ウルグアイ内政・外交動向(2007年1月~2月)
●概要
南半球の当国では、1月~2月は夏期休暇の時期であり、内政については大きな動きはなかった。
外交については、亜とのセルロース工場問題および来る3月のブッシュ米大統領来訪に注目が集まった。後者に関しては、2月8日にホワイトハウスが公式発表を行った後、労働総同盟(PIT―CNT)が反米デモを行う旨表明する等、左派勢力の寄せ集めである与党・拡大戦線内でも大きな反響を呼んだ。
●内政
(1)汚職
(イ)ニコリーニ上院議員
2月1日、ニコリーニ上院議員が低所得層に配給される無料の医療診療券を使用して外科手術を受けていたことが報道されたことを受け、与党内で批判が続出し、ニコリーニ議員は5日、辞任を表明、7日に上院で全会一致で受理された。厚生省は診療券を発券した職員に対し不正の有無に関する調査を開始したが、単なる手続き上のミスであったと結論づけ、6日、調査を終了した。
(ロ)県営カジノ
2月12日、前政権時(2000年―2005年)の県営カジノの運営に関する不正疑惑が持ち上がり、アラナ前モンテビデオ県知事(現住宅土地整備大臣)、県営カジノのベンゴガ前支配人等に対する調査が行われた。アラナ大臣が所属するベルティエンテ・アルティギスタ及びベンゴガ前支配人が所属するアサンブレア・ウルグアイは両人への支持を表明した一方、前述のニコリーニ議員の汚職とも関連して、政権幹部の倫理感を巡り、与党内で疑念が表明された。
(2)2月1日、サラ・ボッシオ(SaraBossio)が最高裁長官に就任し、民政移管後3人目の女性最高裁長官が誕生した。
(3)2月5日、2007年初の閣議が行われ、1月末までに各省より提出された「生産的ウルグアイ(Uruguay Productivo)」へ向けた各案を検討した。
(4)2月26日、ニン・ノボア副大統領主催により与党拡大戦線の議員はカネロネス県アトランティダにて集会を持ち、保健サービスの非中央集権化、厚生分野の改革、行政改革、教育改革等2007年の国会審議の優先分野についての議論を行った。
(5)2月27日、政府はバスケス大統領による、具体的数値を織り込んだ2年間の成果を記した回顧録を各省報告書とともに国会に提出した。
●外交
(1)セルロース問題
(イ)ICJ本件審議に関する陳述書
1月15日、亜政府は、ウルグアイがウルグアイ河規約を侵害したとする陳述書を提出した。ウルグアイ政府は7月20日までに反対陳述書を出す必要がある。
(ロ)ICJ仮保全措置命令に関する判決
客年11月にウルグアイ政府が行った、国際橋梁封鎖停止を求める仮保全措置要請に関し、ICJは1月23日、国際橋梁封鎖が直ちに措置をとらねばならないほど緊急かつ回復不能な被害をウルグアイにもたらす訳ではないとして、ウルグアイの要求を14対1で退けた。
(ハ)西王による対話促進
1月15日、ヤネス西特使はフィンランドのBOTNIA社を訪問し、同社の幹部と亜政府・住民の抗議を抑えるためにどのような方法があるのか模索するための会談をおこなった。
1月29日から2月2日の間、ヤネス西特使はウルグアイ及び亜を対話促進の目的で3回目の来訪を行い、両国にてそれぞれ2回、本件に関する会談を行った。ウルグアイでは30日にバスケス大統領、フェルナンデス大統領府長官、及びカンセラ外務省官房長と、2月1日に再度フェルナンデス大統領府長官及びカンセラ外務省官房長と会合を持った。両政府とも会談内容に関して公式コメントを出さなかった。
2月2日、モラティーノス西外相がウルグアイ・亜両国間で直接対話を行い、本件について全ての側面を扱うという合意に達した旨を発表した。同日ウルグアイ政府も、西特使の仲介を持って亜政府と直接「対話」再開合意に達した旨、しかし一方で橋梁封鎖が続行している状況下ではいかなる「交渉」も行わない旨のプレスリリースを発表した。
(ニ)国際橋梁封鎖
1月2日、亜グアレグアイチュ市の活動団体は、ブエノス・アイレス港でブケブスの乗客搭乗を阻止する抗議活動を行うことを検討したものの、搭乗阻止は実際には行われず、ビラをまく等の抗議活動に留まった。
