ウルグアイ内政・外交:2010年1月~2月
1.概要
(1)内政
○次期政権運営開始に向けて、ムヒカ次期大統領は広く野党とも意見調整をすべく、分野毎に野党も含めた超党派協議会(教育・治安・エネルギー問題・環境)を設立して協議していく意向を示し、1月18日から野党各党と調整を進めている。
○バスケス大統領は昨年11月、プラン・カルダレスにおいてANTEL(当国電話公社)以外の私企業にも入札の機会を与えるべしとの大統領令を発出したが、党内からの反発を受け、同計画の将来はムヒカ次期大統領に託すこととし、同大統領令を撤回した。
○与党FA党は、2月22日、公的機関(国営企業や二国間委員会、独立法人、選挙裁判所等)における政治任命ポスト約200の配分に関し、野党(国民党、コロラド党、独立党)との交渉を始めた。
○本年5月9日、地方統一選挙が実施されるが、モンテビデオ県知事選で伝統的に候補を一人に絞ってきたFA党では、1月後半マルティネス前工業エネルギー鉱業大臣等の間で候補の座が争われていたが、次期社会開発大臣に内定していたアナ・オリベラ現社会開発次官が同県知事候補に決定した。なお、特にモンテビデオ県知事・県議会議員選挙では、基本的に有権者は、昨年の大統領選挙(11月)及び上下両院選挙(10月)と同様の党を支持する傾向にあり、FA党が優位になっている。
(2)外交
○約10年在ウルグアイ亜大使を務めたパティーニョ・マジェール大使が更迭された。
○ムヒカ次期大統領が亜を訪問し、フェルナンデス亜大統領と二国間の諸問題解決のための二国間合同委員会を立ち上げることで合意した。
○OECDのタックス・ヘイブンに関わる「グレーリスト」から脱却するため、様々な国との二重課税防止協定締結に向けた努力がなされた。
2.内政
(1)各党のモンテビデオ県知事選挙(5月9日)候補擁立の動き
(イ)与党FA党
1月に入り、MPP派モンテビデオ県総会は、同県議会議員として長年の経験があり同県県議会議長を務めたこともあるバレラ現下院議員(アサンブレア・ウルグアイ派)をFA党同県知事選統一候補として擁立することを決定した。
他方、同県知事候補への出馬の意向を示していたマルティネス前工業エネルギー鉱業大臣(次期上院議員)は、社会党派、ベルティエンテ・アルティギスタ派、共産党派、その他の小派閥からの支持を得た。
FA党は、伝統的にモンテビデオ県知事選挙では候補を一人に絞っており、統一候補として正式に認められるためには、候補者が1月25日開催のFA党モンテビデオ県総会(El Plenario Departamental de Montevideo)にて5分の4(111名中89名)の賛成票を得る必要があったが、FA党同県知事選候補として名前の挙がっていた「マ」氏及び「バ」氏は、25日総会にてそれぞれ111票中60票、37票(棄権6票)の票しか取れず同知事選統一候補として承認されるには至らなかった。
「マ」氏、「バ」氏が共に出馬の意向を崩さない中、25日総会中、既に次期社会開発大臣として内定しているオリベラ現社会開発次官をFA党統一候補として擁立するとの代案が提出され、同29日まで審議は持ち越された。29日FA党同県総会では、党内コンセンサスを重んじた「バ」氏が出馬を辞退。「マ」氏を擁立していた社会党派も3度に渡る投票の結果、同氏ではコンセンサスに達する可能性がないと認識し、オリベラ氏に票を投じ、出席者102名のうち100票(残り2票は棄権)を獲得した「オ」氏がFA党モンテビデオ県知事選挙統一候補として確定した。
なお、「オ」氏が次期FA党モンテビデオ県知事統一候補となったことを受け、ムヒカ次期大統領は「オ」氏と同じく共産党派出身であり、モンテビデオ県庁での経験もあるアナ・ビグニョリ氏を2月3日、次期社会開発大臣として内定した。
2月10日、FA党モンテビデオ県大会はオリベラ・モンテビデオ県知事候補を満場一致で承認し、今後支援していく旨発表した。
(ロ)野党国民党
国民党では、UNA派(ラカジェ元大統領派)からは同派に所属し本年3月から下院議員に就任する予定のピニェイルア元労働社会保障大臣(1995年~99年)を、また、ララニャガ現上院議員が率いる国民党アリアンサ・ナシオナル派は、エコノミストであるデ・アエド氏(経済財務次官を務めた経験も持つ)をモンテビデオ県知事候補として擁立。なお、国民党は2月8日、モンテビデオ県大会を開催し、候補としてピニェイルア氏(124票)及びデ・アエド氏(82票)の2名を承認する旨決定した。
