ウルグアイ内政・外交:2009年11月~12月
1.概要
(1)内政
○10月25日に実施された大統領・上下両院議員選挙の結果が発表され、11月29日に大統領選決選投票を実施することが確定した。コロラド党のバジェ元大統領が10月31日にモンテビデオ郊外で発見されたおよそ700の武器を保存する武器庫の所有者がツパマロス(都市ゲリラ)と関係を持っていると指摘し、MPP派出身のムヒカ候補との関連性を指摘したことや、両院においてFA党が過半数を勝ち取ったことも影響し、決選投票では、ネガティブキャンペーンや政治の不安定化を嫌うウルグアイ国民の意向を反映し、最終的にFA党ムヒカ候補が大統領として当選した。
○11月、ウルグアイ各地における洪水の影響が懸念された。12月中旬までに全土でおよそ7,000人が被災し、死者3名。
○12月29日、ムヒカ次期大統領は、バスケス大統領から政権移行のための引き継ぎ書を受け取るとともに、次期閣僚メンバーを発表。また、次期政権における最重要政治課題に関する超党派協議会の立ち上げを行った。
(2)外交
○12月中旬、バスケス大統領が実務訪問賓客として日本を公式訪問。
○メルコスール共同市場審議会(CMC)大臣級会合及び首脳会合が、議長国ウルグアイのモンテビデオにて開催され、次期議長国はアルゼンチンに引き継がれた。
○ムヒカ次期大統領は、アルゼンチン、ベネズエラ、パラグアイ、各国大統領とメルコスール共同市場審議会(CMC)首脳会合の機会を捉え会談し、次期政権大統領としての外交活動を開始した。
2.内政
(1)大統領・両院議員選挙最終結果等発表
11月1日、当国選挙裁判所は、10月25日に実施された大統領・両院議員選挙の結果を発表し、11月29日の大統領決選投票実施が確定した旨発表した。
選挙結果は以下の通り:
・大統領選挙
FA党: 47.96%
国民党: 29.07%
コロラド党: 17.02%
独立党: 2.49%
アサンブレア・ポプラル党: 0.67%
白票: 0.63%
無効票: 1.17%
観察票: 0.63%
・上下両院選挙
上院議席(全30議席)
〔FA党〕
MPP: 6名
セレグニ戦線: 5名
社会党: 2名
CAP-L: 1名
共産党: 1名
ベルティエンテ・アルティギスタ: 1名
(注:セレグニ戦線=アサンブレア・ウルグアイ+アリアンサ・プログレシスタ+ヌエボ・エスパシオ)
〔国民党〕
Unidad Nacional:5名
アリアンサ・ナシオナル:4名
〔コロラド党〕
バモス・ウルグアイ: 3名
Propuesta Batllista: 2名
(注:Propuesta Batllista=フォロ・バジスタ+リスタ15)
・下院議席数
下院議席(全99議席)に関しては、FA党50議席、コロラド党17議席。
・国民投票結果
在外郵便投票:37.42%(否決)
失効法無効化:47.98%(否決)
(2)大統領選決選投票に向けた各党の動き
(イ)与党拡大戦線(FA)党
・11月15日、ソリアノ県メルセデスにおいて演説を行ったムヒカ大統領候補は、次期政権を担うことになった場合、行政府による主導で中絶合法化法案を策定するつもりはなく、立法府がイニシアティブを取って国民投票の形で国民が決定するのが望ましいと語った。また、子育てのための助成金を出すことで出産を促すことができるであろうとの考えを述べた。一方土地所有に関連しては、一個人や企業による土地購入には限度をもうけるべきだと考えているとはしながらも、国全体としてコンセンサスが取れない限りは土地所有を制限するような法律は策定するつもりはないと語った。
(ロ)野党国民党
・11月5日、ラカジェ国民党大統領候補及びララニャガ同副大統領候補は、ライバルであるFA党ムヒカ大統領候補の提案を受け入れ、正副大統領候補2対2で討論会を開くことに賛意を表明した。
・11月9日、正副大統領候補4名での公開ディベートに向けて、FA党・国民党両陣営選挙キャンペーン担当者等が話し合いを行ったが、FA党代表団は、今般モンテビデオ県郊外で見つかった武器庫に関して国民党がムヒカ候補との関連性を示唆する等“汚い”戦略に出ていることを受け、ディベートでも本件が国民党によって活用されることが予測されるなどとして公開ディベートを取りやめる旨国民党代表等に通達した。
