ウルグアイ経済報告(4月分)
【概要】
- アルゼンチンによる輸入制限措置が続けられ、ウルグアイの繊維・衣料や自動車関連分野に影響が及び、また、1,000人以上の労働者が失業保険の対象となっている中、9日、ムヒカ大統領はアルゼンチンを訪問し、フェルナンデス大統領との間で、アルゼンチンがウルグアイの被害を最小限に抑えるための例外的措置を講じることで合意に至った。また、23日、ウルグアイ政府はアルゼンチンとの税務情報交換に関する合意に署名した。ムヒカ大統領は、アルゼンチンによる輸入制限緩和措置と、ウルグアイによる税務情報交換への合意は交換条件ではないと述べている。
- アルゼンチン政府によるYPF国有化により、ウルグアイ政府は更に投資家をウルグアイに誘致出来る可能性があるとしているが、メルコスールのイメージダウンにつながるとも見ている。なお、YPFは、ウルグアイの燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)と石油精製、石油試掘事業などの契約を行っている。
- 他方、18日、ムヒカ大統領はブラジルを訪問し、ルセーフ大統領との会談を行い、両国の経済を中心とする良好関係を強調した。今後二国間で生産チェーンの補完的協力について協議が行われるほか、風力発電に関する協力の署名が行われた。
- メルコスールと他国との今後のFTAについて、アルマグロ外相は、将来的に米国とのFTAを締結する可能性があると述べたが、スペインが、EUがアルゼンチンを除くメルコスールとのFTA交渉を行うことを提案したことについては、その可能性を否定した。
- 労働問題では、政労使三者協議が行われ、今後の賃金上昇は生産性を考慮したものとするかどうかについて、交渉の期限の設定等が議題となった。また、ヤザキの工場では従業員のカテゴリー化見直し等を要求した工場占拠が行われ、カネロネス県知事が労使間交渉の仲介役を務めた他、非組合員労働者等が労働省に対し、労組により労働を妨害された旨陳情に行くといった状況が見られた。
- その他日本企業関連では、2011年のウルグアイでのソニーの製品の売り上げが前年比100%以上の増加となった他、政府系投資促進機関UruguayXXIへの投資相談・照会に関して、3月は日本からの照会が最も多く、全体の25%を占めた。
- 格付け会社DBRSは、ウルグアイの国債の格付けをBBからBB+に格上げした。
- 隣国との貿易関係が円滑に行われない中、カネパ大統領府副長官がニュージーランドを訪問したほか、ウルグアイ外務省は、特にアンゴラを中心にアフリカとの経済関係強化を視野に入れている。
【本文】
1.為替(5月2日付「エル・パイス」紙)
4月は1.28%ドルが上がり、平均は1ドル19.793ペソとなった。ブラジル中銀の政策金利引き下げの発表を受けて銀行が介入を強め、ウルグアイの中銀は1億6,550万ドルのドル買いを行った。中銀は本年1-4月は4億4,140万ドル、共和国銀行(BROU)は13億6,090万ドルのドル買いを行っている。1日、アストリ副大統領は同紙に対して、競争力への影響を考慮しながら、大きな変動を避けるよう努めていくと述べた。関係者は大きな対外的な要因が無ければ5月は大きな変動は無いだろうと見ている。
2.工業生産指数
(1)国家統計院(INE)によると、
2月の工業生産指数(石油・派生品含まず)は前年同期比1.68%増。金属・機械・部品が51.07%増、皮革製品が8.41%増となったが、電子機械等は26.16%減、自動車は6.92%減、繊維関連品は9.36%減となった。繊維・自動車分野等は特にアルゼンチンによる輸入規制の影響を受けている分野である。

3.財政赤字
3月の消費者物価指数
(前年同期比%) |
7.48 |
食品・ノンアルコール飲料 |
6.94 |
アルコール飲料・タバコ等 |
7.22 |
衣料・靴 |
2.87 |
住宅 |
9.93 |
家具・家庭用品等 |
8.26 |
医療 |
8.1 |
交通 |
5.36 |
娯楽・文化 |
6.82 |
教育 |
12.04 |
レストラン・ホテル |
10.78 |
サービス等 |
8.44 |
