ウルグアイ内政・外交:11月
1 概要
(1)内政及び社会
●上旬,ムヒカ大統領が,政府が作成していた消費税(IVA)2%削減法案について,低所得者層には5%削減とし,特に極貧層に税還付を手厚くするよう要請したことで,与党内論争が再燃した。
●28日,モンテビデオ県教職員組合(ADES)は,政府が進める国家教育プログラム(当館注:政府主導の教育制度から,各中等教育校に権限や決定権を委譲しながら,各校の判断に任せて現場での問題に対応していくもの)に反対するため授業を放棄し,影響がでた。
●29日,高級住宅街であるカラスコ地区の民家において,自分の娘を不審者と誤認して父親が射殺する事件が発生,その後政府の治安対策に対するデモ行進が行われた。
(2)外交
●メルコスール‐パレスチナ間で10月に自由貿易協定締結が決定された旨発表された。
●3~4日,フランスで開催されたG20首脳会談閉会宣言において,サルコジ・フランス大統領がウルグアイをタックス・ヘイブンと名指しし,国際社会から隔絶される旨発言したことが問題となり,ウルグアイ政府は駐仏ウルグアイ大使を召還した他,フランス政府に対し抗議した。
●8~9日,「ム」大統領は,アルマグロ外相やウルグアイ企業関係者とブラジルのリオ・グランデ・デル・スル州を訪問し,政治,文化,経済・貿易の3分野を軸に関係会合に出席した。
●15~17日,「ム」大統領はメキシコを訪問し,カルデロン大統領と会談した。
2 内政
(1)政府及び議会の動き
ア 1日,自動車登録税の全国統一化法案が下院を通過,30日,上院で修正が加えられた上で裁可された。12月10日前後に再度下院で審議され,可決される見通し。
イ 16日,政府は国内の臓器ドナーの少なさを受け,ドナー数を増やすため臓器移植法改正法案を可決。国民は予めドナーになることを拒否する意志を表明していない限り,死後自動的にドナーとなる。
ウ 26日,1年を締めくくる与党拡大戦線(FA)党総会が開催され,2012年5月にFA党党首を選出する党内選挙を実施することが決定された。
エ 上旬,「ム」大統領は,政府が作成していた消費税(IVA)2%削減法案について,低所得者層には5%削減とし,特に極貧層に税還付を手厚くするよう要請。この法案送付前に,政府の経済閣僚グループと対立したが,同大統領とアストリ副大統領は会合を開き,オリジナル法案での提出及び2012年3月の法案可決に合意した。
(2)教育関係
現在,政府がすすめる国家教育改革プログラムの一つであるProMejora(当館注:政府主導の一元的教育制度から,各中等教育校に権限や決定権を委譲しながら,各校の判断に任せて学校毎に異なるさまざまな現場での問題に対応していくもの)の実施を巡り,中等教育審議会が反対したため,政府と中央教育審議会(CODICEN)は数度にわたる協議を行った。「ム」大統領の後押しもあり,CODICENはProMejoraの続行を決定した。
(3)労働争議関係
ア 2日,金属労協(Untmra)と金属商工会議所は10月中旬より始まった労働争議に関し,6ヶ月毎の賃上げや平和条項を含む新たな労働協約策定で合意し,23日に及んだストが終結した。
イ 上旬,銀行労組(AEBU)は,2010年12月に切れた労働協定の更新について,未だに政府との合意がないことから,AEBU急進派は10万以上にのぼる小切手の決裁を停止した。
ウ 団体交渉権に関する法令に関し,7日,8月に国際労働機関(ILO)のミッションがウルグアイを視察してから初めて政労使会合が開催された。
エ 16~27日,パイサンドゥ県Costa de Oro社のブルーベリー輸出が20名の労組員によるピケでストップ。この結果,40万トン,約10万ドルの損失がでた。
オ 28日,モンテビデオ県教職員組合(ADES)に所属する50名の教員は,政府が進めるProMejoraに反対し,授業を放棄,右プログラム関係の会合場所を16時間にわたり占拠したが,警察による強制退去前に平和的に自主退去した。
カ 29日,交通労組(Unott)は,現在17ペソであるバス料金の年一律1ペソ引き上げを要求する部分的ストを行い,労働社会保障省と経営者側との協議場で抗議活動を行った。
(4)内務省関係
ア 1日,モンテビデオ県警本部長,フロリダ県警本部長等警察幹部等15名の人事異動が発表された。ボノミ内相は,警察の構造改革に反対する幹部は昇進させないと明言。前モンテビデオ県警本部長は,県警と内務省の統計業務の一部を統合すること等に反対していた。
イ 2日,ディアス検事は,2004年~2007年,モンテビデオ第4刑事裁判所判事を務め,現在高等裁判所の判事を務めるダマスコ判事を計7件,総額55万ドルに及ぶ公金横領の疑いで起訴。ダマスコ判事は1日,ウルグアイ判事協会会長職を辞任,2日の起訴前に最高裁に対し判事としての職務辞任を表明したが、最高裁から承諾されなかった。
ウ 6日,ボノミ内務大臣は,刑務所の改善のため1県につき刑務官107人を募集することを発表した。
(5)その他
