ウルグアイ内政・外交:1月
1 概要
(1)内政
●13日,モンテビデオ県庁とモンテビデオ県職員組合(ADEOM)は,2015年12月31日までを有効期限とし平和条項を含む労働協約を締結することに合意。
●25日,行政府は,中央省庁職員の給与8.6%増額を決定。
●Legatum社が発表した繁栄指数(Prosperity Index)によると,ウルグアイは世界110ヵ国中第29位で,域内では1位となった。
●ムヒカ大統領の支持率は48%,不支持率は29%。
(2)外交
●アルマグロ外相は2012年の外遊先として,東南アジア諸国5ヵ国(インドネシア,マレーシア,シンガポール,ベトナム及びフィリピン),中国及びアフリカ大
陸を挙げた。
●12~16日,ムヒカ大統領及びトポランスキー上院議員(大統領夫人)は,ピニェラ・チリ大統領と共にプンタ・アレナスを経由して,ウルグアイとチリの南極基地が存在するキング・ジョージ島を訪問した。
●10日,ウルグアイ外務省は,フォークランド(マルビナス)諸島紛争を巡るアルゼンチンの要求に対するウルグアイの立場は,客年12月のメルコスール首脳会合において確認されたものであり,全く変わっていない旨プレスリリースを発出した。
(3)社会
2012年に入り殺人事件が多発し,26日までに国内で30件,モンテビデオ県内で21件を数えるなど、治安悪化が大きく報道された。
2 内政
(1)政府及び議会の動き
ア 9日,投資促進に関する政令が署名されたが,下旬,この政令に修正を加えるという理由から,政令が大統領ホームページから削除され,投資家等の不安と混乱を招いた。
イ 17日,ボノミ内務大臣は治安の悪化を受け,常設委員会に召喚され,質疑応答が行われ,同委員会でボノミ大臣は,治安対策に関する2つの法案((ア)親権義務の怠慢に対する罰則の強化,(イ)武器の個人所有の制限)を準備中である旨述べた。
ウ 18日,治安及び教育問題に関しムヒカ大統領と個人的に会合を持ったことで,党内から批判の高まった国民党ララニャガ上院議員(アリアンサ・ナショナル派)は,国民党執行部に辞表を提出,12年半にわたる国民党執行部所属に終止符を打った。
エ 23日,2012年初の閣議が開催され,各省大臣が今年の目標についてプレゼンテーションを行った。
オ 24日,「ム」大統領は労組色の強いペニャロサ公共保健サービス公社(ASSE)副総裁を解任し,ゴンザレス氏(前オレスケル厚生大臣補佐官:MPP派)を新たな副総裁として任命した。
カ 下旬,「ム」大統領はガリン農牧水産次官及びシモン教育文化次官を解任し,それぞれベネッチ氏(現国家農業研究所(INIA)所長)とゴメス氏(初等教育審議会会長:共産党派)を後任として指名することを発表した。
キ 25日,行政府は,中央省庁職員の給与8.6%増額を決定した。
(2)教育関係
24日,「ム」大統領は,3度目となる超党派会合を開催し,ProMejoraプロジェクトを推進し各校が有する権限をさらに広げること,中央教育審議会(CODICEN)等の教育機関における労組の力を削ぎ,政治的権限をより重視していくこと等に合意した。今後バスケス前政権時に成立した教育法が改正される予定。
(3)国家改革(公務員改革)
ア 「ム」大統領は,公務員改革推進の一つとして,中央省庁職員の勤務時間を6時間から8時間に修正するとともに,祝日の削減を提言,右提案書を公務員同盟(COFE)に提出したが,COFEはこの提案に反発し,政府との交渉を中断する強硬な構えを示した。
イ 初旬,これまで国家改革(公務員改革)を断行してきた「ム」大統領は,2012年は,国家公務員の特権削減を断固として進めていくことを発表。年功序列制を廃止し,これまで特に恩恵を受けてきた銀行セクター等において試験なしの昇級はできないとすること等が含まれる。
