1 フリーゾーンの主な特徴等
(1)フリーゾーンに関連する現行法は1987年に制定。ヌエバ・パルミラ・フリーゾーンのみが国営。主管は経済財務省貿易総局フリーゾーン課。
(2)2013年11月現在,ヌエバ・パルミラ(Nueva Palmira),フライ・ベントス(Fray Bentos),リベルタ(Libertad),プンタ・ペレイラ(Punta Pereira),コロニア(Colonia),コロニア・スイサ(Colonia Suiza),フロリダ・スール(Florida Sur),リベラ(Rivera),リオ・ネグロ(Rio Negro),ソナメリカ(Zonamerica),ワールド・トレード・センター・フリーゾーン(WTC Free Zone),パルケ・デ・ラス・シエンシアス(Parque de las Ciencias),アグアダ・パーク(Aguada Park)の13カ所にフリーゾーンがある。
(3)法人税,相続税,付加価値税,奢侈税,株式会社コントロール税等,既存のウルグアイの税及び今後導入される如何なる税も免税。
(4)フリーゾーン内での物品の保管期間に制限は無い。
(5)フリーゾーンに入る貨物には関税はかからない。
(6)フリーゾーンに輸入され,第3国に輸出される産品は,トランジットとみなされる。
(7)ウルグアイのフリーゾーンから国内への貨物の輸送は,ウルグアイのふリーゾーンからウルグアイ国内への輸入,ウルグアイからフリーゾーンへの貨物の輸送はウルグアイ国内からの輸出とみなされる。
(8)従業員の25%は外国人を雇うことが可能(逆に75%はウルグアイ人を雇う必要性あり)。
(9)ミラー・ソナアメリカCEOによると,南米全体をターゲットとして見た場合に,ウルグアイの人材リソース,法的枠組み,国家の政治社会的安定性等を活用すると共に,フリーゾーンが事務所や倉庫等の建物,通信をはじめとするインフラや警備・クリーニング・メンテナンス等のサービス等を提供することにより,各社がビジネスに専念できる環境を整えることが出来る。
(10)カリキリ・フリーゾーン商工会議所会頭によると,フリーゾーン内での仕分け・梱包作業等は自由に行えるため,経済状況等が変わりうる南米への物流を考える際に,商品の送付先をその時々の各国の状況,需要及び在庫状況を確認しながらコントロールすることが出来る。
(11)ウルグアイでは労働争議が活発であるが,職場環境等の待遇が整っているフリーゾーン従業員による労働争議等は見られない。
2 ウルグアイのフリーゾーンと外国との関係
(1)メルコスール域内国との関係
ア メルコスール内のフリーゾーンはすべて同じルールが適用される。メルコスール域内にあるフリーゾーンからメルコスール域内国を最終目的地とした輸出については,メルコスール域外からのメルコスール域内への輸出とみなされるため,フリーゾーンからメルコスール域内への輸入の際にはメルコスール対外共通関税が課せられる(メルコスール共同市場審議会(CMC)決議(MERCOSUR/CMC/DEC No.8/94)第56条)。
イ ウルグアイのコロニア・フリーゾーン及びヌエバ・パルミラ・フリーゾーンで生産された特定の産品(コロニアについては,飲料の原料及び油等,ヌエバ・パルミラについては穀物等)については,ブラジルとの合意に基づき,ブラジルのマナウス・フリーゾーンに無税で輸出することが出来る(メルコスールCMC 決議No.26/01)
ウ ウルグアイのコロニア・フリーゾーンで生産された特定の製品は,アルゼンチンとの合意に基づき,アルゼンチンに無税で輸出することが出来る(飲料関連品2,000トンまで)。
エ ウルグアイはブラジルのマナウス・フリーゾーンおよびアルゼンチンのフエゴ島の特別税関地域からの特定の製品を無税で輸入できることとなっている(マナウスからはバイク,コピー機他,フエゴからはFOB2,000万ドルまで)。
(2)メルコスール域外国との関係