(3)大統領選決選投票
11月29日FA党対国民党で大統領選挙決選投票が実施された。大統領選決選投票の選挙裁判所による最終正式結果は以下の通りで、FA党のムヒカ大統領候補とアストリ副大統領候補が当選した。
・選挙裁判所公表最終得票率結果
拡大戦線(FA)党: 52.39%(得票数:1,197,638)
国民党: 43.51%(得票数: 994,510)
白票: 2.32%( 票数: 53,100)
無効票: 1.75%( 票数: 40,103)
無効観察票: 0.03%( 票数: 607)
投票数合計: 2,285,958票(全有権者の89.18%)
(4)バスケス大統領等の人気度
11月9日、Equipos Mori社はアンケート調査結果をテレビ番組にて公表した。これによれば、バスケス大統領の人気度は71%(アンケート調査が開始されて以来25年間で最高の数値)。他方、ムヒカは本年初め56%の人気度があったが、現在は51%。アストリは本年初めの47%から59%へと人気度は上がり調子。ラカジェは本年初め37%で若干上昇傾向にあったが、現在37%に戻っている。ララニャガの人気度は1月40%から現在35%へと数値を落としている。コロラド党ではボルダベリーが1月の22%から40%へと人気度を伸ばしている。独立党ミエレスは1月には10%だったのが現在は20%。スアスナバル同社代表によれば、国民党候補2人の選挙キャンペーン戦略失敗が人気度減退につながっていると説明。
(5)バスケス大統領の政権運営への支持率
12月21日、FACTUM社がテレビ番組の中で公表したところによれば、11月下旬に行われた調査で、バスケス大統領の政権運営を支持すると答えた国民は80%であった。
(6)プラン・カルダレスの行方
大統領選挙決選投票の翌日である11月30日、バスケス大統領はプラン・カルダレスにANTEL(ウルグアイ電話公社)だけではなく民間企業の参入を可能とする大統領令を発した。これは、ANTEL独占を不服とした民間企業からの反発を受けてのものであったが、この大統領令に関して、ムヒカ次期大統領はじめ、トポランスキー上院議員(ムヒカ次期大統領夫人)、FA党政治執行部等FA党内各所、及びANTEL労働組合、全国労働総同盟(Pit-Cnt)等から、任期満了を目前にした大統領がこのような大事な決断をすべきではないとして強い反発の声が上がった。(注:プラン・カルダレスとは、国内全世帯に一本のケーブルにて固定電話線、ケーブルテレビ(デジタルテレビ)、ブロードバンドの三種の通信網所謂「トリプルプレイ」を普及する試みであり、2008年にバスケス大統領が提唱した計画。8月28日、パイロットプランとしてフローレス県トリニダードで1,000家庭で同計画が導入された。この計画はプラン・セイバル(主に公立小学生にラップトップパソコンを無償で提供しITに強い国民を育成するための政策)と並び現政権での重要政策と位置づけられてきた。)
(7)行政改革に向けたムヒカ次期大統領の働きかけ
12月1日、ムヒカ次期大統領はPit-Cnt(全国労働総同盟)本部を訪れ1時間半に渡って同同盟幹部等と会談し、行政改革(行政サービスの効率化、公務員の質向上等)のためPit-Cntの行政改革推進委員会への参加を求めた。ムヒカ次期大統領は、Pit-Cnt及び労働者の協力なくして行政改革の成功は無いと発言している。
(8)ムヒカ次期大統領と野党との会合
12月4日、ムヒカ次期大統領は、ミエレス独立党代表及びラカジェ国民党代表とそれぞれ個別に決選投票後初めての会合を開いた。現時点では、ラカジェは会合の内容についてはマスコミには語らず、ミエレスは、野党の閣僚参加に関して未だ具体的な案をもっていないことが分かったとマスコミに語った。
(9)政権引き継ぎと次期政権閣僚人事
(イ)12月29日、ムヒカ次期大統領は、大統領府にてバスケス大統領から政権移行のための引き継ぎ書を受け取るとともに、次期政権における閣僚人事を正式に公表した。
