2 内政
(1)政府及び議会の動き
ア 13日,11月に上院で修正が加えられた自動車登録税の全国統一化法案が下院で可決された。1月1日からこの法令に基づく税収が開始されることとなる。
イ 15日,農村不動産税(ICIR)(当館注:2千ヘクタール以上5千ヘクタール未満の土地に8ドル/ha、5千ヘクタール以上1万ヘクタール未満に12ドル/ha、1万ヘクタール以上に16ドル/haの3段階に分け税収する農地税)が上院の財務委員会で可決され,28日,上院本会議で可決された。
ウ 19日,11月に改正された臓器移植法に関し,下院保健委員会で再検討,与党の多数派閥は,本件をより国民の同意を得るものとする修正を加えるため,2012年3月に新たに審議することを決定。
エ 26日,大統領府は鉄道公社(AFE)構造改革の一環として,AFEと国家開発公社(CND)間に貨物のための株式会社(それぞれ51%と49%の株式を保有)を創設する政令を承認。
オ 28日,上院財務委員会は,消費税(2%)削減法案を可決,与党拡大戦線(FA)党MPP派が要求していた極貧層への税還付を手厚くすることについても,法案の修正を認めることとし,本会議での審議は2012年3月に行うこととなった。
カ 29日,上院は,ベネズエラとの間で10年間の効力を有すエネルギー保障協定を締結。石油,ガス,電力,再生可能エネルギーやエネルギー節減をカバーする行動指針等がたてられた。
(2)教育関係
ア 5日,教育省と国家教育局(ANEP)及び共和国大学は,94頁にわたる教育行動計画を提出。小学校から中学校へ進学する学力不足の児童のためのクラス開講やProLee(読解の強化),ProRazona(数学の強化)等の教育プログラムの強化,全日制学校の増加及び授業時間の増加等が提案された。
イ モンテビデオ県教職員組合(ADES)は,現在,中央教育審議会(CODICEN)が実施するProMejora(当館注:政府主導の一元的教育制度から,各中等教育校に権限や決定権を委譲しながら,各校の判断に任せて学校毎に異なるさまざまな現場での問題に対応していくもの)等様々なプログラムに反対するため,11月に引き続き24時間スト・職場占拠を実行した。
(3)労働関係
ア 6日,公的セクター銀行労組(AEBU)は,2010年12月に切れた労働協約に関する総会を実施,AEBU急進派はAEBU穏健与党派が政府と事前合意に至っていた内容を反故にし,7日から断続的にストを実行,小切手のクリアリング作業を停止した他,ATM利用等に影響がでた。
(4)軍政期の犯罪関係
ア 5日,アゲレ陸軍最高司令官は,10月に陸軍第14師団において軍政期に教員でありかつ共産党系の雑誌を執筆していたフリオ・カストロ氏の遺骨が発見されたことを軍として正式に発表。軍部は行方不明者の捜索に方向転換を行い,軍は軍部内の者による犯罪や殺人を認めず,隠蔽しない旨異例の発言をした。
イ 23日,政府は軍政期に行方不明となった人達の遺骨の捜索作業を実施する共和国大学調査グループと労働契約を1年延長,2013年2月まで捜索作業を継続することに合意した。
(5)その他
アンケート調査会社Cifra社によると,2010年末から今年6月にかけて39%と落ち込んだ「ム」大統領の支持率は現在53%。政権運営については,48%が支持,29%が不支持であった。
3 外交
(1)対アルゼンチン関係
11日,「ム」大統領は,トポランスキー夫人(上院議員)とともに,再選したフェルナンデス大統領の大統領就任式に出席した。
(2)対ブラジル関係
13~15日,ウルグアイにおいて,第58回ウルグアイ・ブラジル国境合同委員会会議が開催され,国境の見直しや次回の軍事演習の日程調整,メリン湖での二国間水路開発のための詳細確認等が行われた。
(3)対英国関係
ア ウルグアイ政府は,イラン人学生によって行われた在イラン英国大使館への侵入及び破壊行為に対し,11月30日付で,非難声明を発出した。
イ フォークランド(マルビーナス)諸島紛争問題に関し,21日,アルマグロ外相はミュレー駐ウルグアイ英大使と会合を持ち,同外相は正式に,「フォークランドの旗」を掲げる船舶に関しては,ウルグアイへの入港を認めないとするウルグアイ及びメルコスール諸国の決定につき通報した。また,23日と28日,「ア」外相はヘーグ英国外相と電話会談を実施。ウルグアイによって承認されている国・地域のものであれば,どの旗を掲げていてもウルグアイの港に入ることを許可することが明らかにされ,この船舶の目的地が,フォークランド(マルビーナス)であることも可能であること,逆に,アルゼンチンとの連帯から,フォークランド(マルビーナス)を目的地とする英国の軍艦の入港は認められないことを確認した。
(4)対中東関係
ア 3~5日,ユダヤ人コミュニティ相互扶助組織であるブナイ・ブリスがウルグアイにて世界会議を開催し,政府関係者,フレイ・チリ元大統領及びヤアロン・イスラエル副首相兼戦略担当相等が出席。中東情勢がラ米のユダヤ人コミュニティに対し有する脅威と挑戦等について,講演が行われた。
イ 6~9日,イスラエル外務省代表団がウルグアイを訪問,これまでの二国間関係,政治経済及び国際・地域金融状況の意見交換が行われた他,ウルグアイによるパレスチナの国家承認やイランの原子力政策,アラブの春等についても協議された。