ア 24日,アラナ前県知事他2名が関与するとされたモンテビデオ・カジノを巡る汚職問題について,刑事裁判所判事は,85頁にわたる裁定において,3名は本件について無知であったとし,起訴要件を却下した。
イ 国際NGOトランスパレンシー・インターナショナルによると,ウルグアイは非汚職度ランキングで25位と発表された。
3 外交
(1)対アルゼンチン関係
中旬,ロレンソ経済財務相はブエノスアイレスを訪問,アルゼンチン当局と租税関連協力のための協定締結の必要性について合意,今後技術者会合により,内容を決定する由。
(2)対ブラジル関係
ア 8~9日,「ム」大統領は,アルマグロ外相やウルグアイ企業関係者とリオ・グランデ・デル・スル州を訪問し,政治,文化,経済・貿易の3分野を軸とする関係会合に出席した。政治面においては,ヘンロ州知事と会合し,国境を共有する地域協力関係について確認。文化面においては,ウルグアイ独立運動開始200周年を記念して,タンゴやカンドンベ等文化普及が図られた。また,経済・貿易面では,ウルグアイ企業関係者がブラジル商業連盟(FECOMERCIO)のビジネス交渉に参加した。
イ 19日,「ム」大統領は非公式でルセーフ大統領とブラジル・バイアで会談。国際経済危機,二国間貿易関係,及びG20閉会宣言におけるサルコジ大統領のウルグアイを批判する発言((6)ア参照)に関する反響等につき協議した。なお,ルセーフ大統領はサルコジ大統領の発言につき,ウルグアイを支持する旨発表した。
ウ 21日,アルマグロ外相はブラジルを訪問し,パトリオッタ・ブラジル外相と会合,二国間関係の更なる進展を確認した他,二国間プロジェクトやメルコスール日程について協議した。
エ ウルグアイ及びパラグアイとの国境での密輸対策及び麻薬密売組織に対する諜報活動のため,ブラジル政府は3,000人の軍人を新たに配置し,幹線道路のコントロールを決定した。
(3)対メキシコ関係
15~17日,「ム」大統領はメキシコを訪問し,カルデロン大統領と会談,二国間の主要テーマにつき意見交換を行い,政治対話,経済・貿易関係,科学技術協力及び文化教育協力を緊密化させる用意がある旨確認した。また,アルマグロ外相はエスピノサ外相と会合し,農業,保健,環境,教育,社会開発,科学技術分野において,ウルグアイ国際協力庁(AUCI)とメキシコ国際開発協力庁(AMEXCID)間で協力していく旨確認した。
(4)対米関係
10月31日~4日,アゲレ農牧水産大臣は,貿易投資枠組み協定(TIFA)第4回会合のため,貿易交渉団と共にミネソタ州及びペンシルベニア州を訪問し,貿易,環境,科学技術協力における便宜提供につき協議した他,ウルグアイが輸出する柑橘類や牛肉に対する米国市場開放に関しても引き続き協議した。
(5)対国際機関関係
ア メルコスール‐パレスチナ間で10月に自由貿易協定締結が決定された旨発表された。
イ 8~10日,ウルグアイもパイロット国として参加する国連システム一貫性(Delivering as One)に関する第4回ハイレベル政府間会合がモンテビデオで開催され,その他7ヵ国のパイロット国やドナー国等が出席した。ウルグアイの関心は、中進国定義の見直しに基づく,経済協力受益の継続にある模様。
ウ 25日,南米諸国連合(UNASUR)経済閣僚及び中銀総裁がブエノスアイレスで会合,欧州経済危機の影響を回避するための討論が行われた。
エ ウルグアイは,ピンタード-リベラ間(425km)を結ぶ鉄道網再生のため,メルコスール構造格差是正基金(FOCEM)と5,000万ドルに上る融資協定を締結した。
(6)その他
ア 3~4日,フランスで開催されたG20首脳会談閉会宣言において,サルコジ・フランス大統領がウルグアイをタックス・ヘイブンと名指しし,国際社会から隔絶される旨発言したことが問題となり,ウルグアイは駐仏ウルグアイ大使を召還した他,フランス政府に対し抗議した。
イ 10日,オルテガ・ニカラグア大統領の再選に対し,「ム」大統領は祝電を送った。
ウ 11日,上院はハーグ条約(認証不要条約)への加盟を批准した。
エ 29日,ウルグアイ外務省は国際パレスチナ連帯の日を祝して,ウルグアイ・パレスチナ支援委員会が行う様々な活動に参加し,持続的和平,公正,自由を訴えた。
オ 30日,ウルグアイ政府は,韓国との間で二重課税防止及び所得税・財産税における脱税を防止するための協定に署名した。
4 社会
ア 16日,コムカル刑務所において,受刑者4人が,倉庫近くでトラックで作業していた刑務官を人質にとり脱走を図ったところ,刑務官らと銃撃戦になり,犯人のうち,1人が死亡,1人が負傷し,2人が逮捕された。同人らは拳銃を所持しており,警察は入手経路を捜査。その他の刑務所でも,受刑者に銃が渡っているのが確認されている。
イ 29日,高級住宅街であるカラスコ地区の民家において,自分の娘を不審者と誤認して父親が射殺する事件が発生。同人は20日前に強盗の被害に遭っており,そのことが,射殺した要因と考えられる。これを受け,地域住民などにより治安改善を求めるデモが実施された。