ウルグアイ内政・外交:10月
1 概要
(1)内政
●軍政期の重大な犯罪に対する時効が11月1日で成立することを受け、FA党は本件に係る重大な犯罪を人道に対する罪(Lesa Humanidad)とみなし、時効なしとする法案を議会に提出。
●10日から金属労協(Untmra)は、賃上げや時短及び皆勤手当の支給を要求するストを開始し、多大な影響をもたらした。
(2)外交
●5日、日本とウルグアイの外交関係開設90周年記念切手の発表式がウルグアイ外務省において開催された。
●5日、アルマグロ外相はティメルマン亜外相とローマで会合し、マルティン・ガルシア浚渫の国際入札開始手続きに関し協議、本件の進展を互いに約束した。
●12~20日までムヒカ大統領はアルマグロ外相、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相、ポルト経済財務次官等政府関係者及び企業関係者と共にスウェーデン、ノルウェー、ドイツ、ベルギーを歴訪した。
(3)社会
●下旬より百日咳が流行し、これまでに4名の死亡が確認された。
2 内政
(1)議会及び政府の動き
ア 10日、独立開始200周年記念式典が開催され、約30万人が参加した。
イ 13日、バスケス前大統領は、公の場で対亜関係に悪影響を与えかねない発言(注:亜との国境、ウルグアイ川沿いに建設されたセルロース工場を巡り、両国関係が悪化していた時期、軍事衝突の可能性も排除できず、これを米国に伝えていたとされる点)を行ったことから、与党拡大戦線(FA)党内より非難が殺到。同前大統領は時宜を得ない発言であったと謝罪、政界から一時的に離れることをブロベットFA党党首に伝達した。
ウ 軍政期に軍人や警官によって引き起こされた重大な犯罪に対する時効が11月1日で成立することを受け、FA党は重大な犯罪を人道に対する罪(Lesa Humanidad)とみなし、時効なしとする法案を議会に提出。25日、FA党議員のみの投票によりこの法案が上院を通過、26日には下院で可決され、27日、法令は公布された。
エ 31日、退役するロサレス陸軍最高司令官に代わり、アゲレ将軍が同職務に就任。
(2)労働関係
ア 4日、公共保健サービス公社(ASSE)の職員組合は、9月28日より行われていた賃上げや職員増員を求めるストを1週間ぶりに解除した。
イ 6~8日、全国労働総同盟(Pit-Cnt)は2年に一度の総会を開催。9日には41名で構成される幹部会メンバーの選出が行われ、共産党派は18、政府寄りのArticulacion派は13、公務員労組(COFE)は9議席を獲得した。なお、カスティージョ連盟長は、連盟長職を継続することが決まった。
ウ 金属労協(Untmra)は、賃上げや時短及び皆勤手当の支給を要求するストを10日から開始。10日には約5,000人が参加し、全国62企業(経営者側によれば20企業)を職場占拠、間接的には約2,000人が影響を受けた。また、このストは燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)の推進する精油所建設にも多大な影響を与え、1日につき10万ドルの損失をもたらした。争議中、経営者側及び非労組組合員等は、Untmraによるストに対する差止め申立を続けて行い、17日、ある事案は占拠解除を命じる判定が下されたことから、Untmraは職場占拠からピケに移行。25日には、建設労組(Sunca)とともに15,000人が集結した部分的ゼネストを実施し行進を行った。31日には政労使間で開催されていた三者協議において、労働争議の終結に向けた事前合意を締結した。
エ 12日、アラティリ社(鉄鉱石採掘)に反対する数百人の農業従事者が、地方からモンテビデオへの本件2度目の抗議行進を行った他、同社労組の一部は削岩場の一部を占拠し、13日、ストを実施した。
(3)厚生関係
2日、「ム」大統領はASSEの資金運営問題に懸念を抱き、ブッチノASSE最高責任者及びゴンザレス同経理局長等幹部2名を解任、資金運営に関し、不正の有無を調査するための外部監査を依頼した。
(4)軍政期の犯罪
21日、カネロネス県トレドにある陸軍第14師団において、男性と見られる人骨やその他遺留品等が発見された。発見場所は、1976年に失踪した20名以上のウルグアイ人が埋葬された場所として指定されていた。
(5)教育関係
ア 英国QSコンサルタント社の発表したラ米大学ランキングによると、上位200大学中、ウルグアイ共和国大学は94位であった。
イ 11日、上院は公的教育システムに対し、45日以内に教育改革のためのアジェンダを作成し、「ム」大統領に提出することを要求する声明を発出した。
3 外交
(1)対日関係
5日、日本とウルグアイの外交関係開設90周年記念切手の発表式がウルグアイ外務省において開催された。この記念切手は、ウルグアイ郵便局及びその他関係機関の協力を受け作成された。
(2)対アルゼンチン関係
ア 5日、アルマグロ外相はティメルマン亜外相とローマで会合し、マルティン・ガルシア浚渫の国際入札開始手続きに関し協議、本件の進展を互いに約束した。これを受けて、12日、ウルグアイ河管理委員会(CARU)において、本件浚渫の入札仕様書が承認された。
イ 23日、フェルナンデス大統領の再選の連絡を受けた「ム」大統領は、同大統領に電話し、祝意を表した。
(2)対欧州関係