(1)2月の財政赤字はGDP比1.3%となった。非金融系政府機関の歳入は、社会保険費増及び電話公社(ANTEL)をはじめとする公的セクターの業績が良かったことによりGDP比29.1%で前年比0.2%増となった。また、中央政府と社会保険庁の歳出は0.5%増のGDP比24.6%となった。
(2)アナリストは、本年の財政赤字はGDP比1.2%、来年は1.1%となると予測している。
4.消費者物価指数
3月の消費者物価指数は7.48%増となった。教育(12.4%増)、レストラン・ホテル(10.78%増)、住宅(9.93%増)などの増加率が高かった。
5.貿易
(1)輸出
ア 4月の輸出額は、大豆の輸出減及び観光週間(聖週間)の連休により、前年同期比3%減となった。大豆は、作付けが遅れたことにより生産が57%減少した。輸出額は本年に入って1月から連続して減少している。
イ 1-4月の輸出額は、27億5,900万ドルで前年同期比10.7%増。牛肉、大豆、
小麦、米、木材、乳製品が主な輸出品であった。主な輸出先は、1位がブラジル、2位が中国、3位がアルゼンチンであった。
(2)輸入
4月の輸入額は前年同期比2.8%増の6億1,600万ドルとなった。また、1-4月の輸入額は44%増の25億8,100万ドルとなった。主な輸入品は、自動車、トラック、電話、自動車部品等、ポリアセトン、輸入先国は、ブラジル、アルゼンチン、中国、米国、メキシコであった。
6.対アルゼンチン関係
(1)アルゼンチン政府による輸入制限措置(ウルグアイ主要各紙)
ア アルゼンチン政府による輸入規制措置により、ウルグアイの繊維・衣料関連品、自動車関連品、本・印刷物等のアルゼンチンへの輸出に影響が及んでおり、9日、全国労働総同盟(PIT-CNT)は失業保険の対象者が約1,000人に上ったと述べた。
イ また、本件交渉の中で、中央銀行は、アルゼンチンと現地通貨で取引が出来るよう交渉を開始した。また、先月14日、ロレンソ経済財務大臣は、本件輸入規制措置により影響を受けているセクターに対して、税還付の対象の拡大、補助金及び融資の拡大、失業保険の柔軟化等、14の支援策を発表した。
ウ 他方、メルコスール域内での貿易が円滑に進まない中、ウルグアイは他地域との貿易関係促進を視野に入れており、先月カネパ大統領府副長官がニュージーランドを訪問した。また、先月6日、アルマグロ外相は、メディアに米国とのFTAについて問われ、机上に乗っていないことは話すことが出来ない、現時点ではフィクションであると述べた。
エ 9日、ムヒカ大統領は、アルゼンチンを訪問し、フェルナンデス大統領と会談し、アルゼンチンが輸入規制措置のウルグアイとパラグアイへの影響を最小限に抑えるための例外的措置を講じることで合意に至った。
オ 26日、アルゼンチンでの輸入手続きが行われていなかったウルグアイの繊維関連分野の産品15件の手続きが完了し、輸入が行われた。これにより、輸出業者は失業保険の対象となっていた従業員を復職させた。
カ 26日、ムヒカ大統領は、ウルグアイが税務情報をアルゼンチンと交換するための合意に署名することと、アルゼンチンによる輸入解禁は交換条件ではないと述べた。
(2)アルゼンチン政府によるYPF国有化のウルグアイへの影響等(ウルグアイ主要各紙)
ア ウルグアイ政府の反応
ウルグアイ政府は、アルゼンチン政府によるYPF国有化により、ウルグアイがダメージを被るとは見ておらず、行き場の無くなった投資家がウルグアイに来る可能性もあると考えている。他方、メルコスールのイメージダウンにはつながると考えており、特にスペインが主導国の一つとなっているEUとのFTA交渉にマイナスの影響を与えると見ている。
イ ウルグアイのエネルギー関連事業への影響
(ア)ウルグアイの工業エネルギー鉱業省メンデス局長は、YPFがウルグアイの石油試掘事業(Ronda Uruguay)に参加しているとして、同社の同事業への影響は大きいと述べた。しかしながら、アルゼンチン政府の決定に対して意見はしないが、域内での影響は無いと思われる上、ウルグアイへの悪影響も及ばないだろうとも述べた。