(ロ)閣僚ポストは、10月25日の上下両院国会議員選挙に際する各派閥の得票数に応じ、4大臣はMPP派、3大臣をセレグニ戦線派、2大臣を社会党派、1大臣をベルティエンテ・アルティギスタ派、1大臣を共産党派、1大臣をCAP-L派、その他、農牧水産大臣をFA党に所属しつつも派閥無所属の者に割り振られた。
以下、12月29日時点での、2009年3月1日から就任が予定されている閣僚:
○大統領府長官:アルベルト・ブレチア(FA MPP派)
大統領府副長官:ディエゴ・カネパ (FA 所属不明)
○内務大臣:エドゥアルド・ボノミ(FA MPP派)
次官:ホルヘ・バスケス(FA 所属不明)
○外務大臣:ルイス・アルマグロ(FA MPP派)
次官:ロベルト・コンデ(FA 社会党派)
○経済財務大臣:フェルナンド・ロレンソ(FA ヌエボ・エスパシオ派/セレグニ戦線)
次官:ペドロ・ブオノモ(FA MPP派)
○国防大臣:ルイス・ロサディージャ(FA CAP-L派)
次官:ガブリエル・カステラ(FA MPP派)
○教育文化大臣: リカルド・エルリッチ(FA MPP派)
次官:マリア・シモン(FA 無所属)
○運輸公共事業大臣:エンリケ・ピンタド(FA アサンブレア・ウルグアイ派/セレグニ戦線)
次官:パブロ・ヘンタ(無所属)
○工業エネルギー鉱業大臣:ロベルト・クレイメルマン(FA 社会党派)
次官:エドゥガルド・オルトニョ(FA ベルティエンテ・アルティギスタ派)
○労働社会保障大臣:エドゥアルド・ブレンタ(FA ベルティエンテ・アルティギスタ派)
次官:ネルソン・ルスタノ (FA MPP派)
○厚生大臣:ダニエル・オレスケル(FA 社会党派)
次官:ホルヘ・ベネガス(FA 共産党派)
○農牧水産大臣:タバレ・アゲレ(FA 無所属)
次官:ダニエル・ガリン(FA MPP派)
○住宅土地整備環境大臣:グラシエラ・ムスレラ(FA MPP派)
次官:ホルヘ・パトロネ(FA セレグニ戦線)
○観光スポーツ大臣:エクトル・レスカノ(FA アリアンサ・プログレシスタ派/セレグニ戦線)
次官:リリアン・ケチチアン(FA アリアンサ・プログレシスタ派/セレグニ戦線)
○社会開発大臣:アナ・オリベラ(FA 共産党派)
次官:ラウロ・メレンデス(FA MPP派)
(ハ)今次閣僚人事に関しては、ヌエボ・エスパシオ派(1名の大臣の就任が予定されていた)が、同派閥を率いるラファエル・ミケリーニ上院議員の運輸公共事業大臣就任を主張していたものの、国会議員選挙(10月25日)での得票数に応じた大臣割り振りを受け、セレグニ戦線(3人の大臣を予定)から経済財務大臣としてヌエボ・エスパシオ派のロレンソ前マクロ経済局長(アストリ次期副大統領と近い)の任命内定がなされていたため、ヌエボ・エスパシオ派のラファエル・ミケリーニ氏の大臣任命は認められなかった。
(ニ)アガシ前農牧水産大臣(MPP派)は、ムヒカ次期大統領から教育文化大臣ポストをオファーされたものの「自分よりも適任者が居るはずである」としてこれを断った。また、エルリッチ現モンテビデオ県知事(MPP派)は2010年5月の県知事選挙に再出馬する意向を示していたが、マルティネス前工業エネルギー鉱業大臣(社会党派)がモンテビデオ県知事選に出馬する意向を示したことを受け、ムヒカ次期大統領からの次期教育文化大臣のオファーを受け入れた。
(10)次期政権における最重要政治課題に関する超党派協議会の立ち上げ
12月29日、ムヒカ次期大統領は、ウルグアイの重要政治課題4分野(教育、治安、環境、エネルギー)に関して協議、協調する超党派協議会の立ち上げを公表した。1月以降各分野で会合が開かれる予定。
(11)国会における地方分権化法修正法案審議
2009年9月2日、バスケス大統領のイニシアティブで国会に提出された地方分権化法が成立し、全土でおよそ200の市が制定されることになり、2010年5月の地方選挙にて県知事・県議会議員を選出する際、新たに市長及び市議会議員も選出すると規定した。しかし、12月23日、上院は、制度面の不備や技術的観点(何をもって無効票とするのか等)、予算の問題などを受けて、種々の修正、即ち、県当局が存在する都市全てに市長と市議会を設置する予定(およそ200の都市)であったが、右を取りやめ、2010年5月の地方選挙の時点では、人口5,000人以上の都市(およそ100の町)のみを対象とすることとした。また、県知事・県議会選挙と市長・市議会議員選挙の投票用紙を別々にすることを可能とする(県知事と市長それぞれを違う党の人間に投票することが可能となる)等の修正を加えた上で承認し、同法案は下院へ回された。
