1.概要
(1)内政・社会
●19日、2011年初の閣僚会議が開催され、既にムヒカ大統領より各省大臣に指示してあった2011年年間計画書の提出が行われ、内容につき審議、2011年の主要課題は「教育」「治安」「住宅」「インフラ整備」であることを再確認した。
●政府内各派閥は「富の分配」方法について異なる税制改革のあり方を提案しており、本格的な税制改革方針に関する協議が各方面において開始された。
●3日、12月31日に労働協約のきれた約130セクターにおける賃金審議会が開始された。
●パイサンドゥ県でボツリヌス菌感染者が3名発見され、うち2名は重体、モンテビデオ県内で治療を受けている。右菌の出す毒素は非常に致死性が高いため、厚生省は発生源の特定を急いでいる。
(2)外交
●1日~2日、「ム」大統領は全政党の代表を含む超党派の代表団とともにブラジルを訪問、ルセーフ新大統領就任式に出席し、その後の同大統領との会談ではこれまで通り3ヶ月に一度の頻度で首脳会談を継続することに合意した。
●25日~26日、ムヒカ大統領はペルーを訪問し、ガルシア大統領と会談。両首脳は港湾、保健、移民、科学技術研究、外交官の育成など7つの協力協定及び共同声明に署名した。
●26~27日、「ム」大統領はベネズエラを訪問し、チャベス大統領と会談。農業分野、文化面及びエネルギー分野を始めとする分野において12の合意書を締結した。
●5日、金滉植(キム・ファンシク)韓国首相が当国を訪問し、「ム」大統領及びアストリ副大統領と会談を開催。ウルグアイ産農産物の輸出、科学技術関連分野での協力、スポーツ協力及び査証手続きの軽減につき議論された。
2.内政
(1)政府の動き
ア 「ム」大統領は1月上旬に2週間の休暇を取得、コロニア県のアンチョレナ大統領別邸で休息し、18日モンテビデオに戻った。19日には2011年初の閣僚会議が開催され、既に各省大臣に指示してあった2011年年間計画書の提出が行われ、内容につき審議、2011年の主要課題は「教育」「治安」「住宅」「インフラ整備」であることを再確認した。
イ 13日、モンテビデオ県庁に19名の県知事が集合、8時間に及ぶ県知事会が開催された。本会合では特に自動車登録税による各県の税収確保につき協議され、各県に住民登録を有する個人及び法人の車両のみ登録する現行法の継続で合意。
ウ 10年末よりロレンソ経済財務相とブオノモ次官の経済政策に対する考えの相違や「ロ」大臣とカネパ大統領府副長官の個人的不仲が取り沙汰され、与党内の各派閥から「ロ」大臣及び「カ」副長官の辞任を求める声があがった。しかし、「ム」大統領は、11年上半期における閣僚交代はないとし、罷免の可能性を否定した。
エ 政府内では富の分配のための税制改革に関する論議が加熱。与党主要派閥(MPP派、社会党派、共産党派)は高所得者層への累進課税率の引き上げによる税収増と貧困層への分配を主張、一方で経済財務省は現在22%の消費税(IVA)の20%への引き下げと教育への投資による長期的観点からの格差削減を主張している。
オ 27日、予算企画庁(OPP)副長官に経済学者ケロニモ・ロカ氏が就任した。
(2)軍関係
ア 国連は国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の副指揮官職任命をウルグアイに提案し、ウルグアイ政府は右官職にフェリシオ・デ・ロス・サントス将軍(現軍人学校校長)を任命した。
イ 12月27日、国連コンゴ監視団ウルグアイ軍(1,200名を派遣)は、コンゴ民主共和国北部に位置するアンゴ市に士官2名、医者、看護士及び通訳者をそれぞれ1名、さらに陸軍兵士33名を派遣、2008年及び09年の同時期に起こったウガンダの反政府組織「神の抵抗軍(LRA)」による虐殺行為の再発を回避した。
ウ ロサディージャ国防相及びアルマグロ外相は2月にMINUSTAHを視察する予定。
エ 10年12月、軍政期に拷問に関与したと疑われる退役軍人等が告訴されたことを受け、2月から右調査が開始、約30名の退役軍人等が殺人容疑などで召喚される見込み。
(3)内務省関係