(ハ)コロラド党
1月25日、ボルダベリー・コロラド党幹事長(バモス・ウルグアイ派)は、腫瘍専門医であり、ウルグアイ・バスケットボール連盟会長も務めるカスティージョ氏(2005年にボルダベリー氏がモンテビデオ県知事選に立候補した際の知事補欠候補であった。フォロ・バジスタ派=Proba派内の一派に所属)を擁立する旨公表した。
他方、同党リスタ15(Proba派内の一派)及び「Uruguay es Posible」派等は、ボルダベリー幹事長が擁立するカスティージョ氏を支援するか否かの議論の末、バジェ政権下にて工業エネルギー鉱業大臣を務めたホセ・ビジャル氏を候補として擁立することを決定した。2月3日、コロラド党モンテビデオ県大会が開催され、最終的に上記2名を候補とすることが決定された。なお、現在、コロラド党が県知事を輩出しているのはリベラ県のみである。
(2)超党派協議会会合
(イ)1月18日、ムヒカ次期大統領は、重要政策分野で野党とも話し合いの上コンセンサスを得るための超党派の分野別協議会会合を開催した。今回は、国会で教育、治安、環境の各分野協議会が招集され、第一回目の会合が開かれた。
(ロ)1月21日、ムヒカ大統領主導による超党派の分野別グループ4つのうちの一つ、エネルギー分野の協議会会合が開催された。マルティネス前工業エネルギー鉱業大臣及びセンディック現工業エネルギー鉱業大臣等により、FA党がこれまで進めてきたエネルギー政策について報告がなされた。
(ハ)1月25日、超党派の分野別協議会の一つ、教育グループが第二回目となる会合を開いた。今回は、与党FA党として審議を予定している教育関連政策に関して野党への紹介が行われた。
(ニ)1月27日、超党派分野別政策協議会の一つエネルギーグループが会合を開いた。この中で与党FA党は、2015年までにエネルギー分野での原油への依存を現行の56%から39%まで下げると伝えた。
(ホ)2月3日、超党派のエネルギー政策協議会が開催され、代替エネルギーの利用が承認されるとともに、最低でも200MWの発電ができる発電所建設の必要性に関して合意が得られた。
(3)分野別閣僚会合の立ち上げ
(イ)1月19日、ムヒカ次期大統領及びアストリ次期副大統領は、FA党本部にて生産性分野閣僚(経済財務相、農牧水産大臣、工業エネルギー鉱業大臣、労働社会保障大臣、観光スポーツ大臣)と社会開発分野閣僚(教育文化大臣、厚生相、社会開発大臣、住宅土地整備環境大臣)2つの閣僚グループの会合(立ち上げ)を行った。今回は、次回の会合で各省最優先事項について発表するよう求めた。これらの2グループとの会合は月2回行われる予定で、現在週1で実施されている閣議は月2回に減らされる模様。
(ロ)1月20日、ムヒカ次期大統領及びアストリ次期副大統領は、FA党本部にて月2回開催予定の治安閣僚会議を開催した。出席したのはロサディージャ次期国防大臣、ホルヘ・バスケス次期内務次官(ボノミ次期内相が大統領省大臣として就任した暁には内務大臣として就任する予定)、アルマグロ次期外相。今回の会合では、飽和状態にある国内刑務所(収容状況悪化)の改善に向け、内務省が厚生省や社会開発省等と協力していくことを確認した。
(4)カネロネス県知事選挙(FA党の動き)
(イ)1月19日、セロ地区にある自身(ムヒカ氏)の農場でカランブラ現カネロネス県知事と2時間にわたり面会したムヒカ次期大統領は、次期知事選挙に向けカランブラ氏のカネロネス県知事再選を支持する旨伝えた。
(ロ)1月26日、ベルティエンテ・アルティギスタ派、MPP派、CAP-L派、共産党派、PVP派(Partido por la Victoria del Pueblo)等が次期カネロネス県知事として現役のカランブラ県知事を支援する旨表明した。これにてカランブラ知事はカネロネス県知事としてFA党のほぼ全ての派閥から支持を得たことになる。
(ハ)2月12日、FA党カネロネス県大会は、1月31日、FA党カネロネス県総会でカランブラ・カネロネス県知事が同県FA党統一候補として再出馬することを支持するとした総会決定を満場一致で追認した。カネロネス県はモンテビデオ県と同じくFA党支持層が多く、カランブラ候補再選の可能性が非常に高い。