3.外交
(1)フェルナンデス外務次官のロシア訪問
11月2日、ロシア訪問中のフェルナンデス外務次官は、リャブコフ外務次官と会談し、二国間政治経済関係及び両国の関心のある地域問題を議論した他、ロシア側からは、ウルグアイの海底資源開発及び鉄道に対する投資への関心並びに小型航空機及びバスの生産におけるパートナーシップ構築への関心が表明された。また、同会談においては、スポーツに関する覚え書きが署名され、ウルグアイは2014年のソチ・オリンピック前にロシアと右覚え書きに署名した最初のラ米国となった。
(2)在ウルグアイ大使等の内政干渉疑惑
大統領・上下両院議員選挙に際してFA党が拠点としていたNHホテルに、10月25日、在ウルグアイ亜、ベネズエラ、キューバの各大使が来ていたのは内政干渉に当たるとする動議が11月4日トゥロボ下院議員(国民党)より提起され、下院常設委員会にバス外相を召喚し、事情説明を求めることとなった。
(3)ガルシア経済財務大臣の訪韓
11月9日~12日、ガルシア経済財務大臣は、韓国政府の招待に応じ、経済ミッションを引き連れ同国を訪問し、「韓国・ラ米・カリブ協力のためのハイレベル・フォーラム」に出席した。同フォーラムはラ米及びカリブ諸国との関係強化を目的とした韓国政府によるイニシアティブであり、アジア地域の重要閣僚らも参加した。また、ガルシア大臣は現代自動車工場を訪問した他、韓国輸入業者連盟とも会合を持った。
ガルシア大臣は韓国外交通商次官(通商担当)と面会した際、韓国との二重課税防止条約締結への強い関心を示した。同大臣によれば、右条約は葡、エクアドル、独、印、チリ、及び中国と現在交渉しているものと同じ内容になる由。また、同大臣はメルコスール加盟国として、ウルグアイはメルコスールと韓国のFTA締結に強い関心を持っている旨述べた。
(4)マーシャル諸島との外交関係樹立
12月2日、当国はマーシャル諸島との外交関係を樹立した。
(5)モレノ米州開発銀行(IDB)総裁のウルグアイ訪問
12月2日~4日、モレノ米州開発銀行(IDB)総裁がプンタ・デル・エステにて開催された「企業の社会的責務会議」に出席するためにウルグアイを訪問。3日にはムヒカ、アストリ両氏及びアルマグロ次期外相と会談し、次期政権におけるIDBからの援助計画等について話し合った。4日には、シモン教育文化大臣、アストリ次期副大統領、イグレシアス・イベロアメリカ事務局長等出席のもと、IDB主催「ラテンアメリカにおける教育の展望」と題したセミナーが開かれた。
(6)環境改善を目的としたEU・メルコスール無償資金援助協定締結
12月5日、メルコスール及びEUは、当地にて2,670万ドルに及ぶ無償資金援助協力協定を締結した。同協定は、Econormas-Mercosur(エコ規則-メルコスール)と呼ばれ、持続可能な生産及び消費の実施、環境保護強化、衛生状況改善等を通じてメルコスール各国の発展を支援するもの。なお、同協定では、EU側が1,200万ユーロ、メルコスール側が600万ユーロを負担する。
(7)第38回メルコスール共同市場審議会(CMC)大臣級会合及び首脳会合
(イ)12月7日、当地にて第38回メルコスール共同市場審議会大臣級会合が実施され、2004年から停滞しているEUとの交渉を、2010年上半期、スペインがEU議長国となることを契機として推進することを決議した。
なお、ペンディングであった対外共通関税二重課税の撤廃は、合意に向け若干の進展は見られたものの、結局見送られた。関税コードも議論が続けられることとなった。他方、ウルグアイが提案していた来年で期限の切れる一時的輸入制度(Admision temporaria)については、2016年までの同制度継続が認められた。