(イ)ウルグアイの国営燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)のセンディック総裁は、ANCAPはYPF社と共に実施予定の事業に関し、既に署名されているものに変更は無いと思うと述べた。YPFの下請け企業であるAstra Evangelista de Argentinaは現在ウルグアイのLa Tejaで3億ドルを投資して石油精製所を建設している。
(ウ)また、YPF社は、先月23日にANCAPとの間でウルグアイ北部での石油試掘事業のための署名を行い、アルティガス県、サルト県、タクアレンボー県、リベラ県の1万平方キロメートルの土地で1年の独占契約で試掘事業を行うこととなっている。
(エ)ANCAP関係者によると、YPFとの契約では、企業の株主に変更があった場合、ANCAPは一方的に契約を打ち切ることが出来る旨記載された条項が盛り込まれているが、現状で契約を打ち切るという話は難しいと述べている。
(3)アルゼンチンとの税務情報公開に関する署名(24日付大統領府プレスリリース
ア ロレンソ経済財務大臣は、23日にアルゼンチンと情報公開に関する署名を行ったと発表した。同署名には、二重課税防止及び国際的な税制面での協力のための情報公開を効率的に実施するための規制も含まれている。本件は今後国会での承認が必要となる。
イ ロレンソ大臣は、本件同意では遡及効は認められていないと述べた。
(4)アルマグロ外相とティメルマン外相との非公式会合(27日付「エル・パイス」紙及び「エル・オブセルバドール」紙)
ア 26日、アルマグロ外相とティメルマン外相は、モンテビデオで(メルコスールの)地域統合形成センター(Centro de Formacion para la Integracion Regional(Cefir))での会議の前に、非公式な会合を持ち、二国間での懸案事項について意見交換を行った。
イ アルマグロ外相は、YPF国有化に向けたアルゼンチンの取組を「全面的に」支持することを明らかにすると共に、メディアに対し、両外相で今後の作業の工程について話し合ったことに触れた。
ウ また、アルマグロ外相は、Cefirの会合の挨拶で、ウルグアイとアルゼンチンとの現在の関係について述べ、当国からアルゼンチンへの輸出も、アルゼンチンからの投資も、観光客もこれまでになく増えており、更なる増加を期待すると述べた。また、輸出に関しては、貿易を守ると共に、雇用を守ることが絶対的な優先事項であるとも述べた。
エ 他方、ティメルマン外相は、浚渫事業の問題を進めることを保証した。ウルグアイの外務省の二国間交渉関係者は同紙に対し、5月3日にブエノスアイレスでマルティン・ガルシア運河の浚渫事業に関する入札に係る署名が行われる予定であると述べた。
(5)アルゼンチンのウルグアイ大使館にアルゼンチンの企業70社が集まり、アルゼンチン・ウルグアイ商工会議所のコーディネーションのもとで、ウルグアイへの投資及びロジスティックスについての意見交換を行った。アルゼンチンの輸入規制が続く中、アルゼンチンに入るための貨物をウルグアイで保管することについての相談なども行われた(29日付「エル・パイス」紙)。
7.ブラジルへの輸出
(1)ムヒカ大統領のブラジル訪問(20日付大統領府プレスリリース及び当地主要各紙)
ア 18日、ムヒカ大統領はブラジルを訪問し、ルセーフ大統領と会談した。ムヒカ大統領は、ルセーフ大統領が二国間での自由貿易を保証すると約束したと述べ、ブラジルのメルコスール域内の最大国としての政治的意志を強調した。ムヒカ大統領よりは、域内のルールを再認識することを提案した。
イ アルマグロ外相は、今後二国間で持続的発展と統合のためのアクションプランの戦略を検討するための委員会を設置すると述べた。同委員会は、今後外務省が主導し、6月20日から22日のリオでのG20サミット開始までに設置される予定。
ウ 生産チェーンの補完的協力
(ア)パトリオタ外相は、今後の両国での生産チェーンの統合について触れ、ルセーフ大統領は、造船関連分野に二国間の協力の焦点をあてたいと述べたほか、テクノロジーやイノベーションの分野での協力も進めたいと述べた。これに関し、パトリオタ外相より、デジタルテレビの日伯方式に基づいた協力も可能であるとの発言があった。
(イ)また、OPPのフルゴーニ局長は、長期的な協力では鉱業でも行われる可能性があると述べた他、今後開発銀行を設置する可能性があることに触れた。