(5)地方分権化法修正法案に関する国会審議
1月19日、地方分権化修正法案が下院で審議され、FA党のアサンブレア・ウルグアイ派とMPP派は市長・市議会議員選挙を2015年まで延期すべきであるとの意向を示し、これには同党ヌエボ・エスパシオ派及びCAP-L派も同意した(注:全下院議員議席数99のうち、FA党は52議席を占め、うちMPP派、CAP-L派、アサンブレア・ウルグアイ派、ヌエボ・エスパシオ派の合計は32議席にのぼる)。これを受け、FA党は、同法施行を2015年まで延期すべきであるとの提案を行ったが、FA党全体の総意として既に決まったことを覆すことにその他のFA党議員(アサンブレア・ウルグアイ派とMPP派以外ほとんど全て)が反対したため、この問題はFA党政治執行部に持ち込まれた。同25日、右執行部は同会合出席役員27名中20名の賛成により、既に上院で承認済みの本件地方分権化修正法案を下院で審議すべきであり、市長・市議会議員選挙は本2010年5月に実施すべくFA党総意として議会で投票を行うべしとの決議を下した。
上記を受け、2月3日、下院は県知事・県議会議員選挙と同時に人口5,000人以上の町、及び県が必要であると認めた場合に限り人口2,000人以上の町において市長・市議会議員選挙(当選した5名の市議会議員の中で得票数が最多の候補が市長として選出される)を実施することを規定する同法案を承認した。同法により、全国で89名の市長(モンテビデオ県内では8名の市長)が誕生する予定。同法案には、与党FA党のみならず、野党国民党、コロラド党の多くも賛成した。同法案は修正が加えられたため再び上院に送られ、4日、可決・成立した。
(6)次期政権における国営銀行等総裁任命
1月21日、ムヒカ次期大統領は、中銀、共和国銀行、住宅供給公庫、社会保障銀行、各行総裁として現行の総裁を任命すると語った。ムヒカ次期大統領は、「権力固定化、官僚主義が進む可能性があるが、国営銀行に関しては安定性及び予見性が必要であるので業務をよく理解した者に任せる所存」と発言。(中央銀行:Mario Bergara、共和国銀行:Fernando Calloia、住宅供給公庫:Jorge Polgar、社会保障銀行:Ernesto Murro)なお、中銀、共和国銀行、住宅供給公社それぞれの総裁はFA党に属しているものの(派閥には所属せず)、政治的にアストリ次期副大統領と関係が深い。)
(7)コロラド党バモス・ウルグアイ派新代表
1月23日、コロラド党バモス・ウルグアイ派はClaudio Aguilar新代表を選出した。
(8)最低賃金修正
1月29日、政府は最低賃金の修正を公表した。本年1月1日より、最低賃金は月額4,799ペソ(1米ドル=19ペソ換算でおよそ250米ドル)となる。昨年と比較し8.06%の上昇。
(9)プラン・カルダレスの行方
昨年11月29日の大統領選挙決選投票後、ムヒカ次期大統領が立ち上げた政策検討委員会は、1月18日、FA党執行部に対して、昨年11月のバスケス大統領による大統領令(プラン・カルダレスではANTELだけではなく民間企業にも同事業参加の機会を与えるとの内容)を修正し、ANTELの独占にすべきであるとの意見書を提出した。
上記のような与党内からの反発を受け、バスケス大統領は、2月1日の閣議にて、本件に関し新たな大統領令に署名・発出した。右は、ウルグアイ技術研究所(LATU)及びウルグアイ通信サービス規制機関(URSEC)のメンバーで構成される委員会を設置し、トリニダードで導入されたプラン・カルダレスのパイロットプラン(昨年8月28日導入)の成果を評価せしめることととし、また、同事業の全国展開を見合わせることとしつつ、既に交わされた「CANAL10(民間テレビ局)」等との契約を無効とする旨発表した。右により、プラン・カルダレスの導入如何は次期ムヒカ政権(3月1日~)に委ねられることとなった。同事業は、次期政権下の国会で審議・採択される通信事業法案にその方針等が盛り込まれる模様。同法案には、デジタルTV導入に向けた技術転換及びラジオ・テレビ周波数のコンセッション関連規則も盛り込まれる。
(10)ムヒカ次期政権における大使人事等