(4)労働関係
ア 国立マシエル病院で清掃を担当する会社が客年末に変更されたことにより内部闘争が発生,院内の清掃が行われず不衛生な状態になっていること,さらに関係者による職場占拠やストの可能性が高まったことを受け,政府はエッセンシャルサービスに関する政令を発出した。
イ 客年12月より労働協約の更新にかかる交渉の頓挫により,銀行労組(AEBU)の公的部門は,約12万件にのぼる小切手のクリアリング作業を停止した他,ATM利用等をストップしていた。これを受け,政府とAEBUは,12日,AEBU組合員によるストの停止と,政府による共和国銀行(BROU)予算の修正を条件として,スト停止に合意した。
ウ 13日,モンテビデオ県庁とモンテビデオ県職員組合(ADEOM)は,2015年12月31日までを有効期限とし平和条項を含む労働協約を締結することに合意。これは,1年に2回の賃金調整,全職員に対する手当及び目標達成に伴う手当支給等を行うもので,1,700万ドルのコスト増となる見込み。
(5)その他
ア Legatum社が発表した繁栄指数によると,ウルグアイは世界110ヵ国中第29位で,域内1位となった。右指数は経済,保健,教育,治安,ビジネスチャンス,ガバナンス,社会資本,個人の自由等を元に作成されている由。
イ AmericaEconomia雑誌ランキングによると,ロレンソ経済財務大臣はラ米において二番目に優秀な経済大臣としてランクインした。
ウ アンケート調査会社Cifra社が客年12月に行ったアンケートによると,「ム」大統領の支持率は48%,不支持率は29%であった。
エ アンケート調査会社Equipos Mori社が客年12月に行ったアンケートによると,オリベラ・モンテビデオ県知事の支持率が33%である一方で,フローレス県知事とリベラ県知事等は70%と高い支持率を獲得した由。
オ モンテビデオ県やカネロネス県では,これまで不毛な地であるとして登録された土地にかかる税額の見直しを行うため,住民台帳の更新による不動産税増額の検討を開始。
カ 31日,陸軍第一師団団長にオリベイラ将軍が就任した。
3 外交
(1)ウルグアイの2012年の外交政策
ア 16日,アルマグロ外相は新聞記者との朝食会にて,2011年の画期的な出来事と2012年の挑戦について述べた。
イ 2012年の外遊先として,東南アジア諸国5ヵ国(インドネシア,マレーシア,シンガポール,ベトナム及びフィリピン)を挙げた。5月には中国の訪問の他,アフリカ大陸訪問も予定されており,南アとアンゴラに加えて、数カ国をまわる予定。なお,「ム」大統領の訪米やオバマ米大統領との会談は,「ム」政権発足当初から模索されているが,本年は米国大統領選挙が実施されるため状況は複雑である模様。
ウ 同外相は,地域統合及び隣国との関係の強化がウルグアイの外交政策の優先事項であることは変わらないと補足し,これまで通りの対話を重視する姿勢を明確にした。
(2)対アルゼンチン関係
10日,ウルグアイ外務省は,フォークランド(マルビナス)諸島紛争を巡るアルゼンチンの要求に対するウルグアイの立場は,2011年12月のメルコスール首脳会合において確認されたものであり,全く変わっていない旨プレスリリースを発出した。
(3)対ブラジル関係
ア 11~14日,ブラジルのグリル・リオ・グランデ・ド・スル州副知事がウルグアイを訪問,外務省関係者と会合し,廃棄物リサイクルの二国間協力に関する合意した他,メリン湖及び水路関連プロジェクトを巡る進展及び教育問題について検討した。また,オルトゥーニョ工業エネルギー鉱業次官は,グリル副州知事との会合で,域内の風力エネルギー開発を迅速に行うことに合意した。
