムヒカ大統領のベネズエラ訪問につき説明を求められた。
イ 5日、FA党は結成42周年記念大会を開催した。バスケス前大統領が演説を行い、内部対立を克服し一致団結するよう呼びかけ、自身の大統領選立候補については明言しなかったものの、各紙とも立候補に向けて明確なリーダーシップを表明したと評価している。
ウ 8日、ボノミ内相はアモリン・バジェ上院議員(コロラド党/Vamos Uruguay)により上院に召喚され、治安問題(プンタ・デル・エステにおいて犯罪が増加しているとされる件、COMCAR刑務所において性的虐待があったとされる件等)について説明した。
(2)野党の動向
ア 18日、国民党のラカジェ・ポウ下院議員率いるAire Frescoとハビエル・ガルシア下院議員率いる同党Espacio 40が、次期大統領選挙党統一候補選出プロセスでの協力につき合意した。
イ 22日、国民党のエベル代表(Unidad Nacional)は、次期大統領選に立候補しないと発表し、今後はラカジェ・ポウ下院議員の立候補を全面的に支援していくと述べた。これにより、ラカジェ・ポウ下院議員がUnidad Nacionalの派閥候補として、ララニャガ上院議員(Alianza Nacional)と党統一候補を争うことがほぼ確実となった。
(3)軍政期の人権弾圧問題
ア 14日、最高裁は、2009年より軍政期の人権弾圧に関する事件を50件以上担当してきたマリアナ・モタ刑事裁判所判事の15日付での民事裁判所への異動を突如発表した。同判事は2011年5月の「沈黙の行進」(軍政期の逮捕行方不明者の家族会が主催して毎年5月にモンテビデオ市内で実施される行進)に参加したことから、職務遂行上中立ではないとして大きな波紋を呼んだ経緯があるが、今回の異動に関しては最高裁が理由を一切明らかにしなかったことから、政界、軍政期の逮捕行方不明者の家族会、人権保護団体らを巻き込んで大きな騒動に発展した。19日、下院憲法委員会は多数決で最高裁判事らに対して今回の異動理由を議会にて説明するよう求めることを可決したが、これを受けて最高裁は24日、議会における説明は行わず、異動理由を記載した書簡を議会に送付する旨決定した。
イ 24日、最高裁は、軍政期の人権弾圧に関する免責法の所謂無効化法に関し、その一部を違憲とする判決を出した。これにより、現在進展中のものも含め、軍政期の人権弾圧に関する訴追が認められなくなる可能性が出てきた。時期を同じくしてモタ判事の異動が発表されていたことから(上記1.(3)ア参照)、モンテビデオ市内で大規模な抗議集会が行われたほか、国連人権委員会や米州人権裁判所などからも軍政期の人権侵害に関する真相究明プロセスの頓挫を危惧する声が上がっている。
(4)その他
5日、ガルガノ元外相が癌のため死亡した(享年78歳)。FA結成にも参加した同氏は、社会党幹事長や上院議長を務めた後、バスケス政権の2005年から2008年に外相を務めた。
2.外交
(1)センディックANCAP総裁の訪日
4日~9日、センディック燃料アルコールセメント公社(ANCAP)総裁が日本外務省の招聘(戦略的実務者招聘)により訪日し、若林外務政務官他と会談した。
(2)アルマグロ外相のキューバ訪問
18日~20日、アルマグロ外相はキューバを訪問し、ラウル・カストロ同国国家評議会議長を表敬したほか、ブルーノ・ロドリゲス同国外相らと会談した。
(3)アルマグロ外相のアフリカ訪問
ア 20日~23日、アルマグロ外相は赤道ギニアのマラボで開催された第3回南米アフリカ首脳会合(ASA)に出席した。
イ 26日~27日、アルマグロ外相はアンゴラを訪問し、ドス・サントス同国大統領やシコティ同国外相らと会談した。今回の訪問には関連省庁幹部や民間企業代表も参加した。
(4)その他要人往来
ア 6日~8日、アゲレ農牧水産相は、ドイツのベルリンで開催されたフルーツ・ロジスティカ2013に出席した。今回の訪問には、約50人の民間代表も同行した。
イ 6日、インドのプラサド・ヴァーマ鉄鋼大臣がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領及びクレイメルマン工業エネルギー鉱業相と会談した。二国間通商・投資関係の強化が目的。鉄鋼分野における共同事業の可能性検討につき合意した。
ウ 6日、国連世界観光機関事務局長及び同米州センター代表がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領及びケチチアン観光スポーツ相を表敬した。
エ 18日、ブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州のタルソ・ジェンロ知事がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を表敬した。
オ 24日~26日、エクアドルのベロニカ・シオン工業競争力相がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を表敬した。
カ 26日、パラグアイ次期大統領選挙に立候補しているアニバル・カリージョ(Frente Guazú)がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領を表敬したほか、バスケス前大統領、シャビエルFA総裁らと会談した。
(5)対国際機関関係
5日、ウルグアイは「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(国際人権規約社会権規約(A規約))の選択議定書の寄託を行った。同議定書第18条は、10番目の批准書または加入書が寄託されてから3カ月後に効力を発する旨規定しており、今回ウルグアイが10番目の批准書寄託国となったため、3カ月後に同議定書が発効することとなった。
(6)その他
4日~6日、パリにおいてフィリップモリス社との間の投資紛争解決国際センター(ICSID)第一回仲裁手続きが開催され、カネパ大統領府副長官がウルグアイ政府団長を務めた。今次結果は5~6月に出る模様。
3.社会
(1)治安
ア ウルグアイ少年庁(INAU)のコロニアベロ施設では、定員360人に対し500人以上の少年を収容しており、脱走が相次いでいる。また、収容者の約半数は14歳以下の少年であり、その多くは強盗を犯した者となっている。
イ 昨年の殺人事件件数は、内務省発表では267件であるのに対し、コロラド党系のフンダプロ財団が289件と発表したため、ボノミ内相はフンダプロの統計は国民に無用の不安を抱かせているとして、同財団を批判した。
ウ 毎年2月にカーニバルのパレードが行われるバリオ・スール地区では治安が悪化傾向にあり、インドの外交官が14歳の少年に銃で足を撃たれる事件が発生しているほか、オランダ人、カナダ人、日本人が強盗等の被害にあっている。