エ 風力発電に関する署名
(ア)両首脳は、今後ウルグアイ電力公社(UTE)とElectrobrasが共同して、当国に風力発電機を導入するための協力に署名をした。本件事業にはブラジル開発銀行(BNDES)のクレジットラインにより約2億ドルの投資が行われ、100MWの発電機が設置される予定。UTEはその他の案件でもElectrobrasとの共同事業を行う可能性を検討している。
(イ)その他、二国間の電力関連事業としては、2013年に二国間の送電線接続事業が完了する見込みである他、メルコスールの格差是正基金により、モンテビデオとブラジルのカンディオタとを結ぶ送電線接続事業が開始されている。
(ウ)ブラジルのパトリオタ外相は、両国のエネルギーに関する合意の重要性を強調し、中長期的に、電力以外のエネルギーについても協力していきたいと述べた。
オ また、ムヒカ大統領は当国の為替の安定のため、ルセーフ大統領と意見交換を行い、今後中銀がウルグアイの為替政策安定化のためにブラジルの採用した政策を一部踏襲すると述べたが、詳細については触れなかった。
カ なお、ムヒカ大統領には、アルマグロ外相、クレイメルマン工業エネルギー鉱業大臣、フルゴーニ予算企画庁長官、ポルト経済財務次官、カネパ大統領府副長官、カサラビージャUTE総裁が同行した。
(2)ブラジルへのセメント輸出(29日付「ラ・レプブリカ」紙)
ANCAPは、トレインタ・イ・トレス県でのセメント生産のために、9,500万ドルを投資し、年間4万5,000トンのセメントをブラジルに輸出するための準備を進めている。本件については、Electrobrasの傘下のCGTEE社と契約を行っている。
8.メルコスール(24日付大統領府プレスリリース)
(1)16日、クリントン国務長官は、ブラジリアにおける米国とブラジルの企業家との会合で、ブラジルと米国とのFTA締結の話を持ちかけた。他方、アルマグロ外相は、メルコスールは将来的に米国とのFTAを締結する可能性があると述べる一方で、現在はEUとの再交渉に専念しているとも述べた(17日付当地「エル・パイス」紙)。
(2)スペインの提案を受けてEUがメルコスールに対してアルゼンチンを除いた形でのFTA交渉を行うよう圧力をかけるのではないかとのメディアの報道に対して、アルマグロ外相は、「本件に関して、我々は何ら公式の見解も提案も受けておらず、(上記報道は)単なるメディアによる報道として受け取っているところである。但し、メルコスールの交渉スキームが4+1であることは全ての者が知るところである」と述べ、「右以外の交渉方法を採れば、「想定すらされていない制度上の混乱を招くことになるであろう」と述べた。
(3)アルゼンチン・スペイン間のYPF国有化を巡る問題におけるウルグアイが取り得る立場に関して、アルマグロ外相は、ウルグアイがアルゼンチン・スペイン両国と良好な関係を維持しており、いわば兄弟国として多様なバイ関係を築いている点を強調し、状況が改善し交渉に向けた道が開けることを信じている旨語った。
(4)また、アルマグロ外相は、ウルグアイ・スペイン商工船舶会議所が、フェルナンデス亜大統領の政策(YPFの国有化)と同国のガルティエリ政権によるフォークランド(マルビーナス)諸島への政策とを比較したことに関して、国有化は認められた法的スキームであり、効力のある法的措置に基づくものであれば、有効且つ合法なものである、戦争を始めるのとは全く異なると述べた。スペイン資本がウルグアイに投資先を変更する可能性については、ウルグアイはここ数年、客観的な条件により投資機会を大きく伸ばしてきているのであり、他国の状況に乗じて利益を上げるというのはウルグアイのやり方ではないと明言した。
(5)同外相はまた、アルゼンチンによる貿易障壁に関しては、100%の時間を費やして同問題に取り組んでおり、今後数週間後には具体的な解決策が見え始めることを確信している旨語った。
(6)さらに、メルコスールの域内貿易の状況をみると、昨年からの変動要因が維持されており、我々は具体的な幾つかの問題を解決しようと望んでおり、右諸問題の解決により本年の貿易額増を図っていきたいと考えている。メルコスールに対する批判は、我々自身が行っていく、と述べた。