イ 17日,「ム」大統領はサン・パウロで闘病中のルーラ前伯大統領を訪問,昼食を共にし,3時間にわたり両国国民の統合の重要性について意見交換を行った。この他,同大統領はブラジルの企業家と会合をもった。
(4)対チリ関係
12~16日,「ム」大統領及びトポランスキー上院議員(大統領夫人)は,ピニェラ・チリ大統領と共にプンタ・アレナスを経由して,ウルグアイとチリの南極基地が存在するキング・ジョージ島を訪問。今次訪問は,アルゼンチンの実施する保護貿易主義政策がウルグアイの国益を損なうものであるとの認識の下,域内の他の国の支持を求めることにあった由。
(5)対国際機関関係
これまでエクアドルは米州機構(OAS)米州人権委員会の言論の自由委員会の権限を縮小することを提案してきたが,25日開催されたOAS常設委員会のセッションにおいて,ウルグアイは初めてエクアドルの提案に反対する姿勢を明確にした。
(6)対中東関係
ア 27日,議会常設委員会において,国際ホロコースト記念日を記念するセッションが開催され,1分間の黙祷が捧げられた。
イ 下旬,在ウルグアイ・イスラエル大使館は,プレスリリースを発出し,パレスチナ当局が,ユダヤ人家族5名を殺害した犯人を賞賛する内容のテレビ番組を作成・放映したとして批判すると同時に,ウルグアイ国民及び政府が強く批難の声を上げることを呼びかけた。
(7)その他
ア 17日,コンデ外務次官はエル・サルバドルを訪問し,マルティネス同国外務大臣と会見,公共政策の実施,特に貧困削減対策に関し,情報や経験等を共有していくことに合意した他,ウルグアイは,2万人に水供給を行うことが出来る給水設備を同国に供与することを発表した。
イ 下旬,コンデ外務次官は,エクアドルを訪問し,キトで開催されたエクアドルのメルコスール加盟に関する会議に出席し,演説を行った。
4 社会
(1)治安
ア 2012年に入り殺人事件が多発し,26日までに国内で30件,モンテビデオ県内で21件を数えるなど、治安悪化が大きく報道された。野党から治安悪化に対する厳しい批判があり,「ム」大統領と国民党のララニャガ上院議員との2者会談が行われたほか、ボノミ内相が国会召喚された(2 内政(1)イ参照)。ボノミ内相は、「治安悪化は過去の政権からの相続である」,「過度の報道が治安を悪化させている」等と述べたことから,野党の批判を一層強くさせた。
イ 内務省が発表した2011年11月末現在における地区別の強盗事件発生状況によれば,コロン地区(当館注:在留邦人が多数居住している地区)では,2011年同期に比べ53%の増加が記録され、モンテビデオ県内で最も強盗事件が増加した地区となった。また,年末から年始にかけ同地区での犯罪が多発したこともあり,地元の商店主は,16日に200人規模のデモを行い治安改善を求めた。
ウ 5日,モンテビデオ県郊外国道パンド料金所付近で,警察労組に加盟している警察官40名程が道路を封鎖し,(ア)モンテビデオ県警察本部構造改革,(イ)カネロネス県警の勤務時間変更,(ウ)一警官への懲戒による減給処分,(エ)給与に対する不服や要求を訴えるストを実施した。また、同構造改革に反対する職員が,新規購入した警察車両90台のうち30台を破損するなどの行動をとった。
(2)セロ・ラルゴ県で1,300ヘクタールにわたる森林火災が起こった他、リオ・ネグロ 県の4カ所でも同様の火事が起こった
(3)下旬,航空管制塔が航空機とのコンタクトがとれなくなる事態が数日にわたり発生し,航空便の運航に遅延が生じた。
(4)IATAのデータによると,2011年ウルグアイで売れた海外旅行チケットは1億3百万ドルに上り,2010年比で20%増となった。同年1~9月の海外旅行でウルグアイ人は3億3,000万ドル(64ドル/日)を消費し,平均6日間の海外旅行を行った由。主な旅行先にはカリブ海のキューバ,メキシコ,ドミニカ共和国が挙げられた。