1月27日、ムヒカ次期大統領及びアルマグロ次期外相はFA党本部にて会合を開き、次期政権大使人事について話し合った。その結果、専門性や年齢(若さ)を重視し、外国語を解し通商や国際関係に造詣の深い人物を任命する方向で検討することで合意した。また、ムヒカ次期大統領は、マスメディアに対して現バスケス政権下では20とされていた外務省の政治任命者数を次期政権では12名までに制限すると語った(2005年中頃バスケス大統領は、法改正によりそれまでは10名とされていた外務省の政治任命幹部の人数を20名とする旨決定した)。次期外相は、政治任命と言えども、大使任命は「ウ」の外交機能を強化するものでなければならないとの意向を示した。
(11)再選に向けた県知事の動向
(イ)2月2日、ラフルフ・リオネグロ県知事(国民党)が県議会に辞表を提出し右は受理された。同氏は、同県知事候補として本年5月の地方選挙に再出馬する予定。(再選を目指す場合は県知事選挙の3ヶ月前までに辞任しなければならないとの憲法規定あり)
(ロ)同5日、バリオス・ロチャ県知事(FA党出身)、カランブラ・カネロネス県知事、及びデ・ロス・サントス・マルドナド県知事が知事再選を目指して辞任した。
(ハ)同8日、アマラル・トレインタ・イ・トレス県知事も辞表を提出し、FA党現県知事からは7名が再選に臨むこととなり、8名いたFA党県知事のうち教育文化大臣への就任が確定しているエルリッチ・モンテビデオ県知事以外の全員が再選に臨むことになった。
(ニ)2月14日、チルチ・サンホセ県知事(国民党)が県知事職を辞し、2月15日からは上院議員に就任する。チルチ知事は過去20年にわたりサンホセ県知事を務めた。
(12)予算企画庁長官の任命
2月3日、ムヒカ次期大統領は、次期政権におけるOPP(予算企画庁)長官としてGabriel Frugoni氏(農牧水産省に勤めるMPP派出身経済学者)を任命した。
(13)ムヒカ次期大統領と次期閣僚との初会合
2月8日、ムヒカ次期大統領は、次期政権閣僚(大臣及び次官)との初会合を開催し、「節約」、「財政引き締め」、「資源最大利用」、「慎重な国庫活用」、「バスケス政権における政策の継続と変革」、「チームとしての一体性」、「成長のための投資維持」、「住居建築など社会政策的事業の実施」、「国民主体」を政権運営に当たって重要な点として訴えた。また、金融危機を受け、財政均衡を維持するために2年間は緊縮財政を心がけるよう呼びかけた。
(14)ムヒカ次期大統領による企業家等への投資の呼びかけ
2月10日、ムヒカ次期大統領は、プンタ・デル・エステのホテルにてアルゼンチンを始め多くの外国企業を含む約1500人の企業家等を招いて講演会を行い、ウルグアイにおける投資誘致のための取り組み等を紹介し、投資先としての魅力についてアピールを行った。
(15)上下両院議員就任式
2月15日、上下両院議員就任式が執り行われた。なお、下院議長にはその対話能力が買われたIvonne Passada(MPP派)が野党の賛成も得て選出された。
(16)中央公教育審議会選挙
2月24日、2008年12月に成立した教育改革法に従って、初めて中央公教育審議会(CODICEN)メンバー5名のうち2名を選出する全国の教師による選挙(義務)が行われた。
3.外交
(1)在ウルグアイ亜大使更迭
10年以上に渡り在ウルグアイ亜大使を務めたパティーニョ・マジェール氏に関し、1月5日、当国国民党ララニャガ上院議員及びアブレウ上院議員がバス外相と会談し、同大使は内政干渉に当たる行為を行ったとして「ペルソナ・ノン・グラータ」を通告するよう働きかけを行った。(1月3日付アルゼンチンの新聞記事に同氏がホセ・バジェ・イ・オルドニェス元大統領、アルティガス将軍(当国独立の英雄)と次期大統領である左派ムヒカ氏を同列視するコメントを行った旨報じられたことに端を発する。)
これを受け、同5日、フェルナンデス亜大統領は、パティーニョ・マジェール大使の辞表を承認する大統領令に署名し、同大統領令は6日の亜の官報に掲載された(同大使は昨年12月3日にフェルナンデス亜大統領に辞表を提出していた)。同大使は、2月24日離任。
(2)ムヒカ次期大統領のアルゼンチン訪問