9.労働(25日付「エル・パイス」紙及びINEデータ)
(1)政府は、政労使三者協議で2013年にピークを迎える団体交渉に関する交渉プロセスの枠組みにつき、企業及び労組と合意を得ようと望んでいる。本年には、民間の医療関係労組や飲料業界労組を含む30%の労組が団体交渉を行う予定である。
(2)ブレンタ労働相及びロメーロ同労働局長は、25日の協議において、合意形成のために各パートの主張につき検討が行われると明らかにした。また、ロメロ労働局長は、協議には適用可能なケースについてのみ労働者の生産性に関する議論も含まれると述べ、右目的は、賃金を生産性に縛り付けるためではなく、企業の経営プロジェクトの実現可能性と収益性を上げるためである旨付言した。
(3)政府はまた、団体交渉に期限を設定することを提案する予定であるが、これは以前にも話し合われたものの完全には合意に至らなかった点である。ロメロ労働局長は、「1年にも渡って交渉を続けることはできない。」と述べ、交渉を短期間に終了するためには、(労使両者の)決意が必要であり、要すれば政府は政令という手段を講じることもあり得る旨述べた。
(4)24日、全国労働総同盟(PIT-CNT)は、FA党の議員に対し、従業員の労働事故が起こった企業や、安全規則を遵守しない企業に対する罰則を定める法律の制定を提案した。
(5)また、雇用主の破産・倒産から労働者を保護する法律の制定についても提案しており、(倒産後に)給料を未払いのまま逃げてしまう企業が未だに存在している旨指摘している。さらに、雇用主が従業員の解雇に際して、各ケースにつき正当な理由を付するよう求めている。
(6)上記に加え、商業サービス従業員組合(FUECYS)は、観光業界における就業時間に関する法律を制定するよう提案しているとのことであり、一般的な商業セクターと同様に、週労働時間を44時間とするよう求めている。
(7)国家統計院(INE)によると、昨年12月の平均賃金は、15,360ペソ(約768ドル)で前年比14.3%となった。
10.インフラ
(1)ロチャ県での深水港建設事業(20日付「エル・パイス」紙
ロチャ県に深水港を建設する事業に関して、ムヒカ大統領は、本件に関する省庁間委員会に5月半ばまでに報告書を提出するよう指示を出した。同委員会は、ブオノモ大統領府顧問がコーディネーターとなり、経済財務省のポルト経済財務省次官、オルトゥーニョ工業エネルギー鉱業省次官、ジェンタ運輸公共事業省次官、レトルケル住宅土地整備環境省次官等で構成されている)。
11.日本関連記事
(1)ヤザキ・ウルグアイでの労働争議(17日、19日、24日、25日付「エル・パイス」紙)
ア 金属労組はヤザキでの労働争議を行った。同社のコロニア及びラス・ピエドラスの工場では2,000人の従業員が働いている。
イ 16日、金属労組は労働省の文書(acta de desacuerdo)(政労使三者協議で合意に至らなかった場合にその内容を議事録に残すもので、三者がサインをする文書。組合はこれをもってスト実行、工場占拠等の抗議行動を合法的に実行することが可能となる)に署名し、企業側が2008年に署名した協定を遵守しておらず、同企業での職種の分類が足りないこと、労組への差別があること等に抗議した。
ウ 金属労組幹部アブダラ氏は同紙に、如何なる措置を執ることも否定しないと述べた。
エ 18日、ヤザキの労組が集会を行い、カテゴリーの見直しを企業に要求した。労組によると、現在のカテゴリーにより、当然もらうべき賃金よりも2,000ペソ安い賃金を受け取っている。また、労組幹部は、コロニア工場では組合員と非組合員への待遇の差があると述べた。
オ 24日、ヤザキのラス・ピエドラス工場の従業員らが、労働省労働局(DINATRA)に対して、金属労組(UNTMRA)によって占拠されている同工場で
の業務継続を訴えた。非組合員の一人は、先週、2名の組合員が夜中に工
場内へ侵入し、工場が稼働できないよう機械を止めたことを明らかにし、
「翌日、会社側は工場占拠を回避するためにこの2人を解雇しないことを
決定し、彼らが要求していたように上のカテゴリーを与えた。」と述べ、
カテゴリーを上げてもらった組合員は「就業時間中にあまり働いておらず、