ア ウルグアイはメキシコとのFTAを締結しており,FTAの合意文書の中で,ウ ルグアイのフリーゾーンはウルグアイ国内として扱われるため,ウルグアイのフリーゾーンからメキシコへの輸出にはメキシコ側で関税が課せられない。
イ フリーゾーンで生産されたものをチリへの輸出する場合には,メルコス
ールとチリとの合意により関税は課せられない(メルコスールとチリとの経済補完協定No.35,追加議定書第13部第4条)。
ウ ウルグアイのフリーゾーンからイスラエル及びインドへの輸出も,メルコスールとイスラエル,メルコスールとインドとの合意により無関税(イスラエルについてはメルコスールとイスラエルのFTA合意文書AnexoII 第13条4項,インドについては,メルコスールとインドとのFTA合意文書AnexoIII第4部第36条)。
3 フリーゾーンからの輸出状況及びトランジットとしての活用
(1)ウルグアイからフリーゾーンへの輸出額は,2006年は1億8,000万ドル,2007年は2億9,200万ドル,2008年は5億6,100万ドル,2009年は8億2,400万ドル,2010年は9億9,500万ドル,2011年は7億3,400万ドル,2012年は6億5,400万ドルであった。
(2)2012年のウルグアイからフリーゾーンへの輸出額の内の72%がヌエバ・パルミラへ(穀物),23%がフライ・ベントスへ(主に木材)輸送された。
4 主なフリーゾーン
(1)ソナアメリカ(ベルギー及びウルグアイ資本)
ア 1991年より操業。モンテビデオのカラスコ国際空港から車で10分,
モンテビデオ港から25分に位置する。
イ 進出企業は350社以上。従業員数は9,500人。総面積は92ヘクタール,事務所・倉庫の総面積は150,000平方メートル。
ウ メリル・リンチ,BBVA銀行,TATA(インド)をはじめとする米国,ヨーロッパ,アジア等の企業がロジスティックス,金融サービス(金融コンサルタント等)通信・技術,コールセンター,南米の事務所,バイオテクノロジー,コンサルタント等が行われている。
エ 日本企業では,カシオ,ダイキン,ミツトヨ,シマヅ,パナソニック,リコー,ソニー等が南米の物流の拠点として活用している。
オ 物流の拠点として,ブラジルをはじめとする南米各国に短時間で陸路輸送が可能。ブラジルへの物資の輸送手続きは,別の地域から行うよりも手続き等が容易であるとも言われている。
(2)ヌエバ・パルミラ(国営)
国営のフリーゾーン。100ヘクタールの敷地に穀物保管用サイロ等の施設を備えており,水路を利用して輸送される貨物の大型船への積み替えも行われている。主に大豆やトウモロコシがパラグアイ,ボリビア,アルゼンチン及び国内からヌエバ・パルミラに集められる。大豆の30%は中国に輸出。
(3)フライ・ベントス(民間)
セルロースを生産しているUPM社があり,ウルグアイ国内から丸太が輸送され,フリーゾーンからセルロースとして他国に輸出されている。
(4)コロニア・フリーゾーン(民間)
主にペプシの原料を出しているPepsico社がある。日本向けのペプシの原料は,ここから輸出している。
(5)アグアダ・パーク(民間)
ソフトウェア,コールセンター,BPO,金融サービス,トレーディング・サービス(農業,医療,エネルギー,造船等)が行われている。2010年より操業。
(6)WTCフリーゾーン(民間)
金融・ホテル・レストラン等のビジネスの戦略を立てる事務所が入っている。
(7)フロリダ・フリーゾーン(民間)
域内のロジスティックス・サービスが行われている。
(8)リベルタ・フリーゾーン(民間)
サービス,コンテナ・自動車・道路リハビリ用重機の保管等が行われており,商業・工業団地となっている。
(9)リベラ・フリーゾーン(民間)
木材生産をもとに,工業・ロジスティクスのコンプレックスとなっている。
(10)コロニア・スイサ・フリーゾーン(民間)
工業・商業団地。産品の分配・流通センター。(了)