ア 5~7日、「ア」外相はイタリアを訪問、第5回伊・南米及びカリブ地域会議に出席した。また、「ア」外相はフラティニ外相と会合し、二国間文化関係の強化のために文化協定を締結した他、ウルグアイ国防省及びイタリア国防省間の治安及び国防システムのための協力協定に署名した。
イ 12~20日まで「ム」大統領は「ア」外相、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相、ポルト経済財務次官等政府関係者及び企業関係者と共に欧州歴訪した。12日、「ム」はスウェーデンを訪問し、レインフェルド首相と会談、ウルグアイ国民の名において、軍政期の亡命者の同国による歓迎に厚く感謝した。レインフェルド首相は国連におけるウルグアイの活躍、及び科学技術分野での両国間の協力の可能性を強調した。この他、ビョルリング貿易大臣は、同国ストラ・エンソ社やエリクソン社、SKF社等の出席のもと、両国企業家ハイレベル会合を開催、「ム」大統領はウルグアイで活動する同国企業の支援を受けながら、ウルグアイが有する利点について強調した。14日、「ム」大統領は同国国王と謁見したほか、同国議会議長と昼食を共にした。
ウ 15日、「ム」大統領はノルウェーを訪問し、ストルテンベルグ首相と会談、国防、人権擁護、環境、世界平和構築等の分野における二国間関係の強化について協議した。この他、「ム」大統領はソルヘイム国際開発・環境大臣と会合し、石油や天然ガス等天然資源分野において同国が有する知識を共有していくことに関心を示した。
エ 17~18日、「ム」大統領はドイツを訪問し、メルケル首相と会談、農業、再生可能エネルギー、獣医学研究分野について協議、各分野におけるワーキンググループの設置を確認した他、同首相は、ウルグアイの近代化に対し、経済的側面や農業及び風力発電等エネルギー分野における協力強化及び支援を誓約した。また、同首相は、EU・メルコスール間交渉につき、G20の場を利用して高級事務レベルでの検討を誓約した。この他、ハンブルグで企業家へのセミナーを開催、アゲレ農牧水産大臣がプレゼンを行い投資誘致を行った他、同国の有する鉄道技術を利用して、ウルグアイの技術者を養成する可能性等を模索した。
オ 19~20日、「ム」大統領はベルギーを訪問し、レテルメ首相と会談、同首相はEU・メルコスール間の合意を欧州から推し進めることを誓約した。また、ピテラ欧州議会副議長は「ム」大統領をメルコスール議長国議長として受け入れ、ウルグアイの成熟した民主主義を称賛した他、両地域間で交渉されている自由貿易協定に関し、積極的に取り組んでいくことを約束した。さらに、「ム」大統領は国王に謁見した他、モンテビデオ港にターミナルを有するKatoe Natie社の招待により、同社のターミナルがあるAmberes港を視察した。
(3)その他
ア 18日、11月に開催されるG20における域内共通課題の確認のための会合が、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)事務局で開催され、アストリ副大統領やアルバレスALADI事務局長、メヒア南米諸国連合(UNASUR)事務局長、ピニェイロ・メルコスール上級代表等の他、ALADI加盟国代表者が出席した。
イ 26日、コンデ外務次官はメキシコを訪問し、同国外務省ベルトラン中南米担当次官と会合し、これまでの二国間関係の確認及び11月16、17日に「ム」大統領が行う同国公式訪問の準備を行った。
ウ 26~28日、ピニェラ・チリ大統領がウルグアイを訪問、「ム」大統領と会談を行い、二国間の議題・共通の関心事項を確認し、今後も対話を深めていくことで合意した。また、同大統領は当国経団連(ADM)主催の昼食会において講演を行った他、モンテビデオに事務局を有するメルコスールやALADIも訪問した。
4 社会
(1)治安
ア 6日、内務省は17歳以上の国民を対象とした治安に関すアンケート結果を発表。最近5年以内に何らかの犯罪被害に遭ったとの回答が57%、最近1年以内に何らかの犯罪被害に遭ったとの回答が34%、多くの国民が被害に遭っていることが明らかになった。また、調査会社Equipos Mori社はウルグアイにおける重要課題に関するアンケート結果を発表、治安悪化との回答が41%で第1位となった。さらに、犯罪の増加を感じているとの回答が72%にのぼり、体感治安の悪化も顕著となっている。
イ 16日、救急車が単独で入れない11地域(マルコーニ地区、カサバジェ地区等)が発表された。また、26日には、パルケ・バジェ地区において、ディスコでのけんかでの負傷者とその友人を救急車に乗せたところで3発撃たれ、うち1発が友人の頭に当たり、負傷する事件が発生した。年間100人以上の医師が何らかの被害に遭っている他、救急車に対する強盗事件が1日1件の頻度で発生している。
ウ 16日、プラド地区のバウサ中学校で、校内及び周辺地域における事件が多発していることを受けて教員らのストが行われたため、警察官が週末まで配置されることとなったが、教員は18日、恒常的な対応を求めてストを継続した。同校に限らず学校周辺の治安は悪化しており、犯罪グループによる生徒及び教員に対する恐喝事件や麻薬などの犯罪が発生している。新聞では、治安悪化の原因として警察の222サービスが減少したことをあげている。
(2)16日、チリ・プジェウエ火山の影響でカラスコ空港の約30便が欠航となった。
(3)下旬より特に乳幼児に影響を与える百日咳が流行、これまでに4名の死亡が確認されており、政府は病院関係者や乳幼児のワクチン接種を急ぐ。