未成年者による犯罪が多発していることから、これまで各政党は少年法改正に向けそれぞれの提案を行ってきた。現在「処罰対象年齢引き下げ」と「未成年者補導歴の成人後の保存」の2テーマにつき、同時進行で協議が進められている。「未成年者補導歴の成人後の保存」については、ボノミ内相及び野党国民党、コロラド党は賛成を表明しているものの、与党拡大戦線(FA)党は右が治安の根本的解決にはつながらないとして反対。他方、アストリ副大統領が補導歴の保存について、凶悪犯罪を犯した未成年者分のみ保存する方向性に賛成を表明したことから、FA党内の意見に相違、揺れが出始めている。現在、両院は委員会を立ち上げ法令見直しの検討を行っている。
(4)労働関係
ア 3日、12月31日に労働協約のきれた約130サブグループの賃金審議会が開始された。
イ 4日、共和国銀行(BROU)職員が11月及び12月に行った銀行決裁作業の停止に対し、政府は右ストに関わった職員に対し、損失日の50%減給処分とすることを決定、減額が実施されたが、その後政府及び銀行間で右処分につき決定が数度変更された。「ム」大統領は、バスケス前政権時に公布された「公務員の職務放棄による減給処分政令」の適用を強く求めたものの、政府と労組側の仲を取り持つアストリ副大統領の説得もあり、今回に限り減給処分は行わず、減額対象となった1,500人に計約11万ドルが返金された。
ウ 12日、モンテビデオ県庁は10年12月にゴミ回収業務を停止した180人の職員に対し、5日間の定職及び20%の減給処分を通達。該当職員には同県庁に対する抗弁の機会が設けられた。現在まで実際の処分は行われていないが、これが実施された場合は県職員労組(ADEOM)は職場占拠を決行し、同措置に抵抗するとしている。
エ 12月18日にBROUの労働協約がきれたことを受け、政府は25日、銀行労組(AEBU)と公的銀行セクターにかかる新たな団体交渉に入った。
オ これまで労災が認定されるための道程が長く、司法プロセスも明確ではなかったことから、現在、労働社会保障省は労災に対する刑法の適用に向け調査、研究中。右法案は3月までに議会に提出される見込み。
(5)保健衛生関係
13日、政府と麻酔医等は麻酔医、外科医、看護士を1ユニットとする全国25ユニットの設置や、現在手術の急がれる3~400人の緊急性の高い患者の選出を行った合意書に署名、120日後までに現在手術待ち1,200名全員の手術が完了する見込み。
3.外交
(1)対ブラジル関係
ア 1月1日~2日、ムヒカ大統領が全政党の代表を含む超党派の代表団とともにブラジルを訪問、ルセーフ新大統領就任式に出席。ルセーフ新大統領とも会談し、これまでルーラ前大統領との間で3ヶ月に一度の頻度で行われていた首脳会談を、今後も継続することに合意。ルセーフ大統領からは、ウルグアイによるデジタルテレビの日伯方式採用の決定について謝意が表明された。
イ 18日、伯パトリオタ外相が訪ウし、ムヒカ大統領を始め、アルマグロ外相及びその他5名の閣僚と会談。両外相は二国間外相会談を今後3ヶ月に一度実施することに合意し、上半期には科学技術、教育文化について協議することも確認した。その他、電力や鉄道の連結及びヤグアロン川の架橋、国境統合、各分野における協力等についても協議された。
(2)対アルゼンチン関係
7日、アルマグロ外相が訪亜してティメルマン亜外相と会談し,ラプラタ川沿いのウルグアイ・コロニア県にモンテス・デル・プラタ社(ストラ・エンソ社とアラウコ社の合弁)の製紙工場を新設する計画について通報、ティメルマン亜外相は意義はない旨発言した。18日、政府と同社は投資協定に署名、計19億ドルが投資される見込みである。
(3)対ペルー関係
ア 25日、ムヒカ大統領はペルーを訪問し、ガルシア大統領と会談。両首脳は港湾、保健、移民、科学技術研究、外交官の育成など7つの協力協定及び共同声明に署名した。また、「ム」大統領は、ウルグアイにはペルー人投資家や企業等のための土地があることを強調し投資誘致に努めた。その他、リマ商工会議所での昼食、リマ市長らとの会談を行い、ペルー太陽勲章大十字章を授与された。
(4)対ベネズエラ関係
26日及び27日、「ム」大統領はベネズエラを訪問し、チャベス大統領と会談。農業分野、文化面及びエネルギー分野において12件の合意が成立した。加えて、技術協力や二国間企業の設立、ウルグアイ産自動車1,200台の今年度分輸入ライセンス付与等が合意された。