政府関係筋によれば、ガルシア「ウ」経済財務大臣は、ウルグアイと伯を結ぶ送電関連設備設置に関連して、亜政府がメルコスール構造的格差是正基金(FOCEM)の適用(9,300万米ドル)を承認しないことにつき、ブドゥー亜経済財政大臣に対して個人的な働きかけを行った。右に際し、ブドゥー大臣が亜政府ハイレベルによる対応を約束したため、ウルグアイ政府は同会合では本件を持ち出すことはなかった。
(ロ)12月8日、当地にて第38回メルコスール共同市場審議会(CMC)首脳会合が開催され、フェルナンデス亜大統領、ルーラ伯大統領、ルゴ・パラグアイ大統領、バスケス・ウルグアイ大統領(議長国)、チャベス・ベネズエラ大統領、サントス・コロンビア副大統領、フェルナンデス・チリ外相、エスピノサ墨外相等が出席。本会合には、当国からムヒカ次期大統領及びアストリ次期副大統領も出席した。
メルコスールの主要な課題である対外共通関税の二重課税撤廃、域内格差是正等では際立った進展は見られなかったものの、2016年まで一時的輸入制度の継続が認められた。また、同会合では、2010年5月にスペイン・マドリッドにて開催される予定の次期メルコスール・EU会合にて話し合うべきテーマが議題として取り上げられた。また、2010年上半期メルコスール議長国となる亜のフェルナンデス大統領は、EUとの対話再開に向けた働きかけを開始する旨語った。本会合で、ルゴ「パ」大統領は、域内小国として域内経済不均衡是正を求めるスピーチを行ったが、通常同様の主張をするウルグアイ政府からは本件に関して何の発言も行われなかった。他方、ルーラ伯大統領は、対外共通関税の二重課税撤廃、格差是正、中小企業支援基金促進、米ドル依存と同通貨の危機的状況に対処するため域内現地通貨を利用した貿易決済システムの構築等の必要性を訴えた。
メルコスールCMC首脳会合閉幕に際し、バスケス「ウ」大統領はメルコスール正式加盟国(亜、伯、パラグアイ、ウルグアイ)及びベネズエラによる共同声明として、ホンジュラスにおけるクーデターは、ホンジュラス国民の人権及び自由に対する深刻な侵害であり受け入れがたいと非難しつつ、民主的に選出されたセラヤ「ホ」大統領が同職に復帰していない状況では、メルコスール加盟各国大統領は、11月29日に実施された選挙を認めることは出来ない旨の声明文を読み上げている。
今次会合を以て、議長国はウルグアイから亜に引き継がれた。
(8)ムヒカ次期大統領とフェルナンデス亜大統領の会談
12月7日夜、ムヒカ次期大統領は、メルコスール共同市場審議会(CMC)首脳会合出席のためモンテビデオを訪問中のフェルナンデス亜大統領と宿泊するホテルで約20分間会談した(タイアナ亜外相同席)。この席ではセルロース工場問題についての話し合いは行われなかった模様。
(9)ムヒカ次期大統領とチャベス「ベ」大統領の会談
12月8日、メルコスール共同市場審議会(CMC)首脳会合の後、モンテビデオ県セロ地区にあるエンビドゥリオ社工場(注:ガラス容器等を生産しており、同社は2005年ベネズエラから400万ドルの融資を受けセロ地区に工場を建設し再生した会社。)を共に訪問した両氏は、同日夜夕食会を開き会談した。なお、アストリ「ウ」次期副大統領、次期「ウ」政府閣僚就任が確実視されるメンバー等、ブロベット「ウ」FA党代表、バスケス大統領府副長官、センディック「ウ」工業エネルギー鉱業大臣、及びマドゥーロ「ベ」外相も同席した。
(10)ムヒカ次期大統領のルゴ・パラグアイ大統領との会談
12月8日、メルコスール首脳会合出席のためウルグアイを訪問していたルゴ・パラグアイ大統領は、ムヒカ次期ウルグアイ大統領と会談した。会談にはアルマグロ次期ウルグアイ外相、ララ外務副大臣等らが同席し、地域統合が域内の多くの国民に資するよう、パラグアイ・ウルグアイ両国がURUPABOL(地域連合体ウルグアイ・パラグアイ・ボリビア)の枠組みを活用しつつ、河川輸送の可能性を広げる等の政策協調を継続すべきとの認識で一致した。
(11)バスケス大統領一行の日本公式訪問(実務訪問賓客)
12月11日~15日バスケス大統領一行は日本を公式訪問した。