国際橋梁の封鎖は、フライベントス市と亜のグアレグアイチュ市を結ぶ橋は客年11月20日より封鎖が続いており、パイサンドゥ市と亜のコロン市を結ぶ橋も連休や週末を中心に断続的に封鎖が行われている。
サルト市及び亜のコンコルディア市を結ぶ橋では、コンコルディア市の活動団体が南二つの橋で行われている封鎖に加わるとの決議を過去にも3度出したものの、地元住人の反対により封鎖は実施されなかったが、1月31日に初めて封鎖に加わり、ウルグアイと亜を繋ぐ3つの国際橋梁の完全封鎖が行われた。その後カーニバル週間である2月14日―20日にも、3つの国際橋梁の完全封鎖が時間を区切って断続的に行われた。
2月6日、ガルガノ外相は英紙フィナンシャル・タイムズに、国境封鎖による経済被害は既に8億ドルを超えている旨語った。
(ホ)モンテビデオにおける亜活動家の抗議活動
2月5日、亜の活動家7名が亜より来訪し、独立広場にてBOTNIA社のセルロース工場建設反対の抗議活動を行った。右抗議活動に約150名のモンテビデオ市民が反発し、7名にヤジや卵を投げつけるなどの騒ぎとなり、警備のために警官が出動した。
(2)貿易投資枠組協定(TIFA)
(イ)署名式
1月25日、ウルグアイ政府と米国政府はTIFAをウルグアイにて締結した。署名式には、ウルグアイ側より、フェルナンデス大統領府長官、アストリ経済財務相、ジアネリ駐米ウルグアイ大使、米国側よりベロノーUSTR次席代表、アイゼンスタットUSTR代表補(米州担当)、クローニンUSTR南米南部担当部長が列席した。
(ロ)TIFAの概要
本協定は、今後二国間評議会を開き、通商投資促進のための協議を開始するための枠組みを設定するものであり、報道によれば、第1回二国間評議会は4月にワシントンにて行われる予定である。右評議会では、本協定の付属文書に記された交渉分野(通商・投資手続きの簡素化・自由化、WTOドーハ・ラウンドでの協力、知的財産権の保護、政府調達分の取り決め等)が話し合われる予定である。
(ハ)与党議員の反応
与党内の急進左派派閥であるMPP、共産党、コリエンテ・イスキエルディスタ等は米国とのTIFA署名に反対を表明、拡大戦線の政治執行部にてTIFAに関する説明を行ったアストリ経済財務大臣を批判した。政治執行部は1月24日、基盤委員会の構成員より上がっていた署名の延期を求める決議の採択は行わず、MPPも最終的には署名を支持した。
(3)1月30日、ウルグアイは米州反テロリズム条約の批准書を米州機構に提出した。
●要人往来
(1)1月5日―15日、カルドッソ下院議長他上院議員1名下院議員6名(与党からシャビエル議員、ピンタード議員、カネパ議員、マイア議員、国民党よりゴンサレス議員、ボルサリ議員、コロラド党からアブダラ議員)が全人代の招待にて訪中し、中国各地を訪問した他、両国の通商関係強化の可能性等のテーマを中心に呉邦国全人代委員長とも会談を行った。
(2)1月11日、ガルガノ外相はイベロアメリカ・サミット議長国引き継ぎのためにチリを往訪、バチェレ・チリ大統領、フォックスレイ外相と会談。
(3)1月16日、コレア・エクアドル大統領就任式にニン・ノボア副大統領が出席。
(4)1月18,19日、リオ・デジャネイロで行われたメルコスール首脳会合にバスケス大統領、ガルガノ外相、アストリ経済財務大臣が出席した。
(5)1月22日、ポルトガル領アソーレス自治領のセサール大統領が来訪し、在ウルグアイ・ポルトガル大使同席の下、ガルガノ外相他外務省幹部と二国間友好関係強化のための会談を行った。
(6)2月26日 ルーラ伯大統領はアモリン外相、ロンドゥ産業相、フルラン国際貿易促進相、ガルシア外交顧問を伴ってウルグアイを訪問、バスケス大統領、フェルナンデス大統領府長官、ガルガノ外相、アストリ経済財務相、レプラ工業エネルギー鉱業相、ロッシ運輸公共事業相、ブロベット教育文化相がこれを出迎えた。
ウルグアイと伯は5つの二国間協定に署名を行った他、両大統領による共同声明が発出された。