1月12日~15日、ムヒカ次期大統領は、トポランスキー夫人(上院議員)を伴ってブエノスアイレスを訪問した。12日はウルグアイへの投資家等を対象に会合を開き、13日はウルグアイ人居住者との面談。14日は国際橋梁(サン・マルティン橋)封鎖問題等について亜大統領府にてフェルナンデス大統領と話し合いを行った。今回の亜大統領との会合で、セルロース工場問題をはじめとして両国間の諸問題解決のための二国間合同委員会を立ち上げることで合意した。同委員会は、フライベントス市のBOTNIA社工場を発端とした両国間の問題、ラ・プラタ河とウルグアイ川の航行能力拡大の可能性、エネルギー、メルコスールなどのテーマを扱うことになる。なお、ムヒカ次期大統領は、今回の訪問で、亜政府からキルチネル前亜大統領のUNASUR事務局長選挙立候補に関する支持は要請されていないと述べた。
(3)ハイチ地震における当国被害者及び救助活動
(イ)人的被害
1月17日、地震当日である1月12日から行方不明であったGonzalo Martirene陸軍中佐(Teniente Coronel)の遺体が倒壊した同首都の国連施設で発見された。同陸軍中佐は45歳で、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の参謀本部のメンバーであった。その他元サッカー選手のダニエル・バレサ氏が、宿泊先のモンタナ・ホテルにおいて自分の3歳の息子を救助に行った後消息を絶っていたが、同28日未明、バレサ氏は3歳の息子を抱き抱えた状態で、倒壊した建物内で死亡しているのが確認された。
(ロ)ウルグアイからの支援活動
・1月14日、生き埋めになった被災者捜索のため、5匹の捜索犬及びそのトレーナー5名がハイチに向けて出発。16日以降捜索作業に協力した後、26日帰国。
・モンテビデオ県は、姉妹都市関係にあるポルトープランスに1,320キロの粉ミルクを贈与。
・1月26日、浄水装置設置のため国家水道局(OSE)職員5名がハイチに向け出発。
・1月27日、ロサディージャ次期国防大臣が現状視察のためハイチに向けて出発。一週間ほど現地に滞在し2月1日にはプレヴァル大統領等とも会談。
・国連からの更なるウルグアイ兵の増兵要請を受け、5月を目処に150人の追加派遣を予定。
(4)軍政期の人権侵害によるコルデロ元大佐の伯から亜への引き渡し
1月20日、軍政期に人権侵害(1976年コンドル作戦の一環で亜における誘拐やセルマル・ミケリーニ(Zelmar Michelini)等政治家の殺害に関与)を行った罪で2007年から伯で自宅監禁されてきたウルグアイ人マヌエル・コルデロ元大佐が陸路で伯から亜インターポールへと引き渡される予定であったが、体調不良を訴えたため同日病院に収容され、最終的には23日に亜への引き渡しが完了した。
(5)ムヒカ次期大統領と亜ウリバリ・エントレリオス州知事の会談
1月23日、ムヒカ次期大統領と亜ウリバリ・エントレリオス州知事はタクアレンボにて会合を開き、国際橋梁封鎖問題について話し合いを行った。同次期大統領は今次会合を問題解決に向けた対話の開始であると強調した。同氏はまた、今後は環境活動家等との話し合いではなく、亜政府当局との話し合いを続けていく旨語った。なお、ウリバリ・エントレリオス州知事は、橋梁封鎖には反対の意向である旨明言。
(6)OECDグレーリストからの脱却に向けた対応
ガルシア経済財務大臣は、1月25日~28日、フランスのパリで開催されたOECD諸会合に出席した。この中で、ウルグアイ政府として、OECDのタックス・ヘイブンに関わる所謂「グレーリスト」から脱却するための当国の取り組みについてアピールを行い、特に25カ国以上の国々と二重課税防止協定締結交渉を行っていることを強調した。
また、ガルシア経済財務大臣は、1月28日、フランス政府との間で二重課税防止のために租税情報の共有を可能にする両国間協定締結に向けた覚え書きに署名を行った。他方、ガルシア経済財務大臣は、1月26日、グリアOECD事務総長と会談し、ウルグアイにおける本件にかかる取り組みの進捗状況確認のためにOECDから調査団を派遣するよう要請した。
ウルグアイは、既にドイツ及びハンガリーとは二重課税防止のための協定を発効させており、スペイン、ポルトガル、メキシコとも右を締結しているが、現在、議会による批准待ちの状況である。
(7)当国のインスルサOAS事務総長再選支持表明
2月18日付当国外務省プレスリリースは、3月24日に行われる米州機構(OAS)事務総長選挙において、当国はインスルサOAS事務総長再選を支持する旨公表した。