(5)対中東関係
ア 2日、「ム」大統領がルセーフ新伯大統領就任式に出席した際、「ム」大統領とアッバス・パレスチナ暫定自治政府大統領は、中東情勢及びウルグアイによるパレスチナに対する正式な国家承認に関して議論を行った。
イ 15日、ウルグアイ議員団一行はイラン、レバノン、クウェート、アラブ首長国連邦及びバーレーンへの外遊を開始。18日には、イランにおいてアフマディネジャド大統領及びカリリアン農業大臣と会談を行い、羊や牛のクローンについて研究しているロヤン研究所等の科学技術関連研究所の視察等を行った。「ア」大統領は、ウルグアイ及びラテンアメリカ地域との関係強化の意向を示し、ウルグアイが「昔からの友好国」である旨発言した。右訪問に関し、野党側からは、「イラン国内の人権状況について憂慮の念を示すべき」、「国際状況に鑑みれば時宜を得た訪問でなく政治的に利用されかねない」旨の批判がなされている。
(6)対韓国関係
5日、金滉植(キム・ファンシク)韓国首相が当国を訪問し、「ム」大統領及びアストリ副大統領と会談、ウルグアイ産牛肉及び家禽類の輸出、柑橘類に代表される生鮮果実の輸出、科学技術関連分野での協力などについて議論がなされた。
(7)その他
ア 「ム」大統領は、ベネズエラ訪問時、現在メルコスール加盟を申請中のベネズエラが右ブロック加盟国間の不均衡を是正する国となり得ること、及び、その石油供給能力の重要性を理由に、同国のメルコスール加盟への支持を強調した。
イ コンデ外務次官が第4インターナショナル・ポサディスタ派発行の国際雑誌「結論(Conclusiones)」関連の講演会において、ペルーとコロンビアの両政府を「軍国主義的」かつ「ファシスト的」とし、また、両国は地域における「ネオリベラル的」ブロックを形成し、アンデス共同体(CAN)を後退させたと発言したことで、20日、外務省はウルグアイ政府及び同関係者の考えを全く反映していない旨強調するプレスリリースを発した。
4.社会
(1)治安
ア 3日、パソ・カラスコ地区の民家で、55歳の男性が押し入った賊に胸を銃で撃たれ死亡。この事件で未成年者1名が逮捕されたが、同人は、2010年に2件の殺人事件に関与したとして補導されていたが、12月に証拠不十分として保護者に引き渡されており、判事の対応が不十分だったとして批判が高まっている。
イ 14日、カラスコ・ノルテ地区を拠点にしていた未成年グループ6名が強盗等の容疑で補導。11日に発生したカラスコ地区における警備員銃殺事件にも関与していると見られている。なお、成人2名を含む4名が逃走中である
ウ 14日、セロ地区において市内バスが強盗に襲われ、44歳の運転手がナイフで刺され負傷。この事件を受けて同社の労働組合はストを行った。なお2010年中、695件(前年比10%上昇)のバス強盗が発生しており、同組合では内務省に対策を行うよう求めている。
エ 17日、コルドン地区の銀行に現金6万1千ドルを預けようとした女性が未成年と思われる犯人にリュックサックをひったくられた。女性は犯行直後に犯人に足を銃で打たれ、犯人は近くで待機していた仲間のバイクで逃走した。
オ 19日、プンタ・ゴルダ地区でカップルを狙った4人組の未成年らしき犯人らによる短時間誘拐事件が発生した。昨年、7月にモンテビデオ県内で連続発生した短時間誘拐事件と手口が似ていることから警察では警戒を呼びかけている。
カ 26日、セロ地区をバイクで走行中の警察官がバイクに乗った未成年2人組に強盗目的で追いかけられ銃で応対しようしたが、少年の1人が先に発砲し警察官の胸部に命中、同警察官は搬送先の病院で死亡した。犯人は現在も逃走中。
(2)その他
ア パイサンドゥ県でボツリヌス菌感染者が3名発見され、うち2名は重体、モンテビデオ県内で治療を受けている。右菌による外毒素に中毒すると死亡率が高いため、厚生省は発生元の特定を急いでいる。
イ モンテビデオ県内マンガ地区の4ヘクタールに及ぶ私有地(空き地)を約270家族が占拠し、警察側と退去に関し衝突が起きた。
ウ 過去10年において、当国3年分の出生数にあたる約15万人のウルグアイ人が国外移住したことが判明。近年では移住数は減少しているものの、20年後には人口減及び老齢化が極端に進むことが懸念されている。