この訪問の中で14日午前には、日・ウルグアイ外相会談が執り行われ、同会談では、両外相間で、再生可能エネルギー協力の一環として、環境プログラム無償資金協力案件「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」(およそ820万ドル)に関する交換公文の署名式が行われた。
会談の中は、国連PKO等におけるウルグアイの貢献、気候変動問題、代替エネルギー問題、原子力の平和的利用、両国の通商関係深化、ウルグアイ産生鮮牛肉の日本への輸出解禁問題、両国の経済協力関係等につき話し合いが行われた。
また、同日午後には、鳩山総理が、バスケス大統領と会談し(バス外務大臣、ガルシア経済財務大臣、センディック工業エネルギー鉱業大臣、エステベス在京大使、ロドリゲス儀典長、ルオンゴ大統領補佐官同席)、両国の良好な友好関係、日本からの医療設備等援助、再生可能エネルギー分野に関する日本からの支援、地球環境、貿易・投資関係、原子力の平和利用、国連平和維持活動・安保理改革等、有意義な話し合いが行われた。この他、14日、バスケス大統領及び同夫人は、天皇皇后両陛下に謁見した。
14日記者会見したバスケス大統領は、南米全体が日伯デジタルテレビ方式を採用するのであれば、ウルグアイも欧州方式から日伯方式への変更を検討せざるを得ないだろうと発言した。
(12)ムヒカ次期政権における外交政策
12月29日、大統領府において次期政権への引き継ぎ書が手交された。引き継ぎ書では、次期政権始動から6か月間の外交重要案件として、(イ)ICJ(国際司法裁判所)の見解に基づいたフライベントス市と亜グアレグアイチュ市を結ぶ国際橋梁封鎖解除に向けた交渉、(ロ)OPP(予算企画庁)と連携したウルグアイ国際協力庁の創設、(ハ)各在外公館長の交替、(ニ)メルコスール対外共通関税二重課税撤廃、(ホ)予算法案(2011~2015年)の策定が挙げられた。
その一方、外交政策の課題及び目標として(ヘ)外務省の機構改革(在外公館の開設及び閉鎖等の再構築)、(ト)メルコスールと欧州連合の自由貿易協定交渉の再開、(チ)FOCEM(メルコスール構造的格差是正基金)におけるウルグアイ主導のプロジェクトのスムーズな実施、(リ)ドーハラウンドの再活性化、(ヌ)当国の国連安保理非常任理事国(2016年~2017年)選挙立候補支持要請推進が挙げられた。
4.要人往来
(1)来訪
・インスルサOAS事務総長
12月9日、ムヒカ次期大統領及びアストリ次期副大統領は、モンテビデオ訪問中のインスルサOAS事務総長と会談し、ムヒカ等が大統領に就任した後に目指す政策等につき協議した模様。
(2)往訪
(イ)FAO主催食料安全保障サミット
11月16日~18日、ニン・ノボア副大統領は、ローマで開催されたFAOのLa Cumbre Mundial sobre Seguridad Alimentaria「FAO主催食料安全保障サミット」に出席した。
(ロ)第19回イベロアメリカ・サミット
11月29日~12月1日、ニン・ノボア副大統領及びバス外相は、リスボンにて開催されたイベロアメリカ・サミットに出席した。
(ハ)WTO公式閣僚会議
11月30日~12月2日、フェルナンデス外務次官がジュネーブを訪問し、WTOの公式閣僚会議に出席した。同次官は、ドーハ・ラウンドでのこれまでの交渉内容をベースにした通商自由化を支持する旨述べた。
(ニ)第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)
12月7日~18日、コラチェ住宅土地整備環境大臣及びトレス同省環境局長等がコペンハーゲンで開始された第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)に出席した。
5.その他
(1)イスラエルによるメルコスールとのFTA批准
11月9日、イスラエル議会は、2007年12月にメルコスールと締結したFTAを批准した。同FTAは批准を了した2国間で順次発効することになっており、既に批准済みのウルグアイとの間でFTAが発効する運びとなった。同批准文書がパラグアイ外務省に寄託されたことが公表されてから30日で両国間FTAは発効する。
(2)カラスコ国際空港新ターミナル運用開始
12月29日、カラスコ国際空港新ターミナルの運用が開始された。