当国外務省は同氏の素晴らしい人格及び専門性やOASでの業績は、不干渉の原則、民主主義の尊重、各国主権の平等性遵守のためのOAS強化等、ウルグアイの伝統的見解とも一致するとのコメントをだした。
(8)バスケス統領のラテンアメリカ・カリブ諸国統合首脳会合出席
2月19日~22日、バスケス大統領は同夫人を伴いカンクンで開催されたラテンアメリカ・カリブ諸国統合首脳会議に出席した。
会合の中でバスケス大統領は、統合には近道も奇跡もなく、また、決議や法律で造るものでなく、全員の団結で粘り強く建設するものである。全ての国がなすべき課題を有している。また、統合といっても何もないところから始める訳ではない。本件地域統合を効果的に進めるためには、新しい制度を通じて具体的な結果を出して行くことであると語った。カンクン滞在中、カルデロン墨大統領は、バスケス大統領の業績を讃えて、叙勲を行った。また、バスケス大統領は、ルイス・アルベルト・モレノ米州開発銀行(IDB)総裁と会談し、同総裁はプラン・セイバルの実施等を始めとしたバスケス大統領の業績を讃えた。さらに、バスケス大統領はインスルサOAS事務総長再任を支持する発言を行った。
4.要人往来
(1)来訪
(イ)キンターナ・チリ企画相
2月4日、キンターナ・チリ企画相がモンテビデオを訪問し、アリスメンディ社会開発相と会談した。社会政策分野における両国間協力についての話し合いや国際協力に関する情報交換が行われた。
(ロ)イグレシアス・イベロアメリカ事務局長
2月24日、ムヒカ次期大統領は、エンリケ・イグレシアス・イベロアメリカ事務局長と当地にて会談。
(2)往訪:バスケス大統領のラテンアメリカ・カリブ諸国統合首脳会合出席
2月19日~22日:バスケス大統領は2月19日当国を出発し、22日、メキシコ・カンクンにて行われたラテンアメリカ・カリブ諸国統合首脳会合に出席した。
5.その他
(1)メルコスール新事務局長就任
1月1日、キハノ・メルコスール事務局長(ウルグアイ人)に代わり、アグスティン・コロンボ・シエラ事務局長(アルゼンチン人)がメルコスール新事務局長として就任した。
(2)クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトに関する覚え書き署名
1月14日、三井住友銀行と当地共和国銀行はクリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトに関する覚え書きに署名した。この取り決めにより、ウルグアイ企業は日本企業に対してカーボン・クレジットを販売できるようになる。
(3)バスケス大統領の南極訪問
1月19日、バスケス大統領はウルグアイの南極基地アルティガスに向けて出発した。南極には21日まで滞在し科学調査の施設を視察した。チリのプンタ・アレーナスに1泊した後22日ウルグアイに帰国。
(4)最高裁新長官の就任
2月1日、Larrieux最高裁長官に代わり、Chediak最高裁判事が長官に就任(任期1年で5名の最高裁判事が交代で就任)。
(5)海軍大将交代
2月1日、フェルナンデス海軍大将に代わり、デバリ海軍大将が就任した。
(6)ボルダベリー元大統領に対する実刑判決言い渡し
2月10日、第一審のモッタ刑事事件判事は、軍政期(1973年~85年)における一連の憲法違反(大統領令により民主主義を断絶させたこと等)、9件の強制失踪及び2件の殺人罪(1976年当時国会議員であったセルマル・ミケリーニ氏及びエクトル・グティエレス氏のブエノスアイレスにおける殺害)を罪状として、ボルダベリー元大統領(81歳)(注:大統領任期1972年~76年)に対し30年の禁固刑を言い渡した。同被告は上告するものと見られる。なお、ボルダベリー元大統領は2006年12月に起訴され、これまで自宅監禁状態が続いていた。
(7)モンテビデオ県での乗用車ナンバープレート非登録者への対応
2月22日より、モンテビデオ県庁は、2008年以降に登録がなされたナンバープレートの自動車に関し、同県での登録がされていないナンバープレートの車がモンテビデオ県内を走っている場合は、その自動車の持ち主が同県外に住所があるかどうかを身分証等で確かめ、県外の住居証明が出来ない場合罰金を課すと発表した。(モンテビデオ県における1年間分の自動車登録料100%の支払いの可能性もあり)