故に会社側の決定によって従業員らは非常に驚いた。」と述べた。
カ また、上記非組合員は、出勤しようとする従業員たちに対して、組合員らが暴言を吐くといった事態が生じており、現場の雰囲気は険悪であると述べ、また、「組合を否定はしないが、問題は組合員たちが非常に若くて経験がないことである。彼らはストや集会で全てが解決できると思っているようだが、実際には何も解決できていない。」と述べるとともに、今回の争議の結果、会社の生産が落ちることにより顧客を失ってしまうことを恐れている旨語った。
キ 他方、金属労協は、ウルグアイから撤退を決定した企業もあると明らかにした。これは、ブラジル資本の企業であり、市場の問題を理由にウルグアイ内の工場を閉鎖すると公式に発表している。しかしながら、同企業側が述べたところによれば、実際にはウルグアイの労働力不足及び金属労組との問題こそが撤退の本当の理由であり、会社の上層部は労働省に対して、右理由につき伝達済みである旨付言している。なお、昨年(2011年)にもコロンビアの企業が同様の理由でウルグアイから撤退している。2011年10月の金属労組ストライキにより、業界の労働力は10%減少した。
(2)タカタの操業開始
ア 5月3日、サン・ホセ県のタカタで開所式が開催され、ムヒカ大統領、サン・ホセ県のファレロ県知事、佐久間大使、タカタ・コーポレーション社長、タカタ南米社長が出席する予定。
イ 同社は1,000万ドルを投資し、2015年から2016年に年間500万個のエアーバックを生産する予定。その内ほぼ全てがブラジルに輸出される予定(24日付「ウルティマス・ノティシアス」紙及び27日付「ラ・レプブリカ」紙)。
(3)ソニー製品の売り上げ
ア ソニーの2011年のラテンアメリカでの売り上げは前年比40%増となったが、ウルグアイでの売り上げは100%以上の増加となった。ウルグアイではテレビ、中でもLDC,65インチテレビの販売、2010年11月からバイオのパソコンの販売を行っていることなどが売り上げ増加に貢献している。
イ ウルグアイでソニーの製品のディストリビューションを行っているのはRider S.A.社。また、ソニーは、当地フリーゾーンでCosta Oriental社を通して中国、マレーシア、メキシコからの製品を当国、パラグアイ、アルゼンチン、チリ等へ輸出している(27日付「エル・パイス」紙)。
ウ ソニーのウルグアイ・パラグアイ・アルゼンチンのロジスティックスの担当者は、当国は真摯であり、法的・政治的に安定しているので、ウルグアイを域内のディストリビューション・センターとして選んでいると述べた。
(4)日本企業等による投資相談・照会
UruguayXXIによると、3月の同機関への投資相談・照会件数については、日本からのものが最も多く、全体の25%を占めた。その他スペインからの相談・照会が19%、アルゼンチンからが13%であった。分野別に見ると、自動車及び自動車部品分野が31%、不動産分野が16%、造船関連が6%であった(24日「ラ・レプブリカ」紙)。
12.その他
(1)DBRSによる国債格上げ
ア 5日、カナダの格付会社DBRSは、ウルグアイの国債の格付けをBBからBB+に格上げした。これにより、各社のウルグアイ国債の格付けは、Moody's社がBa1, S&P社がBBB-,Fitch社がBB+, R&I社がBB,DBRS社はBB+となった。
イ DBRS社によるウルグアイの評価
(ア)ウルグアイは、投資、輸出、農業の構造の変化に後押しされた持続的な経済の高成長を遂げており、借り換えリスクが非常に低い上、財政のバッファーが広い。
(イ)これらの要因が公的債務の削減、外的なショックへの抵抗力を助長。財政規律が持続し、公的債務が引き続き削減の方向に向かえば、今後更に格付けが上がる可能性もある。
(ウ)ウルグアイの経済は2006年から2011年まで平均5.8%の経済成長率を遂げ、供給・需要要因がこれらの経済パフォーマンスに貢献している。サプライライドでは、農業部門において直接投資額の増加と技術の向上による転換が見られ、拡大と生産の多様化が進められている。投資の増加により生産能力も向上。デマンドサイドでは、貿易の増加と観光サービスへの需要の増加が見られる。また、就業率の増加、実質賃金の向上もこれらの成長に貢献している。
