1.内政
●閣議において各省庁の本年優先課題が決定された。
●チリ生まれであるベネガス厚生相が憲法上規定される閣僚就任資格を満たしていないとしてコロラド党議員が選挙裁判所に審査を要求した。
2.外交
●ムヒカ大統領はチリのサンティアゴで開催されたCELAC・EU首脳会合及びCELAC首脳会合に出席した。
●ムヒカ大統領はベネズエラを訪問し、同国の政権移行プロセスに係わる集会に出席した。
●メキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領がウルグアイを訪問した。
3.社会
●本年最初の2週間で12件の殺人事件が発生し、野党はボノミ内相の議会召喚を求めた。
●2010年の国内犯罪によるコストに関するIDBの調査によると、治安対策のための経費や受刑者に関する経費等を合計して12億米ドルにも上ることが分かった。
1.内政
(1)政府、議会及び与党FAの動向
ア 21日、本年初の閣議が開催され、ムヒカ大統領は最近アルゼンチン等からの移住者が増加していることや若年層の熟練労働力の確保という観点から、メルコスール域内国を中心に海外からの移住手続きの迅速化及び簡素化を進めるよう関係閣僚に指示した。また、30日に開催された閣議において、各省庁の本年優先課題が決定された(外務省優先課題については「2.外交(7)その他 ア」を参照)。
イ 29日、コロラド党のホセ・アモリン・バジェ上院議員が、チリ生まれであるベネガス厚生相は2004年にウルグアイの市民権を取得しており、憲法上規定される閣僚就任資格を満たしていないとして選挙裁判所に審査を要求した。アモリン・バジェ議員は、憲法では、市民権は取得後3年後に有効となり、上院議員及び閣僚を務めるには更に7年の市民権行使が必要である旨規定されており、これに従えばベネガス厚生相は2014年まで閣僚を務めることができないと主張している。今後、選挙裁判所が本件につき調査を進め、結果如何ではベネガス厚生相の辞任或いは更迭の可能性が出てきた。
(2)野党の動向
ア 12日、国民党のルイス・ラカジェ・ポウ下院議員(Unidad Nacional/Aire Fresco)は、次期大統領選挙の党統一候補選定に先立つ派閥内選挙に立候補する旨公表した。他方、21日、同派閥のアナ・リア・ピニェイルア下院議員は、十分な支持が得られなかったことを理由に派閥内選挙への立候補を辞退する旨発表した。
イ 12日、10月に発足した国民党の新グループFuerza Blancaが、同党伝統派閥の一つであるロチャ国民運動(MNR)に加入する旨発表された。
ウ 15日、ラカジェ上院議員(元大統領)率いる国民党の主流派閥Unidad Nacionalから創設メンバーの一人でもあるフランシスコ・ガジナル上院議員(Correntada Wilsonista)が脱退する旨発表された。同派閥がエレリスタ的傾向を強める現状に反発したものとみられている。
(3)軍政期の人権弾圧問題
10日、教育文化省は、軍政期の人権弾圧による被害者に対する補償状況(2010年以降)に関し、経済的補償件数が318件、医療面での補償件数が161件に及んでいると発表した。
2.外交
(1)ムヒカ大統領のCELAC・EU首脳会合及びCELAC首脳会合出席
26日~28日、ムヒカ大統領は、チリ・サンティアゴで開催された第1回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)・EU首脳会合及び第2回CELAC首脳会合に出席した。チリ滞在中には、ニコリッチ・セルビア大統領、プシッチ・クロアチア第一副大統領、カタイネン・フィンランド首相、バローゾEU委員長と会談した。
(2)ムヒカ大統領のベネズエラ訪問
9日~11日、ムヒカ大統領はメルコスール議長国大統領としてベネズエラを訪問し、10日にカラカス市内で開催された同国の政権移行プロセスに係わる集会にメルコスール議長国大統領として出席した。今回の訪問にはシャビエルFA総裁も同行した。
(3)ペニャ・ニエト・メキシコ大統領のウルグアイ訪問
28日、メキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領、エルリッチ教育文化相と会談したほか、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)本部を訪れ、アルバレス同事務総長と会談した。
(4)対アルゼンチン関係
ア 11日、アルゼンチン法廷は、マルティン・ガルシア運河浚渫事業の入札を巡る汚職疑惑に関して、昨年12月に一旦打ち切っていた調査を再開する旨発表した。
イ 19日、マルティン・ガルシア運河浚渫を14年間請け負っていたRiovia社の契約が切れ、今後の事業はウルグアイ・アルゼンチン両国政府が合同で実施することになった。ウルグアイ側事業は港湾局(ANP)が担当する。
(5)その他要人往来
ア 5日、韓国の議員団がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相らを表敬した。
イ 18日、マリア・オテロ米国務次官(民主主義・地球規模問題担当)がウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領と会談したほか、人権分野等につきウルグアイ政府と協議した。
(6)対国際機関関係
ア 3日、国防省は、国連ハイチ安定化ミッションに参加中のウルグアイ軍兵士が休暇中にドミニカ共和国において「不適切な振る舞い」を行ったと昨年10月に訴えがあった件に関して、調査の結果斯かる事実はなかったとのコミュニケを発出した。
イ 10日付「エル・パイス」紙によると、国連ハイチ安定化ミッションに参加するウルグアイ海軍部隊が、6日に地元の若者らが乗ったボートが転覆しかけていたところを救助したほか、同様に米国人NGO関係者らの乗ったボートを救助した。
ウ 15日及び16日、モンテビデオにおいて第7回南大西洋平和協力地帯(ZOPACAS)閣僚級会合が開催され、加盟各国の外相、国防相らが出席した。
(7)その他
ア 30日の閣議において各省庁の本年優先課題が発表され、外務省は、①ムヒカ大統領の米国訪問、②上半期にアンゴラ、下半期にクウェートに新公館を開設、③ブラジルとの関係強化(首脳会談の開催を含む)、④更なる市場開拓のために中国、EU、ロシアとの関係強化等を挙げている。
イ 31日付「エル・パイス」紙によれば、カルロス・シルバ国防省国防政策総局長が次期駐ニカラグア大使に任命された。シルバ総局長は元トゥパマロスのメンバーであり、70年代後半にはニカラグアにおいてゲリラとしてサンディニスタ革命にも参加している。
3.社会
(1)治安
ア モンテビデオ県内数カ所にある建築途中で中止になった建物や元ホテルの廃虚に犯罪者や麻薬密売人が不法居住しており、内務省、運輸公共事業省、住宅土地整備環境省及びモンテビデオ県庁が強制立ち退きの対応を始めた。
イ 本年最初の2週間で12件の殺人事件が発生し、野党は昨年に引き続きボノミ内相の議会召喚を求めた。昨年は、1月22日までに17件の殺人事件が多発したことに対し、ボノミ内相は、2~3週間で結論を出すのは早すぎると発言していたが、最終的に年間で267件と記録的な数字となった。
ウ 昨年12月に、ネオナチのグループが行った疑いのある落書きや暴行事件が確認されており、内務省が捜査を行っている。内務省情報局長によると、落書きや暴行事件のほか、インターネット上で、ユダヤ系住民、同性愛者、アフリカ系住民等に対する攻撃や殺害を扇動するページが確認されており、ネオナチの動向に注意を払っている。
エ 米州開発銀行(IDB)がコンサルタント会社に委託して行った2010年のウルグアイ国内における犯罪によるコストに関する調査によると、治安対策のための経費や受刑者に関する経費等を合計して12億米ドルにも上ることが分かった。