(5)対国際機関関係
ア 5日,ベネズエラで開催されたラ米カリブ首脳会合(CALC)に「ム」大統領が出席した。
イ 6日,「ア」外相は,ジュネーブで開催された国際移住機関(IOM)60周年記念式典に出席。移民の流れの傾向や,現代における挑戦,同機関の役割について検討された。同外相は,国際規準に対応したウルグアイの移住枠組みについて強調した。
ウ 7日,「ア」外相は,ジュネーブで開催された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民条約締結60周年を記念した閣僚会議に出席,国際社会の優先課題は,難民等強制移動発生の原因と闘うことでなければならないと発言した。
エ 14~17日,コンデ外務次官は,ジュネーブで開催された世界貿易機関(WTO)第8回閣僚級会議に出席。同次官は,持続可能な経済成長と貧困対策等,国際政治の安定化を促進するために,ウルグアイがWTO原則に基づき,貿易に貢献している重要性を強調した。
オ 15日,経済協力機構(OECD)は,ウルグアイが新たに7国と税務情報交換協定を締結したことから((6)ア参照),租税関連での透明性の分野で非協力的な国々が並ぶグレーリストからウルグアイを削除することを決定,ホワイト・リストへ移行することを承認した。
カ 19~20日,第42回メルコスール共同市場審議会及び首脳会合がモンテビデオで開催され,加盟各国大統領及びコレア・エクアドル大統領の他,域外諸国の外相等も出席した。今般の首脳会合では,ベネズエラ加入の承認に関する議論,二重課税防止及び情報交換協定の域内統一化の他,エクアドルによるメルコスール加盟の要求が提示された。
キ 20日,メルコスール-パレスチナ間の自由貿易協定が署名された。
ク 20日,ウルグアイは欧州連合(EU)と,対中小企業政策,産業政策,原料に関する政策及び貿易セクターにおける障壁排除等の4分野で協力していくことに合意した。
ケ 国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に参加するウルグアイ兵士1,100名が人員交代をした。なお,100名の人員削減が既に決定されている。
(6)その他
ア 1日,クルシアル(Courtial)在外フランス人担当大臣は,ウルグアイを訪問,ロレンソ経済財務大臣と会合をもち,2010年に締結された両国間租税協力交換合意を踏まえ,二国間関係がより密接となり良好であることを確認した。
イ 5日,「ア」外相は,アフガニスタンとドイツの共催でボンで開催されたアフガニスタン国際会議に出席。同国の状況分析,復興,和解,発展に対し国際社会が行う支援について議論が行われた。
ウ 14日,フィンランドとの間で二重課税防止及び所得税・財産税における脱税を防止するための協定に署名。加えて,デンマーク,ノルウェー,スウェーデン,アイスランド,フェロー諸島及びグリーンランド等北欧諸国との財務情報交換のための協定にも署名がなされたことで,ウルグアイが署名した二重課税防止及び租税情報交換のための協定の数は18となった。
エ 26日,中国開発銀行代表団がウルグアイを訪問,ウルグアイにおける中国企業の投資を容易にすることを目的とし,大統領府等で会合を行った。
オ チリ南部で起きた山火事に対し,政府はチリ政府の要請を受け26名からなる消防団を派遣した。
3 社会
(1)治安
ア 1日,先月29日に発生したカラスコ地区の民家において,自分の娘を不審者と誤認して父親が射殺する事件を受け,約4,000人が参加して治安改善を求めるデモが行われた。デモの参加者からは,「警察の人員,車両は制限されており,警察に責任はない」,「軍政時代のように,もっと人を拘束すべきである」等の主張が行われた。これに対し,ボノミ内相は,「警察が何もできない状態にはない。パトロールを強化して治安対策にあたる」等と発言した。
イ 5日,ガソリンスタンドの経営者が信号待ちで交差点に停止中,何者かに射殺される事件が発生した。この事件を受け,9日,組合に加盟しているガソリンスタンド経営者は,「被害額が少ない事件は被害届けを出していない。ガソリンスタンドに対する事件は1日1件発生している」等と主張して,治安改善を求めるストを行った。さらに,燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)事務所前で,警備費用の負担を求めるデモが行われた。
ウ 19日,警察創設182周年記念式典に出席したボノミ内相は,「治安の悪化は,当国国民にとって最も懸念されている問題であるが,他方で,各党が治安問題を利用しようとしており,これによって,警察組織が弱体化していく」等と発言して野党を批判した。
(2)その他
ア 9日,ロチャ県で400~700ヘクタールに及ぶ範囲で山火事が発生,消火に1週間程度かかった。
イ 13日,労働社会保障省のロビーで爆発が発生,少なくとも20名がけが、うち5名は重傷を負った。同省市民対策センターの建設が急がれていたため,労働者が急ピッチで建設をしていたことが原因と見られている。