(エ)2011年の経済成長率は5.7%。2012年は4%の成長率が予測されている。
ウ 同社が見る今後のウルグアイの課題
(ア)公的債務の更なる削減。2011年はGDP比55.6%と高い数値を示している。政府は2015年までにGDP比40%まで削減することを目標としている。
(イ)コモディティー価格のサイクルと地域の変動による影響。ウルグアイはコモディティーをベースとした輸出国であり、隣国の貿易、財政状況に密接にリンクしている。農産品の輸出は輸出全体の約60%を占めており、コモディティー価格の変動、アルゼンチンをはじめとする隣国の需要に左右される。これらの影響を受けると、輸出、特に観光サービス業に影響が及び、経済成長や雇用が悪化する。
(ウ)インフレ圧力の存在。コモディティー価格の上昇、労働市場条件がタイトであること、賃金上昇率が高いことにより、インフレ率が高く、この5年間はインフレターゲットの上限よりも高い数値となっている。今後のインフレ率の動向を引き続き注視していく必要がある。
(エ) 脱ドル化。政府は脱ドル化を進めており、2002年以降かなり改善されたが、2012年2月時点でも融資全体に占めるドルの割合は51%、預金全体の73%となっており、まだ改善が必要である。
(オ)エネルギーインフラの改善。ウルグアイはエネルギーを輸入しており、国際石油価格の変動の影響を受けており、それが財政収支や経済成長に影響をもたらす。政府は、ブラジルとの送電線接続及び一連の再生可能エネルギー・プロジェクトの導入によりエネルギーのインフラ事業への官民の投資を検討している。また、政府はエネルギー安定化基金を設置し、エネルギー供給のためのインフラが安定するまでのコストを補う措置を講じている。
(3)今後の政府専用機購入の可能性(28日付「エル・パイス」紙)
ウルグアイは、ブラジルからエンブラエル社の飛行機を政府専用機として購入するかどうかを検討しており、5月にカネパ大統領府副長官が本件についてブラジルを訪問する予定である。
(4)アフリカとの経済関係強化(30日付「エル・オブセルバドール」紙)
ア アルゼンチンとの円滑な貿易が進まない中、ムヒカ政権は貿易多角化のため、アフリカの4カ国を視野に入れ、同地域との貿易関係強化を検討している。
イ ウルグアイは、アフリカでは南アフリカ及びエジプトに大使館を開設しているが、今後アンゴラ、ナイジェリア、ガーナあるいはセネガルに大使館を開設し、大使館がビジネス関係強化において積極的な役割を果たすことを期待している。
ウ 同紙が入手した外務省の報告書では、上記4カ国を対象国として検討し、アンゴラを最優先国と考えている。なお、5月14日の週にアルマグロ外相がアフリカを訪問する予定である。
エ 外務省戦略分析局の報告書では、上記4カ国の内、アンゴラが今後のウルグアイからの輸出が最も期待出来る国であるとされており、2006年から2010年の間に米及び魚の輸出が飛躍的に伸びたことにより、今後輸出の年率28%増により、10年で輸出額を9,900万ドルに延ばすことが出来ると見ている。また、燃料・アルコール・セメント公社(ANCAP)がアンゴラから石油を輸入しているため、上記4カ国の内、アンゴラとの貿易のみが赤字となっている。
オ 上記報告書では、牛肉、魚、穀物、乳製品の輸出についての分析も行われており、牛肉については、アンゴラ、魚はナイジェリア、穀物はセネガルが輸出先として期待されているが、穀物については、セネガルは米ととうもろこしを輸入しているものの、アンゴラの米の需要増により、アンゴラへの輸出の方に期待を持っている。
カ 上記4カ国については、基本的に一次産品の貿易が行われているが、アンゴラとナイジェリアはワインの輸入国でもあり、ナイジェリアはワインとシャンパンを輸入している。他方、ウルグアイはアンゴラからは石油及びガスオイル、ガーナとナイジェリアからはカカオ、セネガルからは少量であるが計測器を輸入している。
キ 24日、アルマグロ外相は、ウルグアイの雑誌(Somos Uruguay)で、世界の経済危機により状況が変わり、今後ウルグアイは輸出先を再考し、新たな市場を模索すると述べた。