ウルグアイ内政・外交動向(2006年1月~2月)
●概要
南半球の当国では、1月~2月は夏期休暇の時期であり、内政については大きな動きはなかった。
外交については、亜とのセルロース工場問題および米と二国間でのFTA交渉開始の可能性をめぐる問題の2点に注目が集まった。
前者については、工場建設に反対する亜側の環境団体等が国境の橋梁を封鎖し、夏の観光シーズンで亜観光客からの収入を期待する観光業界等に甚大な被害を及ぼす等、問題が深刻化し、未だ解決の糸口がつかめていない。
後者については、アストリ経済財務大臣(Danilo Astori)が年始早々に当国週刊紙に対し、米国とのFTA交渉開始の可能性を示唆したところ、与党内部を含め国内外に波紋が広がり、党内部で賛成派と反対派に二分し激しい議論となった他、亜・伯の政府要人もアストリ大臣の発言に対し懸念を表明した。
●内政
(1)砂糖農業労働者の土地占拠
1月15日、アルティガス県ベジャ・ウニオンで砂糖農業労働者50名が国家開拓協会(Instituto Nacional De Colonizacion)が所有する砂糖農地36ヘクタールを占拠した。右農業労働者は、アルティガス砂糖農業労働者組合の組合員等で、労働のための農地の提供を要求した。地方裁判所は、17日午後までに占拠を解除するよう要求したが、労働者達は右を無視したところ、18日に警察が敷地内に入り占拠を解除した。
(2)独裁政権期の行方不明者の遺体身元判明
1月24日、客年11月29日にパンド地区で発見された遺骨はDNA鑑定の結果、1976年に誘拐された共産党員であることが判明した。独裁政権下における行方不明者に関し、初めて遺体の身元が特定された。
(3)国軍最高司令官及び最高裁判所長官の交代
2月1日、カルロス・ディアス将軍(Carlos Díaz)が国軍最高司令官に、イポリト・ロドリゲス判事(Hipólito Rodríguez)が最高裁判所長官に就任した。ディアス最高司令官は、引き続き軍事独裁政権時代の人権弾圧について調査を継続する旨表明した。
(4)行政改革
2月2日、レスカノ観光大臣(Héctor Lescano)は、バスケス大統領が07年までに省庁の統廃合など行政改革及び内閣改造を実施する可能性が高い旨表明した。
(5)地方での閣僚会議
2月6日、ロチャ県サンタ・テレサで閣僚会議が開催され、バスケス大統領は閣僚に対し2月13日までに3月から実施する国の生産性向上(行政サービス効率化、国内産業の生産性向上等)に向けた各省庁の取り組む案を提出するよう指示した。
(6)汚職
2月22日、リベラ県会議員3名(コロラド党員2名、国民党員1名)は、交通費の水増しの容疑で罷免された。
●外交
(1)セルロース工場問題(経緯は別添資料を参照)
同問題は解決策が見いだされることなく亜との外交関係は悪化の一途を辿っている。
二国間ワーキング・グループ(GTAN)による環境に与える影響の調査報告は纏まらず、各々の代表団が作成した二通の報告書が各々の外務省に提出された。
一方、亜側の環境団体による国境の橋梁封鎖は、1月は週末など断続的だったものが、2月5日からは継続的に行われ、亜からの観光客や亜やチリなど南米各地からの物流が遮断され、ウルグアイ経済に与えるインパクトが懸念され始めた。
両政府は、二国間委員会が決裂したのを受け、バスケス大統領(Tabaré Vázquez)とキルチネル大統領(Néstor Kirchner)は双方に代理をたて(ウ側はフェルナンデス大統領府長官 Gonzalo Fernández、亜側はフェルナンデス首相 Alberto Fernández)交渉を開始した。しかし、ウルグアイ側は亜政府に橋梁封鎖解除を要請し、亜側はハーグ国際裁判所に提訴する構えを見せるなど、両者の歩み寄りは見られず、問題の解決の糸口は見つかっていない。
(2)米国との二国間FTA交渉
アストリ経済財務大臣は当国週刊紙「ブスケダ」(1月5日付)のインタビューで、ウルグアイが米国及び中国とのFTA締結の可能性を模索する旨発言し、与党内部を含め国内外に波紋が広がった。中でも、ガルガノ外相(Reinaldo Gargano)はタイアナ亜外相(Jorge Taiana)に電話で右可能性を否定し、社会党や共産党は反対を唱えるなど与党内で激しい反発が起こった。
また、アモリン伯外相(Celso Amorim)が、メルコスール正式加盟国がバイで域外の諸国・ブロックとFTA締結の交渉を行うことはあり得ない旨発言するなど、亜・伯政府要人からウルグアイがメルコスールの*「4+1」対外交渉原則を反故にすること、あるいは、メルコスールを脱退することを懸念する声が挙がった。
*「4+1」対外交渉とは、正規加盟4カ国が一丸となってメルコスール域外の国あるいは地域ブロックと交渉することを指す。
(3)要人往来等
(イ)1月7日、ハイチのPKO部隊が200名増員された。
(ロ)2月2日、ガルガノ外相は、ブラジリアを訪問しアモリン伯外相と会談した。ガルガノ外相は記者会見で、ウルグアイは先の伯亜大統領会談で合意された競合適応メカニズム(MAC)を受け容れる用意がある旨表明した。
(ハ)2月8日、ガルガノ外相は第13回国際食品・原材料見本市(PRODEXPO 2006)に参加するためロシアを訪問し、ラバロフ外相(Serguei Lavrov)と会談した。
(ニ)2月13日、モラティノス西外相(Miguel Angel Moratinos)は、ウルグアイのイベロアメリカサミットの議長国就任式に出席するためにウルグアイを訪問し、バスケス大統領及びガルガノ外相と会談した。
(ホ)2月16日、ニン・ノボア副大統領(Rodolfo Nin Novoa)は西を訪問し、フェルナンデス西副首相(María Teresa Fernández de la Vega)と会談した。
(ヘ)2月21日、コンゴにおける国連PKO活動に参加しているウルグアイ軍要員724名が1,512名と交代した。
(ト)2月21日、チョラマリ・ハダ・アデル(Cholamali Hadad Adel)イラン国会議長がウルグアイを公式訪問し、バスケス大統領及びニン・ノボア副大統領と会談した。